【パ障2】パーソナリティ障害にはどんな種類があるの?

文字数 2,071文字

それで、パーソナリティ障害にはどんな種類があるんでしょうか?
その前に基礎知識の確認。現在、精神の障害の分類法として広く使用されているものは2つあるの。

アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM)と、

世界保健機関の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD)ね。

名前を聞いたことはあるような気がします。
DSMはプロプライエタリな著作物だから、利用するなら購入する必要がある

一方ICDは国際機関が出しているだけあって、WHOのサイトで全文を無料で見られる。日本での統計調査用に訳された「疾病、傷害及び死因の統計分類」を厚生労働省のサイトで見ることができるから、今回はそれを見ていくことにしましょう。バージョンとしては、ICD-10(2013年版)に準拠しているものよ。(注:本稿執筆現在(2018年5月))

WHOのサイトには「ICD-10 Version:2016」が載っていますね。
反映されるにはタイムラグが生じるからね。それに、新たなバージョンであるICD-11が近々発表されるはず。世の中の状勢を見ながら、分類基準も改善が続けられているのよ。
分類の仕方は大きく変わることがあるから、どのバージョンに基づいて行われた調査や研究なのかということはいつも確認しておかないとね。
はい。それで、厚生労働省のサイトに載っているパーソナリティ障害の種類にはどのようなものがあるんでしょうか。
ICD-10には分類記号がついていて、F60~F69が「成人の人格及び行動の障害」を表すことになっている。そこを見てみましょう。
F60が「特定の人格障害」となっていますね。
さらに細かく、F60.0~F60.9に分けられているわね。表題だけ書き出してみましょう。
はい。

「F60.0 妄想性人格障害

 F60.1 統合失調症質性人格障害

 F60.2 非社会性人格障害

 F60.3 情緒不安定性人格障害

  F60.3a 衝動型人格障害

  F60.3b 境界型人格障害

  F60.3c その他の情緒不安定性人格障害

  F60.3d 情緒不安定性人格障害,詳細不明

 F60.4 演技性人格障害

 F60.5 強迫性人格障害

 F60.6 不安性 [回避性] 人格障害

 F60.7 依存性人格障害

 F60.8 その他の特定の人格障害

  人格(障害):

   ・エキセントリック

   ・「軽佻者」型

   ・未熟型

   ・自己愛的

   ・受動・攻撃性

   ・精神神経症的

 F60.9 人格障害, 詳細不明」

こ、こんなにあるんですか……。しかもわかりづらい漢字が沢山……。

数が多い上に、分類の仕方も曖昧なところがあるから、もっと整理しようという努力はされているんだけど、これまでなかなかうまく行っていなかったのよ。一応、DSM-5では、「代替診断基準」という、パラメータの組み合わせでパーソナリティ障害を分類しようという提案は出されたんだけど。うまく本流に組み込まれるかどうかは、今後の結果次第ね。
人の心や行動を分類するのは、難しいんですね。

そういえばDSM-5という名前が出ましたが、そちらの分類はICD-10とは違うんでしょうか?

おおよそ似通っているんだけど、細かい部分で違いがあるわ。例えばICD-10には「統合失調症質性人格障害」というのがあるけど、DSM-5には「統合失調パーソナリティ障害」と「統合失調パーソナリティ障害」があったりとか。
なんで専門用語って狙ったように紛らわしいんですか!? 嫌がらせですか!? 肺動脈の血は動脈血じゃないとか! インフルエンザ菌とか!
わ、私に言われても……科学技術の分野で首をひねるような名前がついているときというのは、大抵歴史的な理由があるんだけどね。
それはそうと、これらのパーソナリティ障害とTRPGとの関わりは、どのように考えてみたらよいでしょうか?
そうね……実例を挙げるわけにはいかないからね。このICD-10の日本語訳と、他のテキストを参照しつつ、「もし〇〇パーソナリティの人がTRPGをしたら」といった、シミュレーションをしてみるのはどうかしら。
えっと、それは、上の一覧の全部でやるんですか?
さすがにそれは大変すぎるから、ある程度候補を絞ってやっていきましょう。先に挙げた統合失調症質性人格障害は、「他人と関わらずに独りでいようとするパーソナリティ」だから、TRPGとは関連付けようがないでしょ。こういうのは除くってことで。
なるほど。あと「他のテキスト」は何を使うんですか?
精神科医の岡田尊司の本で「パーソナリティ障害」があるから、それを使おうと思うの。ただ、出版時期の関係で、DSM-IV-TRという少し古い基準を使用しているから、その点は注意が必要よ。

あともう一冊テキストとして予定しているものがあるけど、それはその時に説明するね。

それじゃあ次回からいよいよ、「もし〇〇パーソナリティの人がTRPGをしたら」シリーズ開始ですね。
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登場人物紹介

久恵里(くえり)

主に質問する側

せんせい(先生)

主に答える側

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