第13話:吟醸酒、魚釣り、老人施設入所

文字数 2,078文字

 千葉裕一と千葉末吉は、買ってきた清酒2種類、辛口と甘口を空けて父と母にも飲んでみてと誘った。すると辛口は、独特の癖がある様で母は、甘口を好んで飲んだ。父は、もっぱら辛口を熱燗にして飲んでいた。ステーキ、シチューの様な牛肉の煮物、魚の煮つけ。焼き魚、漬物、サラダと品数も多く、豪華な夕食になった。そのためか口数も少なく美味しいと言いながら食事が進んだ。その晩は、まだ、完全に疲れが取れていないせいか千葉裕一は無口だった。

 むしろ、風呂上がりに熱燗を飲んで真っ赤になってしまった。そのため、22時には、散会になり床に入った。翌、31日、母が大きな荷物を片付けたいと言い千葉裕一とに重たい荷物の移動の仕事を頼んで午前中には、その仕事が終わった。かなり汗をかいたので早めに風呂に入った。その後、毎年、高齢となった今年の出来事の話が始まった。2009年、恋人はできたのと母が千葉兄弟に聞いた。

 その質問に千葉裕一が飲み友達はいるが4人以上の仲間で飲みに行くので、そんな雰囲気にならないと答えた。しかし、最近、若い人で夜遅くに宅急便を依頼する人が多いような気がすると話した。また上司と綿密な打ち合わせする必要もなく送品伝票と届いた荷物の管理が一番重要だから体力さえあれば問題なくこなせる。でも女性たちと仕事後、飲みに行く事が少ないが若い人達にとっては、一番の問題かなと言った。それで、未婚の男女が多いのかもしれないと笑った。

 でも気楽さが自分では一番気に入っていると話した。
「第一、株投資をするには、時間的に一番良いと本音を漏らした」
祖父が何か株を買ったのかと聞いた。
 そこで、金「ゴールド」のETFを買ったと言うと堅いねと苦笑いした。
「堅いと言わず、堅実と言って欲しいねと言うと確かに堅実だと言い直した」
「2人の話を聞いて、母が、ちょっと、つまんない」
「だけど、当分、孫の顔を見ることができそうにないねと寂しそうに笑った」

 それに対し良いじゃないか堅実に2人とも頑張っているのだからと祖父が言ったそれもそうねと笑った。車に乗ることは、あまりないのか祖父が聞くと都会は、電車、バスが発達しているので、車を買う必要性は感じないと語った。その後、祖父が、今日は、珍しい酒を飲ませてやろうと言った。そして、石川県白山の大吟醸「天狗米」と諏訪の銘酒、真澄の純米大吟醸、「夢殿」を持ってきて目の前で封を開けた。

 いいや、この酒は、冷で飲むんだと言い、コップを持ってきて、みんなのグラスに注いだ。そして、乾杯と言い飲むと甘くて、のど越しが良く、さらっとしていた。女性たちから、飲みやすくて美味しいと声が上がった。そうだろう、吟醸酒は、飲みやすさが何と言っても一番の特徴だと言った。でも、幻の酒と言ってなかなか手に入らない。「夢殿」は、友人が旅行で諏訪に行った時に買って来てくれたと教えてくれた。

 次に「天狗米」別のコップに注いで一斉に飲んだ。その後、どうだと聞くと千葉裕一が美味いねと言い、俺は、こっちの方が良いなと語った。ところが、女性たちは、「夢殿」の方が良いと言った。すると千葉裕一が、こっちの方が、日本酒らしい日本酒だと言い爽快さと言うか豪快と言うか酒と言う感じが強いと言った。すると、祖父が、この酒は、石川県でも雪深い南部の加賀市で作られていると説明した。

 どっちも、とにかく水が良い土地だと告げた。ここの酒かすも有名で希少価値があり高いと言った。なるほどねと千葉裕一が良い酒だとわかる言った。ところで千葉末吉は何を飲んでるのかと聞くと俺は洋酒等でブランデー、コニャック、アルマニャックが好きだと言った。なんだ洋酒かよとあきれた様子で言い放った。日本酒も好きだけど何だか甘酒のような感じがして今一つ好きになれないと言った。

 でも洋酒は高くて買えないだろうと語った。実は、そうでもないと言い、横浜など港町では船員がラベルなしのコニャックを外国製品を売っている店でラベルなしは定価の半額以下で売っていると語った。船乗り達は数量が限定されているが無税で一定数量の高価な商品を持ち込めるという特例措置があると教えた。得た金で港町のバーに入ったり港の女性達と遊んでいる様だと話した。へー、そんな事があるのかと驚いた。

 だから横浜の港近くの訳ありの店を探検すると話した。その後も酒と料理の話が弾んで、話は続き、0時の時報が鳴ると、新年おめでとうと、お互いに祝った。千葉末吉は、こんなたわいもない話であったが、実に良い気分になった。こういうのが本当の幸福感と言うものなのかと、自分で買ってき悦に入っていた。そして、思わず、俺たちって本当に幸せだよなと兄に言うとお前、酔っ払ったのかと大笑いされた。

「何とでも言ってくれ!楽しい、うれしい、素晴らしい!と語った」
「千葉末吉は、たわいもないが、充実感、爽快感、幸福感の様な気分をかみしめた」
「こんな素敵な家族たちの所に生まれてうれしいよと言い母と祖父が目に涙を浮かべた」
「それを聞いていた兄の千葉裕一も俺だって苦労しているんだぞと言った」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み