三 あたしの中に同化したい
文字数 2,624文字
錦糸町駅から近いマンションに着いた。久美は窓を開けて空気を入れ換え、エアコンのスイッチを入れ、笑いながら、コンビニで買ったビールとおにぎりをリビングの食卓に並べている。久美がコンビニで食べたい物を尋ね、省吾が食べたいといったおにぎりだ。
「汗かいたね。顔、洗ってね。シャワーを浴びる?
それとも昼ご飯にする?こんなので足りるの?」
「シャワーを浴びたい。汗でベタベタだ」
「そしたら、タオルだね・・・」
久美は脱衣所の収納から、バスタオルと風呂用タオルを取りだして、省吾にわたし、
「ビールとおにぎり、しまっとくね」
それらを冷蔵庫に入れた。
「お姉さん、腹が空いただろうから、先に食べてね」
「二人で食べたいから、いいの。早く、汗を流してらっしゃい。
出てくる頃には、部屋も涼しくなるから」
久美は省吾にバスタオルと風呂用タオルを持たせ、省吾の背を脱衣所へと押した。
省吾が浴室で身体中を泡まみれにしていると、
「背中、流してあげる・・・」
脱衣所から久美の声がし、ドアが開いて、髪をアップにした久美が浴室に現れた。
「・・・」
省吾は久美を見たまま呆然とした。久美は身に何も着けていない。
「背中向けてね・・・」
久美は省吾からタオルを取ると省吾の背中を洗った。
「はい、今度は前よ」
久美が省吾の肩に手をかけた。身体の向きを変えようとしている。
「ちょっと・・・」
省吾はあわてた。
「だいじょうぶだよ。いっしょにお風呂に入ったでしょう」
困惑している省吾に久美は笑顔を見せた。
「あれは・・・」
「あたしを、お嫁さんにするといったんだからね。
今日も、ずっとあたしの匂いに包まれていたいって・・・」
省吾は身体の向きを変えて久美を抱きしめた。
「あわてないの。身体をきれいにしてからだよ・・・」
久美は笑顔のまま、省吾の身体を洗いはじめた。
「うん・・・。こうなると、完全に姉と弟だね」
省吾の言葉に、久美は優しく答えて省吾の身体を洗った
「そしたら、お姉さんにまかせなさい・・・」
「はい・・・」
省吾は身体を洗う久美に身をまかせた。
久美は省吾の身体を洗った。
「省吾も、あたしを洗ってね」
省吾は言われるままに久美の身体を洗った。久美は優しく洗わなければならないところを省吾に教えた。
「あたし、経験ないの・・・。あなたのこと好きだから、ずっと待ってた・・・」
省吾は耳を疑った。聞きまちがえたと思った。
「身体、洗ってあげたこと、手慣れてるって思うんでしょう。
むかし、泥だらけになった、あなたと弟を思いだして、あの時みたいに、洗ってあげたいと思ったの・・・」。
久美は笑った。そして唇を震わせていった。
「何度も、何度も、思ったよ・・・。ストーカーだね・・・」
久美の頬に涙がつたった。
省吾の興奮は冷めていった。省吾は尋ねた。
「お姉さん、何があったの?」
「帰省して見合いさせられたの。親が世話になった人で、断れないっていわれて。
結婚じゃないよ。見合いそのものがだよ。
だからって、やけになってるんじゃないの。
するなら、あなたじゃないと、嫌なの・・・。
あたしのこと嫌いじゃないでしょう・・・」
久美は、幼なじみの省吾が久美を大好きなことを知っていた。久美も省吾が大好きだった。
省吾は高校へ通うあいだずっと、ファッション・デザイン・スクールへ通う久美の姿を見ていた。
久美は、いつも省吾が久美を見ていたことに気づいていた。久美はいつも省吾に見守られている気がした。とてもうれしかった。それがいつまでも続けばいいと思っていた。
「今も、お姉さんが大好きだよ」
省吾は、穏やかで芯が強くて優しい久美が大好きだ。久美は着やせすると省吾は思った。
過去に久美と風呂に入ったことがある省吾は、年頃になった久美を、さらに女らしさが増したと感じた。周囲は、薄茶の髪が長い童顔な久美を、省吾が感じたようには見ていなかった。省吾は久美への思いを誰にも話さなかった。久美への思いがあったから、北村真希と友人未満の関係がつづいた。
「やっぱり思っててくれたんだ。うれしいな。
そしたら、しっかり洗ってね・・・」
久美と省吾はたがいの身体を洗ってシャワーを浴びた。
浴室から出て、たがいをバスタオルで拭きながら唇を重ねる。
「久美さんから大好きな良い匂いがする」
省吾は久美からベビーパウダーのような匂いするのを感じた。
久美は省吾を抱きしめた。省吾から炒りたてのコーヒーのような香りする。
「あなたからも、あたしの大好きな匂いがする・・・」
久美は腕を解いて、
「布団、出すね。寝相が悪くてベッドだと眠れないの」
寝室に布団を敷いた。久美の胸がゆれ、くびれた腰がくねる。
久美を手伝う省吾にとって、久美の仕草は綺麗で胸がつまる光景だった。
寝相が悪くてベッドだと落ちてしまい、眠れないと久美はいった。
健康な子どもは寝相が悪い。寝ていても身体を動かして、筋肉疲労を取りのぞく。
「だから、こんなに健康に育ったよ。ほら、あたしを見て・・・。
緊張する?あたしはしてる・・・。
でも、安心してるよ。大好きな、あなただから、こんなに・・・」
久美は布団に座り、省吾の手を胸に引きよせた。省吾を抱きしめ、唇を重ね、手を腰に導いた。
省吾は久美を抱きしめた。省吾の腕の中で、久美の鼓動が震えるように伝わっている。
「優しくゆっくりしてね・・・」
久美はついばむように唇を重ね、省吾を撫でた・・・。
そして・・・。
「あたし・・・幸せだよ。大好きな省吾と一つになれて・・・」
省吾に抱きしめられて久美はささやいた。
「ぼくもだ・・・。お姉さんとこうなることを、ずっと思ってた・・・」
省吾は汗ばんだ久美の背を撫でている。
「うれしいなあ。あたしのことを、そんなに思ってたんだ・・・。
あたし、幸せすぎて、うごけない・・・」
「うごかなくっていい。ぜんぶ拭いてあげる・・・。あとで、シャワーしようね」
「うん・・・」
省吾は久美の身体を隅々まで拭いた。久美は恥ずかしいといいながら、省吾に身をまかせ、省吾の腕を握って撫でている。全身を拭き終わって省吾は久美の横に身を横たえた。
久美は省吾に顔を寄せて唇を重ね、ゆっくり省吾を撫で胸に頬を乗せた。
「大好きだよ。あなたが・・・。もう、久美って呼んでね・・・」
「わかった・・・。久美さんが大好きだよ」
省吾が久美に唇を触れて抱きしめた。
久美はあたしのなかに省吾を同化したいと思った。
「汗かいたね。顔、洗ってね。シャワーを浴びる?
それとも昼ご飯にする?こんなので足りるの?」
「シャワーを浴びたい。汗でベタベタだ」
「そしたら、タオルだね・・・」
久美は脱衣所の収納から、バスタオルと風呂用タオルを取りだして、省吾にわたし、
「ビールとおにぎり、しまっとくね」
それらを冷蔵庫に入れた。
「お姉さん、腹が空いただろうから、先に食べてね」
「二人で食べたいから、いいの。早く、汗を流してらっしゃい。
出てくる頃には、部屋も涼しくなるから」
久美は省吾にバスタオルと風呂用タオルを持たせ、省吾の背を脱衣所へと押した。
省吾が浴室で身体中を泡まみれにしていると、
「背中、流してあげる・・・」
脱衣所から久美の声がし、ドアが開いて、髪をアップにした久美が浴室に現れた。
「・・・」
省吾は久美を見たまま呆然とした。久美は身に何も着けていない。
「背中向けてね・・・」
久美は省吾からタオルを取ると省吾の背中を洗った。
「はい、今度は前よ」
久美が省吾の肩に手をかけた。身体の向きを変えようとしている。
「ちょっと・・・」
省吾はあわてた。
「だいじょうぶだよ。いっしょにお風呂に入ったでしょう」
困惑している省吾に久美は笑顔を見せた。
「あれは・・・」
「あたしを、お嫁さんにするといったんだからね。
今日も、ずっとあたしの匂いに包まれていたいって・・・」
省吾は身体の向きを変えて久美を抱きしめた。
「あわてないの。身体をきれいにしてからだよ・・・」
久美は笑顔のまま、省吾の身体を洗いはじめた。
「うん・・・。こうなると、完全に姉と弟だね」
省吾の言葉に、久美は優しく答えて省吾の身体を洗った
「そしたら、お姉さんにまかせなさい・・・」
「はい・・・」
省吾は身体を洗う久美に身をまかせた。
久美は省吾の身体を洗った。
「省吾も、あたしを洗ってね」
省吾は言われるままに久美の身体を洗った。久美は優しく洗わなければならないところを省吾に教えた。
「あたし、経験ないの・・・。あなたのこと好きだから、ずっと待ってた・・・」
省吾は耳を疑った。聞きまちがえたと思った。
「身体、洗ってあげたこと、手慣れてるって思うんでしょう。
むかし、泥だらけになった、あなたと弟を思いだして、あの時みたいに、洗ってあげたいと思ったの・・・」。
久美は笑った。そして唇を震わせていった。
「何度も、何度も、思ったよ・・・。ストーカーだね・・・」
久美の頬に涙がつたった。
省吾の興奮は冷めていった。省吾は尋ねた。
「お姉さん、何があったの?」
「帰省して見合いさせられたの。親が世話になった人で、断れないっていわれて。
結婚じゃないよ。見合いそのものがだよ。
だからって、やけになってるんじゃないの。
するなら、あなたじゃないと、嫌なの・・・。
あたしのこと嫌いじゃないでしょう・・・」
久美は、幼なじみの省吾が久美を大好きなことを知っていた。久美も省吾が大好きだった。
省吾は高校へ通うあいだずっと、ファッション・デザイン・スクールへ通う久美の姿を見ていた。
久美は、いつも省吾が久美を見ていたことに気づいていた。久美はいつも省吾に見守られている気がした。とてもうれしかった。それがいつまでも続けばいいと思っていた。
「今も、お姉さんが大好きだよ」
省吾は、穏やかで芯が強くて優しい久美が大好きだ。久美は着やせすると省吾は思った。
過去に久美と風呂に入ったことがある省吾は、年頃になった久美を、さらに女らしさが増したと感じた。周囲は、薄茶の髪が長い童顔な久美を、省吾が感じたようには見ていなかった。省吾は久美への思いを誰にも話さなかった。久美への思いがあったから、北村真希と友人未満の関係がつづいた。
「やっぱり思っててくれたんだ。うれしいな。
そしたら、しっかり洗ってね・・・」
久美と省吾はたがいの身体を洗ってシャワーを浴びた。
浴室から出て、たがいをバスタオルで拭きながら唇を重ねる。
「久美さんから大好きな良い匂いがする」
省吾は久美からベビーパウダーのような匂いするのを感じた。
久美は省吾を抱きしめた。省吾から炒りたてのコーヒーのような香りする。
「あなたからも、あたしの大好きな匂いがする・・・」
久美は腕を解いて、
「布団、出すね。寝相が悪くてベッドだと眠れないの」
寝室に布団を敷いた。久美の胸がゆれ、くびれた腰がくねる。
久美を手伝う省吾にとって、久美の仕草は綺麗で胸がつまる光景だった。
寝相が悪くてベッドだと落ちてしまい、眠れないと久美はいった。
健康な子どもは寝相が悪い。寝ていても身体を動かして、筋肉疲労を取りのぞく。
「だから、こんなに健康に育ったよ。ほら、あたしを見て・・・。
緊張する?あたしはしてる・・・。
でも、安心してるよ。大好きな、あなただから、こんなに・・・」
久美は布団に座り、省吾の手を胸に引きよせた。省吾を抱きしめ、唇を重ね、手を腰に導いた。
省吾は久美を抱きしめた。省吾の腕の中で、久美の鼓動が震えるように伝わっている。
「優しくゆっくりしてね・・・」
久美はついばむように唇を重ね、省吾を撫でた・・・。
そして・・・。
「あたし・・・幸せだよ。大好きな省吾と一つになれて・・・」
省吾に抱きしめられて久美はささやいた。
「ぼくもだ・・・。お姉さんとこうなることを、ずっと思ってた・・・」
省吾は汗ばんだ久美の背を撫でている。
「うれしいなあ。あたしのことを、そんなに思ってたんだ・・・。
あたし、幸せすぎて、うごけない・・・」
「うごかなくっていい。ぜんぶ拭いてあげる・・・。あとで、シャワーしようね」
「うん・・・」
省吾は久美の身体を隅々まで拭いた。久美は恥ずかしいといいながら、省吾に身をまかせ、省吾の腕を握って撫でている。全身を拭き終わって省吾は久美の横に身を横たえた。
久美は省吾に顔を寄せて唇を重ね、ゆっくり省吾を撫で胸に頬を乗せた。
「大好きだよ。あなたが・・・。もう、久美って呼んでね・・・」
「わかった・・・。久美さんが大好きだよ」
省吾が久美に唇を触れて抱きしめた。
久美はあたしのなかに省吾を同化したいと思った。