五 婚約

文字数 802文字

 翌朝。
 野菜をきざむ包丁の音で省吾は目ざめた。同時に、スマホが鳴った。母からだ。
「今、井上さんから連絡がありました。お父さんも私も反対する理由はありません。
 あなたたちの問題だから、責任もって進めなさい。
 憧れの人といっしょになれて良かったね!あの娘ならいいわよ!
 年上だから、時間ないから、大事にするのよ!
 こっちは父さんと、明日にも婚姻届出せるように、話、進めとく。
 かまわないだろう?」
「ああいいよ」
 省吾に断わる理由は何もない。

「今度の休み、二人で帰っておいで。
 昨日、帰ったのは、こういうことだったんだね。早く話せばいいのに。
 それじゃ、またね!久美さんによろしくね!」
「久美さんに、電話を代わろうか?」
「ちょっとだけね!」

「久美さん。お袋が話したいっていってる」
「うん・・・」
 省吾は、台所で聞き耳を立てている久美にスマホをわたした。
 久美は笑みを浮かべてスマホを受けとった。
「おはようございます。久美です。
 昨夜、母に連絡したら、すぐにそちらへ話すといってましたから、そんなに、あわないでっていったんです。
 でも、待ってられない母なので、朝早くからすみませんでした」

「そんなこといいの。あたしたちは大歓迎よ!
 これからはよろしくお願いします。
 すぐに婚姻届を出せるように進めておきますね。
 そのこと、省吾に確認して、できれば今日中にも連絡してね。
 今度の連休は、二人で顔を見せてね。待ってます。
 浮気するような息子じゃないけど、しっかり監視するのよ。
 私はあなたの味方よ。もう、あなたは私の娘よ!」

「はい、わかりました。連休は二人で帰ります。それではまた」
 久美は笑いながら電話を切った。
「あいかわらず、おもしろいお母さんね!
 あたし、好かれてるんだね。うれしいな!」
 久美は省吾に抱きついた。
 省吾には兄と姉と妹がいる。なぜか、省吾の母は久美の大ファンだ。以前から久美に好意を抱いてる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み