第6話   影の世界

文字数 4,748文字

「侵入者だ!捕まえろ!」

入ってきた瞬間に見つかった。
2人組で来ておりこちらに走り追いかけている。
地下水路は暗く目がその暗さに慣れるまで少し時間がかかった。仮面で顔は見えないが体つきと声からして男のようだ。その2人組は手に杖を持っており走りながら唱えた。
何を・・・そう、魔法を。

「神よ、不審な輩に鉄槌を、火の精霊よ我に答え、円を描け!円火《えんか》!」
「神よ、不審な輩に鉄槌を、氷の精霊よ我に答え、刃となれ!氷刃《ひょうじん》!」

円火と放たれた炎は地を滑りながらフェレンのもとに行き抵抗する暇もなく包囲した。そこから火柱が立つがフェレンは剣を抜き構える。

だが、その隙に氷がポンッと出てきた。その氷は徐々に形を変えていき、やがてそれは槍状に真っ直ぐ伸びフェレンに向かった。フェレンは無闇に体力は使わないようにとあるスキルを使った。
そして一言それは一瞬。

「リフレクター」

空色の六角形の板がフェレンを全体で守るように大きく展開された。本の数秒、フェレンに向けられた氷の刃は気分で軌道を変えるように2人組の方に向いた。
だが、その氷の刃は2人に当たらず通り過ぎた。一瞬の出来事で2人は頭が回らず何が起こったのか、理解するのに数秒かかった。

「うおっ!な、なんで攻撃が跳ね返るんだよ!?」
「お、おかしい」

あまりの出来事に頭が混乱し言葉が回らない。ただ、混乱した中で一つだけ考えが出てきた。『逃げる』その言葉が頭に強く響く。逃げなきゃ死ぬ、こいつはやばい!本能がそう叫ぶように逃げようとする。が、フェレンがそれを見逃すはずなく、もう1つのスキル『拘束』で2人の動きが封じ込めた。

その間にフェレンは炎の拘束から抜け出し相手の間合いを詰めて動けない2人に威圧をかけた。2人はこれまで感じたことのないもの、それに恐怖しながら息を飲む。そんなことお構い無しにフェレンは剣を使い2人の首を跳ねた。

シャワーのように血が吹き出しドクドクと下に溜まる。ゴトッと2つの首は地下水路の水に着水した。
あ、とそこでまた2つの首を見た。情報を聞き忘れた、思い出したように呟く。だが、そこで楽観視するフェレン。偉いやつに聞けばいいや、という結論に至り他の奴らは全て殺すということになった。なんと無慈悲な・・・。

確かに無慈悲だと思うが復讐心を燃やすフェレン。結局の所仮面だろうとなかろうと邪魔をすればタダでは済まされずやられるのだ。だが、フェレンは初めて人を殺した何も思わなかったが。なんとも呆気ない感じである。

次の目標を速やかに排除する為走る。走ったことに地下水路の音が響く。また、フェレンの瞳に何かを捉えた。今度は3人組少しは油断しなければ行けないが逆にフェレンは不敵に笑い手をかざした。

「拘束」

そう呟いた後奥から青い鎖が見える。段々と近づいて行く度に敵の声が響いて聞こえる。

「な、なんだこれ?」
「鎖?」
「ほ、解けねぇー!」

突然自分の足元から鎖が出てきたのだ。混乱するのが当たり前である。何が起こっているか三人はパニック状態になりどうする?どうする?と懇願している。
そんな中フェレンは敵に存在を知られることなく2人と同じように首を落とした。

血が吹き出し、その血がフェレンの顔に付着する。順調にいっているのでこの調子でどんどん行こうとまた走り出す。そこからは拘束してから斬る、拘束してから斬るを繰り返していた。だが、フェレンの動きは途中で止まる。

フェレンの行動を抑えるために9人くらいの人が協力し抑えている。3、3、3と別れそれぞれ攻撃、防御、回復とバランスよく魔法で回す。実際それは効いておりなかなかフェレンはこの戦術を崩せないでいた。

攻撃されれば防御陣営が防御し、防御陣営がやられば回復が働く。回復陣営がやられそうになると攻撃陣営が邪魔をする。フェレンにとっては非常ウザイ相手だった。そして1人の仮面が一言呟いた。

「これ、いける!奴に勝てる!我々の力が圧倒している!」

その言葉に反応するように味方は声を上げ、逆にフェレンはため息を着いた。フードを被っており微妙に顔が見えず集団は少し不気味と思い、息を飲んだ。

「ククッ、舐められたもんだ。『無言(むげん)』」

無言、フェレンがそう言うとある変化が起きた。それは9人いる集団の方だった。何も起こらなかったこの状況に1人の男が面白おかしく笑った。だが、声が出ない。そのことに驚愕し集団はパニックになった。話すことができないので、コミュニケーションも取れずし魔法も撃てない。本来の目的を忘れ、身を寄せ合っている。

その混乱している状況に、フェレンは『拘束』を使い9人を捕まえ一瞬で終わらせた。呆気なく終わった。もう少し楽しみたいなという気持ちもあったがどちらかというと壊滅に力を入れたいと思ったからだ。
あ、と一言呟く。

「もう、いない・・・か」

ここ地下水路には敵の存在はもういないが一度確認のために探索魔法を使う。敵意のようなものは近くに感じないが、少し遠くにかすかな気配を感じた。非常に小さく風前の灯に近い、小さくそして弱い。そんな気配が2、3人程度だが固まっている。フェレンは助けるかどうか考えたあと依頼でもあったことを思い出し小さな気配のところに向かうのだった。

奥の通路を通りながら小さな気配を辿る。その小さな気配に近づいていくうちに行き止まりの壁にぶつかった。ここで終わりか、道を引き返そうとしたがもう一度その壁を見る。暗くてよくわからないが鉄の扉のようだ。ほとんど錆びていて硬い。が無理やりでもガダッと扉を開けた。

そこには三人の子供がいた。その三人は床にうずくまっていて咳き込んでいる。それによく見るとボロボロになっており、所々痣もある。

「おい、聞こえるか。助けに来たぞ」
「「「ケホッケホッ・・・・・・ケホッ・・・・・・ケホッケホッケホッ・・・・・・」」」

フェレンは三人に声をかけるが一切反応したない。咳が酷く周りが見えていないようだ。フェレンは3つの薬をバックから取り出し三人に近づいた。そこで三人はやっと人がいることに気づいた。

「・・・・・・ケホッ・・・お兄さんは・・・誰?ケホッ」
「俺はお前達を助けに来ただけだ。あとこれを飲め。その咳も止まるぞ」

三人はフェレンから手渡された薬の入った小瓶を掴み必死に飲む。小瓶をゴトッと置き自分の胸を当てた。
徐々にその咳も収まり顔色も良くなった。そして、収まった咳、1人は自分の胸に手を当ててこう言った。

「痛くない?辛くないし体が軽い。お兄さん助けてくれてありがとう!」
「・・・・・・」

照れてるという訳ではない。単純にお礼を言われることが滅多にないのでどう反応したらいいのか困っていたのだ。フェレンは話で誤魔化そうと三人に色々聞いた。

「なぁ、お前らはここで一体何をされていたんだ?」
「なんか、生贄とか分からないこと言って血を集めるとか言ってたよ」

話してくれる少女の顔は暗く覇気がない。当然だ、なんせ自分がそんな訳のわからん生贄、血に変えさせられるのだから。

「それで他に人はいるか?」
「ううん、ここには私達以外に居ないよ。だけど西には1人だけいるって話を微かに聞いた。でも、その人はもう生贄にされるかも」
「そうか、助かった。取り敢えずここを出よう」

ここを出る。そう言った瞬間、三人の顔は明るくなった。きっと、数日、数ヶ月はここに閉じ込められたのだろう。既にこの地下水路には人はいなかったので簡単に地上に出れた。周りを見る。敵の気配は近くに感じず探査魔法では西の方角、スラムに多数の気配を感じた。東の地上の敵はいつの間にかここを放棄していたらしく西に移動していた。遠くて分かりずらかったが。

外に出れた三人は夜だが目を輝かせていた。外に出れた!久しぶりの外に嬉しそうに周りを見ていた。三人を連れて1度スラムを出てる。西のスラムに行くのでついでに保護施設に三人を預けてもらおうと考えていた。

数十分後

「えー、この子達を?」
「あぁ、俺にはまだ終わっていない依頼があるからこいつらを預ける。後のことは任せた」

保護施設に預けてもらおうと係員の2人に事情を説明した。思いのほかわかってくれたみたいで早速1人が三人を中に連れて行った。その際、三人がフェレンに向かってこう言った。

「「「ありがとう!!」」」

そう言ってトコトコ施設の奥に消えていった。無事にひと段落着いたがまだ西に残っている人もいるので全力で西に向かう。全力で行った結果予想より早く着いた。フェレンは東と同じように中から攻めていく。

その際また、同じように拘束しては斬り拘束しては斬るを繰り返していた。どんどん進んでいたら別れ道に着いた。枝分かれしており、まずは右から進んでいった。

だが、そこに敵の姿がなくあるのは今進んでいる道。それ以外は何もなくフェレンは取り敢えず、行き止まりになったら戻ろうと決めた所に突然現れた。それは・・・扉だ。大きく巨大な扉幾何学模様をズラリと並べたようなそんな感じだ。

当たりか?そんなことを思いながらいかにも重そうな扉を押し開ける。扉は重くゴゴゴゴゴッ!と言って開いた。奥に進む。それと同時に扉は閉まってしまった。

「っち」

軽い舌打ちをし周りを見る。暗くてよく分からなかったが、周りに着いていたランプがポンッと徐々に光り始めた。数秒後既に明るくなっており、フェレンは周りを見た。周りは円になっておりまるで闘技場だ。しっかりと天井があり逃げられないようになって奥には檻もあった。

そして奥からガラガラと檻から何が出てきた。ライオンのような馬のような何が角を生やしており尻尾も異常に長く何かはフェレンの前に現れた。その何かは首に何かをぶら下げておりフェレンはそれをまじまじと見た。

書いてあったのは《キメラ》だった。フェレンは心踊った。まさか、キメラとここで戦えるとは。キメラ、それは架空の存在でありここに存在する。キメラを作るのは良しとされていたが誰一人としてキメラを作り上げた人はいない。

だが、今フェレンの前にいるのは紛れもないキメラ、本物だ。キメラは相当強いと言われていた。退屈していた心は一気に蒸発し目を覚ました。持っていた剣を強く握り締め駆け出した。

拘束を使い動きを鈍らせる。鎖はすぐに解けたが動きが鈍った隙を突き首に入れる。だが、その斬撃は跳ね返された。

「何!?」

今まで剣を跳ね返されたことがなかったフェレン。予想外なことが起こって少し驚いたが冷静さを取り戻した。キメラの首は少し血が流れておりヒタヒタと地面に染み込んだ。傷は浅いがちゃんと入っている。そう気持ちを強く持ったところでキメラは吠えた。

「ガォーーーー!」

響く雄叫びに耳を塞ぎ鼓膜を守る。雄叫びを終えたあとキメラは力強く地面を蹴りフェレンに接近した。意外な体の割にスピードが早くフェレンは対処できず、腕に傷を貰った。そのままキメラは勢いに乗り体を反転させ爪を立てて振りかざした。

そこから発生した風が刃に変わりフェレンに襲いかかる。フェレンは後ろに向いた後驚愕する。風の刃が真っ直ぐこちらに接近しているからだ。刃のスピードは早くフェレンは考える暇なく反射的にあるスキルを発動していた。

「くっ!?リフレクター!!」

反射的に発動させたリフレクターにより風の刃は跳ね返りそのままキメラに向かっていく。キメラは何が起こっているか理解出来ずにそのまま自分で放った刃に切り裂かれた。

自爆?戦略勝ち?よく分からなかったが結果的に勝てたのでフェレンはそのままドカッと地面に座り込んだ。今までほとんど休まず戦闘しており体力的にもキツかった。この機に休憩しておこうと傷薬を飲み。一息着いた。

あと少し、そう思いながらフェレンは目を瞑るのだった。
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