【パ障8】パーソナリティの偏りをTRPGに活かすには?

文字数 2,451文字

これまで、様々なパーソナリティ障害を通して、パーソナリティの偏りというものについて見てきましたが、これらの知識をどうやってTRPGに役立てていけばよいのでしょうか。
まず、今までの知識は、そのままロールプレイングやシナリオに役立つでしょ。PCやNPCとして偏った人を表現する必要があるときにね。
パーソナリティが偏ったキャラクターってそんなに需要があるんでしょうか?
ホラー系のTRPGならそれなりに需要があるでしょうし、そうでなくても、偏ったパーソナリティが悲劇や騒乱のきっかけになることもあるからね。表現のパターンは持っているに越したことはないでしょ。
なるほど。
ただ、パーソナリティの偏りをロールプレイングで再現しようとするときは、気を付けなければならないことがあるわ。
それは?
極端に偏ったパーソナリティは、周囲の人に苦痛を与え疲弊させる。だから、キャラクターのパーソナリティを偏らせるなら、そのプレイヤーは十分すぎるほどのフォローをしていかなければならない。
具体的には?
自己愛性パーソナリティを例にとるなら、セッションの最初の段階で、

「うちの子ナルシシストなんで、仲間に対しても上から目線になりますが、もし嫌だったらすぐ言ってくださいね」

みたいなアナウンスをしておくことはできる。

セッション中でも、

「『ふん、その程度か』なんてキャラは言いますけどプレイヤー的にはものすごく助かってます」

といった言い方をしていけば、トラブルはずっと少なくなるはずよ。

キャラクターとプレイヤーの分別をつけることが重要なんですね。

さて、プレイヤーとしての私たちも、大なり小なりパーソナリティの偏りを抱えていると思いますが、それはTRPGにどう役立ちますか?

役立てるにしても、悪影響を減らすにしても、まず自分のパーソナリティがどう偏っているのかに気づかなくちゃね。
どうしたら自分の偏りに気づけますか?
障害というレベルのパーソナリティ障害を診断できるのは医師だけだというのは踏まえておいて。そこまでではない偏りについては……一応、今まで紹介してきた岡田尊司の「パーソナリティ障害」には「パーソナリティ自己診断シート」が付録としてついているから、これでチェックしてみるのもいいかもしれない。あくまで参考だけどね。
それで、偏りに気づけたら、次はどうしますか?
相手をよく見る。
自分ではなく?
パーソナリティの偏りは自分と他人との関係に現れるわけだから、自分だけ見ているのでは気づけないこともある。それに、自分のパーソナリティのどの部分を活用していくか、というのは、相手がいてはじめて決められることだからね。
自分が強迫性パーソナリティだとして、相手が非社会性パーソナリティなのと、妄想性パーソナリティなのでは、有益な振る舞い方も違ってきますからね。
そういうこと。相手のパーソナリティがどう偏っているか、ということを量る上でも、パーソナリティに関する知識は有益よね。

なにより、パーソナリティに「正解」はない、ということは大きな知識よ。

極端な偏りは障害になりますけど、じゃあ全く偏りのない理想のパーソナリティの人がいるかといえば、そんなわけないでしょうし。
「自分だって偏っている」という知識があるのとないのとでは、TRPGだけじゃない、あらゆる物事への関わり方が変わってくるでしょうね。
最後になんですが、TRPGの現場などで、極端にパーソナリティが偏った人に出会ってしまった場合は、どうしたらいいんでしょうか。
まず、絶対に言ってはいけないことがあるからその注意をしておくね。
それは?
「病院行け」はダメゼッタイ。
ああ。
障害かどうか診断できるのは医師だけ、というのはさっき言ったとおり。それに、障害というのは、あくまで本人が苦しんだり生活に困ったりしているかどうかで決まるからね。その感覚、つまり病識がない人に対して「病院行け」やら「黄色い救急車」やら「いい精神科を紹介しますよ」などというのは侮辱にしかならない。

まして、極端なパーソナリティというのは、人を敵と味方に分けたがる傾向があるわけでしょう。敵扱いされて、余計な攻撃を受けることにもなりかねないもんね。

「病院行け」がダメなのはよくわかりますが、それではどうしたらいいんでしょうか?
まず思い出してほしいのは、「無理して付き合う必要はない」ってこと。求められたことが嫌なことだったら、「私はそれをしたくありません」と答える権利があるし、それでもなお何かを押し付けてくるような相手とは付き合わない自由が私たちにはある。
あ、アドラー心理学ですか? 以前別のところで扱いましたが
近いところはあるわね。そしてこれはアサーションというものにも繋がっているんだけど、それについては別の機会に話すことにしましょう。

なんにせよ、「私には(相手にも)断る権利がある」と自覚することは有益よ。ここを見失うと、他人に何かを押し付けたり、押し付けられて恨むということになる。どちらも不健康だもんね。

で、「断る権利」に関連してもう一つ、「Iメッセージ」を紹介しておこうと思うの。

幼いあなたにひとつだけ~
全然違うてか古い!(作詞:阿久悠)

大まかに言うと、「私はこう思う」という言い方がIメッセージ。

反対は「お前はこうだ」というYouメッセージね。

さっき断るときに出てきた「私はそれをしたくありません」はIメッセージとして出されたものですね。
そう。他にも「私はこうしてほしい」「こうしてくれると私はうれしい」といった言い方がある。

相手に何かを求めたり、断ったりするときには、Iメッセージにするといいのよ。

反対にYouメッセージだと?
「あなたは人の嫌がることをする」とか「あなたには常識がないのか」みたいな言い方になりやすいのよ。これって危険でしょ?
攻撃的になってしまいやすいんですね。
そう。だから、この「断る権利」を実践するのであれば、Iメッセージもセットで覚えて帰ってくれると私は嬉しいわ。
それもIメッセージですね。
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登場人物紹介

久恵里(くえり)

主に質問する側

せんせい(先生)

主に答える側

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