第11話   罠

文字数 4,799文字

「少し休憩だ」
「うん」

そう言ってフェレン達5人は床に座る。エルナはフェレンに近づき体を預けた。その光景を羨ましそうに嫉妬の混じった視線がフェレンに突き刺さる。そんなことは最近になって慣れたのでスルーする。

今現在フェレン達がいる階層は12階層。13階層に繋がる階段の前で休憩を挟んでいた。問題が起こった階層が13階なので今までより隅々まで探さなきゃいけない。

数分後

そろそろいいだろうと言いフェレンは休憩を終わらせて体を起こし階段を降りていった。それに釣られるように4人も立ちエルナはフェレンの横に並ぶのだった。3人はフェレンの後をついて行く。

13階層に着きまずフェレンが言った一言は・・・。

「暗っ」

フェレンが言ったようにこの13階層は暗い。何も見えない。ギリギリ近くにいるエルナが見えるくらいで足元もほとんど見えていない。それにこの階層は魔獣もそれなりに強くなっている。勿論それは初心者と中級者にとってはの話だ。フェレン達にとっては問題ない。

階段を降りた先でフェレンは1度立ち止まり収納魔法からランプを取り出した。エルナにもランプを渡してライトをつける。暗かった通路は照らされフェレン達の影が大きく見える。離れないように、と4人に声をかけフェレンは先には行き、それにエルナについて行くのだった。

さっきも言ったがここ階層は暗い魔獣に不意打ちをされることもあるのだそう。そこでエルナは頼れるマジックドール銀髪ルナを取り出していつでも備えられるように警戒しながらフェレンにくっつく。

さすがにこんな危険な場所でくっつくのは少し危機管理がなってないと思い少しエルナを離した。エルナは自分を離したと瞬時に理解フェレンに尋ねた。

「嫌だった?」
「いや、嫌じゃないがさすがにこの場でやるのは緊張感の欠けらも無いぞ」
「だって、・・・・・・暗くて怖いし」

その答えにフェレンは密かにドキッとしながらもダメなものはダメ!と言い切り13階層を隈無く散策する。
その際エルナは非常に不機嫌になったが。

数時間くらい探していたそんな中フェレンはある事に気づき後ろを振り向いた。それにつられエルナも後ろを振り向く。

「どうしたの?」
「いや、全然手がかりも見つからない。魔獣には遭遇するが何ない。それにあの3人がいない」
「ほんと。はぐれた?」
「かもな。だがな、下に続く階段も見つかったしどうするか?」

途中一緒に探していた3人もどこかえきえてしまった。あれ程はぐれるなよと注意したつもりだがどうやら勝手に行ったらしい。

そしてフェレン達2人は暗闇の中ずっと歩いていたら、いつの間にか下に続く14階層の階段を発見したのだ。だが、あの3人とはぐれてしまったフェレンは行くかどうか悩んでいた。

エルナにも聞こうと思ったが、その考えは捨てて今はどうするのか頭をフル回転させる。数分考えようやく方針が決まった。フェレンは1度エルナに声をかけ進もうとする。

「ん?」

進まないエルナに少し疑問を抱きながら行くぞ、と声をかける。だが、フェレンの声に反応せず逆に何かを凝視するように奥を見つめている。まるで、何かを見つけたように・・・。

「光った」
「光ったって何が?」
「赤い何か、3つくらい」
「もしかして、あいつらそこにいるのか」
「わかんない」

フェレンも奥の方を凝視しているその赤い光は現れた。赤い閃光はどんどんフェレン達に近づいて飛来していく。近づくにつれその赤い閃光は光を大きくしていく。その光がこちらに近づく様子にフェレンは気づいた。

「っち、魔法か!くそ!リフレクター!」

赤い閃光が魔法と気がつくと反射的にリフレクターを展開させエルナを自分に引き寄せた。エルナもフェレンの様子に危機感を持ったのか自然にフェレンにくっついた。

やがて、その赤い閃光はあと数十メートルでフェレンに着弾するはずが何故か急にクイッと軌道を変えそのまま天井に着弾し爆ぜた。

まるでフェレン達を生き埋めにするかのように。

(クソが!)

着弾した衝撃でバランスを崩し衝撃波で飛ばされてしまった。視界も落ちてくる瓦礫で遮られ今抱き抱えているエルナを守るように体を丸める。そしてそのまま階段に体を打たれながら下に落ちていくのだった。



魔法の発生源である少し遠く離れた場所、そこにはある集団がいた。その集団は上手くいったことに高笑いしていた。

「アヒャヒャヒャヒャハャ~~!!いったいった上手くいった!」
「これで5つ」
「どんどんやっていこう」

その集団は純白の汚れがない防具を来ており武器も中々強いものを装備している。そしてその集団はさっきまで強力な冒険者を2人ほど連れて行動しており今さっき落としたのだ。

金と女そして自分の欲望の為に。当然それらに罪悪感などは一切なく逆に達成感や嬉しさに心が満たされていた。そしてその集団とはさっきも言った通り2人と行動していたあの3人組だったのだ。

その3人はハイテンションのまま上手くいった事への幸福感が駆け巡りながらも積み上げられた瓦礫の山に近づき瓦礫を掘っていく。ガダッガダッと瓦礫を漁る、が目当ての物が見当たらない。どこを探しても見つからずそのことに少しイラつきながら瓦礫を蹴る。

「っち、ここにはいねー。下敷きになっているかと思ったが爆破の衝撃で下に落ちたかもしれねぇー」
「あ、いーや、今日は別にそれより。俺達の力があいつらに通じることがわかった今日はそれだけで十分さ。よし、明日からまた嵌めるぞ。」
「「あぁ」」

気持ちを切り替えて3人は明日のターゲットを見つけるため1度街にもどるのだった。


3人組がフェレン達を落としダンジョンから姿を消した1時間後

明るい暖色の光、眩しすぎるその光、ひんやり冷えた床に冷たい風が頬を撫でる。そして重い乗っかっている何かが少し動いたことにより体が反応し同時に意識が覚醒する。

「痛ぇ・・・・・・っとここは」

目覚めたと同時に襲う痛み。それに耐えながら少し体を起こして周りを見渡す。何か目につくような物を探すが見つからずただあるのは一緒に落ちてきたであろう瓦礫とフェレンの上に乗っている1人の少女エルナだった。

それを見て次第に蘇ってくる記憶。頭痛が響く頭を押さえながらその出来事を鮮明に思い出す。

「あ~、そういえば階段付近で魔法が天井に当たってその衝撃で階段に落ちたんだ」

フェレン達は無事でいたもののこれが並の冒険者だったら普通に死んでいた。フェレン達が落ちた階段は300段あり体を強打しまくって動けないでいたはず。

だが、フェレンは頭を強打しつつも気絶した程度ですんだ。これもフェレンの強靭な肉体のおかげだろう。

これからの方針は後に決めるとし手を離してまずエルナを起こすことにした。だが、フェレンはある事に気づく、少し自分の手には濡れた感覚があり見れば赤い液体がついていた。

そうフェレンは頭を強打しすぎて頭から出血したのである。だが、そこまで傷は深くなくただの軽傷で済んだ。そんなことは気にせずにエルナの体を揺すり起こす。

「おい、起きろ。エルナいつまで寝ているつもりだ」
「うーん。もうひょっと」

エルナの頬を優しくつねりながら体を揺する。エルナの体には強打したところはなくむしろ気持ち良さそうにフェレンの上で寝ている。が、いつまで経ってもエルナは起きずイライラしたので次第につねっている手に力を込めて引っ張っていく。

キュッ・・・ピクッ、ギュッ・・・ビクッ、ギリギリッ・・・ビクビクッ

そうしてエルナは自分の頬を引っ張られていることに気づいたエルナはムクリと体を起こしファ~は欠伸をする。

「ん、おやよ~」
「おはよ」

ゴシゴシと自分の目を擦りフェレンを見る。ちなみにまだ頬から解放されていないが気にせず話す。

「ろろは、ろこ?(ここは、どこ?)らしか、わらしらちは(確か、私達は)あ、ろろにおりて(あ、ここに落ちて)ろうなっはんはっけ?(どうなったんだっけ?)」
「階段から落とされた」
「ふん」

フェレンがいることに安心しエルナはもう一度深い眠りに入ろうとしていた。

「おやふみ」
「待て待て」

だが、ここは迷宮そう簡単に許すはずもなく引っ張っていくいた頬をもっと引っ張っりそのまま戻した。

ビタンッ!

戻した頬の衝撃があまりに痛くエルナは完全に意識を覚醒させた。だが、そんなことよりこんな酷いことをしたフェレンに文句を言った。

「いらい!何しゅるの!?」
「はぁ、全く寝るな。ここは迷宮だぞ。寝るんだったら安全なところで寝てくれ」

当たり前のことを返されて少し拗ねるエルナだがフェレンはそれを華麗にスルーし今後のことを兼ねて方針を決めていく。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。これからが問題だ」
「どうするの?このまま進む?」
「そうだな、ずっとここにいてもどうにもならない。それにどうせ上は瓦礫の山と化しているからな。このまま下に行ってレベルでも上げながら、ここから出る方法を探すか。」

フェレンはエルナの提案に便乗し下に行くことを決意する。エルナも異論は無く頷く。2人はここを立ち、早速攻略を開始した。


14階層

13階層の魔獣より強力である。13階層の暗い場所ではないが何かが潜んでいるというのは確か。初めての攻略するので2人は注意して進む。

暖色のランプが一定の距離で置かれているため何故か安心する。魔獣を倒しつつ隅々まで探索する。エルナのレベルも順調に上がっているので油断さえしなければ問題。少なくともさっきまではフェレンはそう思っていた。

だが、今ではピリピリとした空気が漂っていた。そんな中嫌悪感丸出しのエルナはフェレンに言った。

「トラップが多すぎ」
「仕方ないだろ。それがここの階層なんだ。我慢しろ」

今フェレンはトラップを解除していた。そうエルナが言ったようにここの階層トラップの倉庫。ありとあらゆる所にトラップが設置されており、まず解除には数十分必要だ。

だが、フェレンはトラップの解除に数秒あれば問題ない。その理由とは・・・。まずフェレンには『超集中』というスキルを持っておりこれを使うことによって数十分かかるトラップ解除をものの数秒で終わらすことができるのだ。

だが、その『超集中』も無限に使えるわけでなく相当な魔力を消費するなのであまりに効率のいいやり方ではないのだ。

数十分この14階層にフェレン達は探索していた。疲労も少しづつ見えてきた。朝から潜り続けてろくに食事を取っていない。

限界が来たのだろう。エルナは膝を押えはぁはぁと吐息を吐きながら息を整える。そんなエルナを見てフェレンは休憩と言ってドサッと床に座った。その隣に当然のように座るエルナ。何も言わずにフェレンは収納魔法から非常食を取り出した。

と、言っても普通のパンと缶のスープだ。フェレンはエルナの分を出しパンを貪り食う。硬いパンにほとんど味のしない赤いスープ、不味いと思いながらも食事がある事に感謝する。

「ムグムグ・・・・・・ゴックン!さて、まだまだあるか・・・・・・」
「ん、大変」
「あぁ、それにタイムリミットもついている」
「どういうこと?」

フェレンの言ったことにまだ理解出来ていないのか首を傾げる。そんな姿が微笑ましくフェレンは優しく答える。

「今俺達が食っているご飯さ。一応1週間3食、21食持っているがこのままだと意外と持たないかもしれない。最高で持って4日って所、最低でも3日それまでになんとしてもここを抜け出さないと俺たちはこの迷宮で死ぬ」
「・・・・・・」

フェレンの言葉に重みを感じたのか少し気圧され黙るエルナ。だが、フェレンは大丈夫、問題ないと言うようにエルナの頭を撫で安心させる

「心配するな。絶対そんなことにならないように早く出てやる。たったそれだけの事だろ」
「・・・・・・うん!」

不安、怖い負の感情が頭を巡るがフェレンの言葉と撫でられた頭を思い出すとそれらは砂のようにサラッと溶け消え気合が戻った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み