【パ障1】TRPGとパーソナリティ障害の関係って?

文字数 1,859文字

さて、今回から新しいテーマですが……パーソナリティ障害、ですか? TRPGの話題にしては意外な気がしますが……。
TRPGを成り立たせている基盤は、結局のところ人対人のコミュニケーションよね。だから、TRPGを実践する上では、パーソナリティ障害に関係のある事柄に触れる機会が必ずあるはず。そう考えてテーマに選んだの。
コミュニケーションというなら、扱うべきはコミュニケーション障害なのでは?
医学的なコミュニケーション障害は、巷でイメージされているようないわゆる「コミュ障」とはかなり違うのよ。言葉の発声や聞き取りが苦手であるとか、そうした類の障害がコミュニケーション障害群としてまとめられているの。もちろんこれもTRPGの実践には関係してくるだろうけど、ここでは扱わない予定よ。
あと、パーソナリティって性格や人格という意味ですよね? 性格や人格がTRPGと関係あるんですか?
パーソナリティが性格や人格と訳されるのはそのとおり。ただ、もうちょっとイメージしやすい言葉に言い換えると、「自分や他人、物事への関わり方や考え方」がパーソナリティね。
「あの人は暗い性格だ」というより、「あの人はいつも将来を悪い方へと予測する」という考え方や関わり方で表したほうが、イメージしやすいですね。
そういうこと。で、TRPGの実践は他人と関わることなんだから、その関わり方や考え方がパーソナリティだとすれば、考える価値があるでしょ。
パーソナリティについてはわかりましたが、障害というのはどういう意味なんでしょうか。
「障害」とは何か、というのはとてもセンシティブだから、慎重に取り扱わないといけない。順を追って考えましょう。

まず、人や物事への関わり方や考え方というのは、結局のところ人それぞれだよね。

例えば……自動車の燃料計がFとEの中間を指しているとき、「まだ半分ある」と捉える人もいれば、「もう半分しかない」と捉える人もいますからね。
それらの人たちの間に何の関係もなければ、何の問題も起きないわけだけど……例えばその二人が一緒の車に乗っていて、燃料が半分になったとき、どんなことが起こると思う?
一人は「もう半分しかないから給油しよう」と言い出して、もう一人は「まだ半分あるからこのまま走ろう」と言い出して、対立してしまいますね。
こうしたとき、多くの人は状況を考えながらある程度柔軟な対応をとれるんだけど、人や物事への関わり方や考え方が大きく偏っていると、状況に合わせた柔軟な対応がとれずにトラブルになってしまう。
「まだ半分ある」が大きく偏っていると、目的地に着く前にガス欠で動けなくなってしまったりとか。

「もう半分しかない」が大きく偏っていると、ちょっと進んでは給油を繰り返して、到着予定が大きく遅れてしまったりとか。

そういうトラブルになってしまうんですね。

時々なら、そうしたトラブルは誰でも経験するだろうけど。でも、そうしたトラブルが起きる状態が長い期間で持続していて、それによって本人が苦しんだり、うまく社会生活を送れなくなっているような場合は、障害と呼ぶの。
あくまで、本人と社会との関わり合いの部分の問題として扱うわけですね。
そう。だから、別段苦しんでいたり社会生活に不具合を抱えていたりしていないような相手に対して「あいつは〇〇障害だ」のような言い方をするのは、間違ったこととして厳に慎まなければならないわね。そもそも医療倫理としての問題もあるけど。
それで、障害と呼べるようなパーソナリティ障害を抱えている人って、どれくらいいるんでしょうか。
製薬会社MSDが家庭向けに公開しているマニュアルによれば、「約13%の人が何らかのパーソナリティ障害に該当します」とのことよ。50人規模のコンベンションなら、6人くらいが当てはまることになる。
そんなに多いんだ……。
1割近くいるとなれば、他人事とは言えないでしょ。

それに、障害と呼べるほどの苦痛や不具合を感じないとしても、考え方や関わり方の偏りは誰にでもあるものだからね。極端ではあるけれど、パーソナリティ障害という物事を知り、考えることは、自分や他人のそうした偏りに気づくきっかけになるでしょう。そして、そうした知見は、余計なトラブルを防止したり、自分と他人との関わり方に新たな可能性を切り拓いたりすることに役立つはずよ。

だから、TRPGを通してパーソナリティ障害を見ていこうということなんですね。
そのとおり。次回は、パーソナリティ障害にはどのような種類があるのかについて見ていきましょう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

久恵里(くえり)

主に質問する側

せんせい(先生)

主に答える側

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色