第50話 公園
文字数 1,019文字
ある日の昼休みのこと。昼食を取った後、真名人と野崎は、肩を並べて、渡り廊下からグランドを眺めていた。
どこかのクラスの男子たちがサッカーをしている。あっ、今シュートを決めた。
真名人が試合に見入っていると、隣で野崎が言った。
「灰田ってさ、好きな人とかいるの?」
「え?」
思わず横を見ると、野崎は、手すりに置いた自分の手に視線を落としている。急になんの話だろうと思いながらも答える。
「別にいないけど」
「ふうん。そうなんだ」
野田はこちらを見ない。
「それがどうかした?」
「いや」
それなら、なんで突然、そんなことを聞くのだ。そこで真名人は、はっとする。
「もしかして、好きな人が出来たとか?」
性格もルックスもいい野崎はモテる。入学してから、何度か告白されていることも知っているが、今のところ交際している相手はいない。
「いや、なんていうか……」
はっきりしないうちに、授業開始のチャイムが鳴り始めた。
「ヤバい。行こうぜ」
野田は踵を返して、足早に教室に向かう。釈然としない気持ちのまま、真名人も後に続く。
その日の放課後、有無を言わさず、学校の近くの児童公園に連れて行かれた。前を歩く野崎に、真名人は言いつのる。
「ねえ、なんなのさ。なんで公園に行くの? 理由を聞かせてよ」
だが、野崎は何も答えてくれない。
「まあいいから。行けばわかるから」
納得はいかないが、大股でどんどん歩いて行ってしまうので、真名人は後ろからついて行くしかない。
公園の入り口に着くと、野崎はそのまま中に入って行く。彼は迷いのない足取りで進んで行き、やがて花壇の前のベンチに近づくと、同じ高校の制服を着た女子生徒が座っているのが見えた。
もしかして、あの子が野崎の? 付き合うことになった相手を、自分に紹介するつもりなのだろうか。
彼女のそばまで行って、野崎は足を止めた。真名人は、息を切らせながら、二人を見比べる。
立ち上がったのは、さらりとした肩までの髪の、きれいな女の子だ。たしか、隣か、その隣のクラスの……。
そんなことを考えていると、女の子が立ち上がって、真名人に向かって言った。
「こんにちは。私、B組の、及川夏見です」
「はあ……」
戸惑いながら、彼女を見つめていると、野崎が言った。
「及川とは、中学が一緒なんだ。家も、わりと近くてさ」
だからなんなのだ。それで、付き合い始めたということなのか? だが、野崎は続けた。
どこかのクラスの男子たちがサッカーをしている。あっ、今シュートを決めた。
真名人が試合に見入っていると、隣で野崎が言った。
「灰田ってさ、好きな人とかいるの?」
「え?」
思わず横を見ると、野崎は、手すりに置いた自分の手に視線を落としている。急になんの話だろうと思いながらも答える。
「別にいないけど」
「ふうん。そうなんだ」
野田はこちらを見ない。
「それがどうかした?」
「いや」
それなら、なんで突然、そんなことを聞くのだ。そこで真名人は、はっとする。
「もしかして、好きな人が出来たとか?」
性格もルックスもいい野崎はモテる。入学してから、何度か告白されていることも知っているが、今のところ交際している相手はいない。
「いや、なんていうか……」
はっきりしないうちに、授業開始のチャイムが鳴り始めた。
「ヤバい。行こうぜ」
野田は踵を返して、足早に教室に向かう。釈然としない気持ちのまま、真名人も後に続く。
その日の放課後、有無を言わさず、学校の近くの児童公園に連れて行かれた。前を歩く野崎に、真名人は言いつのる。
「ねえ、なんなのさ。なんで公園に行くの? 理由を聞かせてよ」
だが、野崎は何も答えてくれない。
「まあいいから。行けばわかるから」
納得はいかないが、大股でどんどん歩いて行ってしまうので、真名人は後ろからついて行くしかない。
公園の入り口に着くと、野崎はそのまま中に入って行く。彼は迷いのない足取りで進んで行き、やがて花壇の前のベンチに近づくと、同じ高校の制服を着た女子生徒が座っているのが見えた。
もしかして、あの子が野崎の? 付き合うことになった相手を、自分に紹介するつもりなのだろうか。
彼女のそばまで行って、野崎は足を止めた。真名人は、息を切らせながら、二人を見比べる。
立ち上がったのは、さらりとした肩までの髪の、きれいな女の子だ。たしか、隣か、その隣のクラスの……。
そんなことを考えていると、女の子が立ち上がって、真名人に向かって言った。
「こんにちは。私、B組の、及川夏見です」
「はあ……」
戸惑いながら、彼女を見つめていると、野崎が言った。
「及川とは、中学が一緒なんだ。家も、わりと近くてさ」
だからなんなのだ。それで、付き合い始めたということなのか? だが、野崎は続けた。