第14話   憎しみの化け物

文字数 4,889文字

「ふ、ふぅやっとここまで来た」
「長過ぎてもう疲れた」
「まぁ、あとはここだけなんだから最後は気持ちよく勝とうぜ」
「うん」

今フェレン達がいる場所はこの迷宮の最下層でもある60階層であり最後の番人でもあり最強の番人でもある階層だ。

ちなみにここまでくるまで約2日。ここまで来れたのはフェレンとエルナの力があってこそだ。ちなみにここまでの道のりでほとんどご飯は食べておらずフェレン達は番人の部屋の前で休憩を取っていた。

そしてフェレン達のステータスはこんな感じである。

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フェレン・ディーア 男 15歳 LV192 ランク★5
種族 人族
職業 冒険者 剣士
体力・1890
筋力・1900
魔力・1880
俊敏・1910
知力・1870
耐性・1880

スキル
『拘束』[+イメージ補正]・『リフレクター』[+イメージ補正]・『超集中』・『超加速』・『無言』・『心眼』
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エルナ 女 15歳 LV190 ランク★5
種族 人族
職業 冒険者 魔術師
体力・1720
筋力・1810
魔力・2050
俊敏・1740
知力・1930
耐性・1760

スキル
『魔力向上』・『魔力変換』・『詠唱略 中』・『成長速度倍』
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ちなみにエルナの成長速度も上がっており今やフェレンとほとんど大差ないが魔力だけが異常だった。それにつれマジックドールの操れる数も段々と増えていき頑張れば6体、普通で4体操れるようにもなった。その成長の速さにはフェレンもド肝抜かれた。

しばらくフェレンは休憩を取っていた。もちろんご飯を食べながら。そして補足しておくとここまでくるのにほとんどノンストップだ。連続で休まず来たので体力が予想以上に消耗しており、精神的にもあんまりよろしくなかった。

それにはそれ相応の訳もありフェレンは床に座りながらさっきまでの出来事を回想していた。



あの20階層、魔獣を倒したフェレン達はすぐさま次の21階層に行こうとしたものの冒険者に呼び止められてしまった。そのままフェレン無視して行こうとしたのもの道を塞いでいたので立ち止まるしかなかった。邪魔している事にフェレンはイラつきながら言った。

「邪魔だ。退け、俺たちは時間がないんだ」
「待て、俺たちはお前達を何者か判断しなければいけない」
「はぁ?お前らにそんな権利はねぇよ」

突然そんなことを言われてフェレンは頭壊した?と思いながら一応話を聞く。

そして彼らが言うにはこの冒険者達は国の了解をへてやっていたらしいなのでで途中から来たフェレン達は所謂知らんヤツ、なので確認しなければいけない。

だがそんなの知ったこっちゃないのでどこぞの骨野郎の時にやった殺人威圧を今回も使う。あぁ?といちゃもんを付けながら。ガタガタと震える人達も多く、確認を取ろうとした奴は、ぐっ!と苦悶を上げ膝を床に着きその瞳に写るフェレンを目に焼き付けた。

そしてフェレンは何もしてこないと確認を取り安心と確信してからフェレンはエルナを連れてそのまま21階層に続く階段を下り始めた。

それから即死級のトラップに連続して出てくる番人だったり様々なものがフェレン達を襲い辛いと心が折れそうになった時に最後の部屋に着いたという訳である。



それから食事にありつけていたエルナだがフェレンの様子を見て食事をする手を止めフェレンに寄りかかった。回想に耽(ふけ)っていたフェレンだが突然来た柔らかい感触に目を向けた。そこには当然こように寄りかかるエルナにフェレンは少し苦笑いをし仕方ないなと呟いた。

それから数分、フェレン達は十分に休息を取れたのでそろそろ行こうと声をかけエルナも準備をしてマジックドール、ルナとサタンを出す。フェレンも赤黒い大剣を持って自分の身長より高い扉の前に立った。ちなみにフェレンが持っている赤黒い大剣は“紅黒牙(こうこくが)”という。

この紅黒牙はある錬成師に作って貰った剣でどんな物でも切り裂ける強力な剣である。そして補足しておくと、この赤黒い色はその錬成師の好みである。なんともまぁ趣味が悪い。

フェレンは1度エルナを見て準備はいいか?と声をかける。その問にエルナはいつものように返事を返す。

「うん!」

確認を取れたフェレンはゆっくりとその重い扉を開けた。2人は中に入ると青白いランプがゆっくりと円を描くようについた。長方形な部屋で縦が長く高さも30メートルはあるように見える。

直ぐに来るのか?と警戒するが何も起こらなかったので奥に進む。100メートル進んだ後に行き止まりを見つけた。だが、正確には行き止まりではなく大きな両開きの扉だった。それもこの部屋の高さとピッタリと同じ大きさである。その扉には綺麗な見蕩れる程の彫刻が施されておりエルナはじっと見ていた。

「凄い綺麗」
「だな。だが階段ない、となると・・・・・・」
「ここが最後」

ここが最後の番人と言うような感じだ。実際フェレンは感知系の魔法を使っているが何も反応がない。が、フェレンの本能が危険、と警鐘がなっていた。この先はヤバいと。エルナもそれを感じているのか少しマジックドールを動かしふわふわと浮かしている。

そして2人は一歩踏み出す。その瞬間、フェレン達の前に20メートル程の赤黒い魔法陣が現れた。その赤黒い魔法陣は徐々に光が強くなりそしてあたり一体その光で埋め尽くされた。咄嗟のことで2人は目を手をかざし光が入り込まないように守った。

だが、その光はこの部屋に明かりを灯すように部屋全体に光が壁や床に付着した。それと同時にフェレン達はかざしていた手を離し奥に現れた何かを凝視するように見ていた。

その奥には人影がいた。黒い甲冑を着ており顔が見えた。だが、これは骨だった。所々見える骨にそれには似つかないような禍々しい刀。妖刀と呼べば分かりやすいか。その骨武士は紫のようなオーラをチラつかせていた。

その姿に2人は後ずさる。不気味。その言葉が当てはまるような雰囲気を醸し出している。フェレンはヤバいなと思いながら構える。エルナも警戒心を最大にしながらマジックドールを前に出した。自分を守るように。

だが、2人は驚愕する。骨武士は妖刀を突き出すように構え、そして骨をカタカタと顎を動かし・・・・・・。

「コロシテヤル!ユルサンッ!」

・・・・・・今何をした?喋った、喋ったのだ魔獣が。は?そんなことはない。と考えに没頭するフェレンに突然エルナの声が頭に響く。

「フェレン!避けて!?」
「・・・・・・ッ!?」

その瞬間激しい衝撃と轟音が骨武士とフェレンの間に発生した。見ると骨の武士はフェレンに向けて突いておりフェレンはそれをギリギリ紅黒牙(こうこくが)で受けた。が、左肩に少し傷を受けてしまった。そしてエルナはその衝撃で少し飛ばされるも受身を取りその場で見ていた。

死闘の戦い、全く援護できる隙がなくフェレンと骨武士は攻防を繰り返していた。

「っち、全く隙がねぇ。どうするか?」
「コロシテヤル!コロシテヤル!」

骨武士は隙を見せるどころか攻撃が激しくなっていく。途端、フェレンの左腕に違和感が生じた。なんと左腕が動かなくなってしまった。色々記憶を辿っていくとさっき妖刀で斬られてしまった所だ。

「っち、くそ!アホだろ。こんなの化け物じゃねぇか!?骨のくせしてなんつう威力だよ!」

そう実は骨武士が持っている妖刀は斬られると妖刀の能力で『呪い』が発動する。この呪いは神経を麻痺させ動かなくさせる非常に厄介なものだ。

フェレンの動きが鈍ったと骨武士はチャンスと見て大きく右上から振り下ろした。だが、フェレンはそれを紅黒牙で弾き返し、1度エルナのいる所まで下がった。

動かない腕に心配するエルナ。フェレンはそれに少し笑いながら返した。

「はは、まぁまだ大丈夫だ。いざとなったら切り札を使うさ。それと俺が足止めするから合図で特大なやつを骨にぶつけてやれ」
「うん」

フェレンはまた骨武士に近づいて足止めを始めた。それと同時にエルナはフェレンの合図を待った。フェレンは骨武士に近づくとある事に気づく。なんと骨武士の上から紫が魔法陣が突如として現れたのだから。

「な!」
「ムゲンノノロイ」

フェレンは骨武士が魔法を発動させたことに驚いていた。が、今は回避に専念しなければいけない。今骨武士が発動させた魔法陣から顔の形をした浮遊体が無数に出てきたからである。

そしてその浮遊体はまっすぐフェレンに向かっていく。逃げようとしたがスピードが速く捕まるのも時間の問題だ。そう判断したフェレンは魔法を使った。

「超集中・超加速!」

知覚能力を3倍に上げる超集中とスピードを3倍に上げる超加速を使い浮遊体を避けながら骨武士に近づいていく。だが、数が数だけにフェレンはギリギリで避けていく。

次々と避けていく中、骨武士はカタカタと顎を鳴らしイラつきを抑えていた。更に追加しようとまたカタカタと揺らし一言言おうしたが何故か喋れなくなってしまった。もう一度言おうにもカタカタと顎を鳴らすだけ。

そうフェレンはあの浮遊体をこれ以上増やさないために魔法“無言”を使い骨武士に喋らせないようにした。それより効果があったのか、あの浮遊体は増えなくなった。

それにより骨武士が劣勢になった。数が少なくなったことによりフェレンは軽々と避けていく。そして手を前にかざし、また一言魔法を言った。

「拘束」

青い鎖が骨武士の手足を縛り動かなくさせた。フェレンはそのまま骨武士に近づき紅黒牙を振りかぶる。

「じゃあな。砕けろ」

その言葉と同時に紅黒牙で斬り下した。付けていた甲冑は取れて骨もバラバラに砕けた。だが、まるで再生させるように骨はカタカタと近づいていく。その様子を見たフェレンは後ろに下がりエルナに合図を出した。

「エルナ!」
「うん!極光(きょっこう)」

その言葉を放った瞬間、骨武士の上空から直径10メートルくらいの光の魔法陣が現れた。そしてその魔法陣から光がどんどん強くなった。骨武士も何か気づいたのか上を見た。

「!?」

驚いているのか顎をカタカタ揺らしながら必死にこの場から離れるように骨を動かし元に戻ろうとしている。

だが、そんなことをさせようにと光はより一層強くなりその状況にフェレンは余裕そうに呟いた。

「これで終わる。よし」

そしてエルナはフェレンの合図を待っているかのようにフェレンに尋ねた。

「フェレン撃っていい?」
「撃っていいも何もこれはお前の魔法なんだから別に合図なんて要らないぞ」
「うん」

フェレンの言葉を聞いた後エルナは1度骨武士に視線を向け1度右腕を空高くあげた。そして静かにそっと何も音を立てずにごく自然に腕を振り下ろした。その瞬間目が開けられないほどの光が降り注いだ。

形が元に戻らずその光が降り注ぐ。その光景は正に神の鉄槌と言っていい程だ。そして光は地面に到達すると衝撃と轟音が2人を襲い、光は骨武士を襲った。全てを蒸発させる程の熱と眩しくて周りが見えない程の眩しさが骨武士に追い打ちをかける。

骨は溶け剣も甲冑も無くなり残ったのはひとつの声だった。それは酷くおぞましくゾッとする程怖い声だった。

「コロシテヤル!コロシテヤル!ゼッタイ!?ユルザン!?」

その後光は止み光の中心には何も無かった。そして骨武士を倒したことに2人は安堵する。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

何も喋らずただ倒したと達成感と安心の余韻に浸った。フェレンは立ちエルナに近づく。エルナもフェレンに近づく。

だが、その直後

「フェレン!?」

エルナの声、視線ありえないもの見るような目だった。フェレンもそちらに目を向ける。そこでフェレンは驚愕する。

なんとフェレンの後ろに黒紫の靄がかかったような物が立っていた。その靄は何をしたいのか分からなかったが本能的に紅黒牙を構え守りに入った。

キーン

ありえない音とともに何かが床に飛び散る。

それは血だった。

そしてエルナは驚愕する。そこに床に倒れていたのはフェレンだった。
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