第16話   迷宮の真理

文字数 4,586文字

エルナはフェレンに近づき隣に座り頭を預けた。やっと終わったと安堵する。

「やっと終わった。・・・長かった。これでようやく地上に出られる」
「そうだな。・・・・・・・・・結局救出なんてでっち上げだった。まんまとやられた」
「うん、そのせいで私も疲れた」
「俺も・・・。っと行くか」
「うん」

2人はゆっくりと立ちマジックドールと妖刀を回収した。エルナはマジックを見てしょんぼりしていた。初めてもらった武器を失って少し涙目になっていた。

そんなエルナを見てフェレンは頭を撫でる。

「っ!?」

頭を撫でられたことに驚きながらも嬉しそうに笑っていた。フェレンはエルナを励ます為に紅黒牙を見せた。

「あ、それ」
「そうだ、これはさっきの戦いで折れたやつだ。もうどうしようも出来ない。だが、お前のマジックドールは直せるぞ。だからそんな悲しい顔をしないで少し笑え」
「うん」

励ませれたことによってエルナは笑顔でマジックドールを仕舞う。フェレンも紅黒牙を仕舞い、いつの間にか開いていた扉に向かうのだった。

「中はそんなに広くないな」
「普通・・・何も変わりわない。敵もいない」
「まぁ、あれが最後の番人ってことはもう知ってるから出てこないと思うが」

少し警戒しながら部屋に入る。部屋にはランプが部屋の角に着いていた。そして中に入るも何も起こらなかったので2人は警戒を解き奥に進んだ。奥に進むにつれエルナが指を指した。

「あれ・・・・・・なに?」
「ん?あれなんだ?行ってみるか」
「うん」

そして2人はあるものを見つけるとそのまま向かう。2人はそれをグルグルと回りながら見ていた。

「ねぇ、これなに?」
「さぁ俺にもわからん。ただ分かるのは何かをはめ込まなければダメなんだろう」

フェレンが言った通りそれは長方形の縦長の金属箱でフェレンの腰くらい高さはあり上の真ん中には正四角形の窪みがあった。

その窪みを見て2人は正四角形にハマる物を探していたが見つからず八方塞がりだった。がエルナが何かを見つけた。

「フェレンこれ。文字が刻まれてる」
「ん?文字。『知りたければ紋章が必要である。その紋章をはめれば真実にたどり着ける』か。ん?紋章・・・・・・・・・あ!」

窪みの下にそれは書かれておりそれを見たフェレンはここに来てようやく紋章のことを思い出し収納魔法で紋章を取り出した。

その紋章を取り出すとエルナはまじまじと見ていた。珍しいのかはたまた綺麗なのかそれは分からないが見蕩れていたというのは伝わった。

後で見せてやるよ、とエルナの頭にポンッと手を置いてフェレンは紋章を窪みに入れる。カチッと紋章はハマる。

その瞬間・・・。

「ぐっ!あぁぁ!いっ・・・・・・てぇ!?」

フェレンに向かって頭に強烈な痛みが走った。頭を抑え必死に出て行けと訴える。尋常じゃない痛みに何度も何度も頭を打ち付ける。流石のエルナも心配する。

「だ、大丈夫」
「ぁぁぁああああ!?っはぁはぁはぁ!ぐっ!?ああああああああぁぁぁ!?」

心配するエルナの声は耳に届かずフェレンは痛みと戦っていた。強烈な頭痛に限界を感じ気絶しそうになったが何故が次の瞬間痛みは引いた。が、その代わりに意識が脳に届く。

意識が覚醒しフェレンは目を見開く。そこは全てがモノクロに写っていた。

長方形の縦長の建物が無数に建っていた場所。黒い道もまた無数にあり四角い箱が動いており人もまた無数にいた。

フェレンはその黒い道の端っこに立っておりモノクロの光景を見て唖然としており自分の手を無意識に見ていた。

人は全く同じだが訳がわからなかった。一体どういう場所かそもそもここはなんなのか。自問自答を繰り返していた。

研ぎ澄ませれてくその情報に脳が耐えられなくなったのかまた急にやってくる頭痛。さっきのように頭を抑え収まるのずっと待っていた。

「はぁはぁはぁ!痛い痛い!?ぐっ!?」

早く収まれとモノクロの世界なんてどうでもよく頭痛のことで頭がいっぱいだった。が、またスっと頭痛は消え声が頭に響く。

「・・・・・・レン!?・・・フェ・・・・・・フェレン!?」
「はっ!?」
「大丈夫?」

エルナの声を聞き意識が戻る。その時は既に頭の痛みはなく涙目になっていたエルナが目に入る。答えるようにここにいるぞ言うようにフェレンは口にする。

「エ・・・ルナか。ふぅ大丈夫だ。もう痛みはない」
「ほ、ほんと?ほんとに大丈夫?もし何かあったら言ってね」
「わかった約束する。今は・・・ほんとに大丈夫だ」

フェレンはエルナの手を強く握る。またエルナもフェレンの手を強く握り顔を近づける。あと数ミリ顔を動かせばキスできるところで紋章が光始めた。

2人はその変化に顔を離しその紋章に目を向けた。そして光は徐々に収まる。が、それと同時に4つの点の光が紋章から現れその4つの光は空中で止まり変な線が描かれた。

それと同時にその線とは異なる羊の絵が描かれた。その羊の絵から声がこの部屋に響いた。

「あ〜あ〜、声が聞こえるか」
「あ?なんだ」
「急に声が」
「おお!反応してくれたか。ここじゃここ羊じゃよ羊」
「あぁ?」

急におじいさんのような声が聞こえたことにより戸惑いながらも羊の絵に2人は目を向けた。2人が見てくれたことに嬉しかったのかおお!と声を上げた。

「それで羊が俺たちになんのようだ。俺らは早くここを出たいんだが」
「ま、待ってくれ!話を聞いてくれたら力をあげるから」
「・・・・・・。さっさと話せ」

早く地上に出たいと羊に言ったが力をくれるという魅力に少し負けた。悔しい。羊は嬉しそうに自己紹介をする。よっぽど人と話すのが嬉しいのだろう。

「ゔゔん。わしはなここ牡羊座の迷宮のなんだ?あれだ。神様みたいものだ」
「なんだそれ?曖昧だなもっとちゃんと話せ」
「そうだな。簡単に言うとここはわしが用意した試練牡羊座の迷宮。そしてわしは牡羊座の迷宮を作った牡羊座アリエスじゃ」
「へぇー、でそのアリエスは何を話してくれるんだ」

一応人々が崇めた星座だが少し涙目で質問はないのかな?と寂しそうに聞いてきた。だが、フェレンはそれをスルーし話を聞きく。

「まぁ、なんじゃまずは迷宮攻略おめでとう。さて、まず話だがこちらから聞かせてくれ。その紋章どこで見つけた」
「はぁ、この紋章は俺の母さんから受け取ったものだ」
「そうか、受け取ったか。それは安心だ」
「おい、何ひとりで納得してんだよ。さっさと説明しろ」
「ふぅ、年上に対しての態度が酷くない」
「アアァ?」
「わかったわかった。話すよ」

フェレンの威圧で怖くなったアリエスは2人はに話していく。

牡羊座アリエスが言うにはこういう事だ。まず1000年前この世界アスラは1人の創造神によって作られたものである。そして創造神はまず12体の眷属を作った。それが今話している星座、12星座というもの。

その12星座の下に作られたのが神、その下に今地上に住んでいるフェレンたち人間や亜人、動物を作り平和に暮らせていた。だが、必ずしもその平和が続くとは限らず不満を積もらせた1部の神や人間は反乱を起こした。

それにより新たな種族として魔族、魔神そして人々の思いによって生み出された存在妖精や精霊が生まれた。そしてまた12星座も変化が起こる。世界の反乱に生じた感情そんな世界に悩まされた12星座達の負の感情により新たな星座、13番目の星座へびつかい座が誕生した。

そのへびつかい座は負の感情だけで出来ており破壊と殺戮を楽しむ邪神となり得た。流石の12星座も危惧していた。このままでは世界が滅ぶのでは無いかと反乱で多くの命が失われどん底に落ちていた人類だが12星座が神や人類を励ましたことにより力を合わせ邪神を倒す算段を探した。

だが、倒す算段が見つからず12星座達は13番目の星座を封印しようと決意する。邪神と人類の戦い、戦争と言うべきか。その戦争によりまた多くの命を失ってしまった。その結果13番目の星座の力が圧倒的に勝っており封印することが出来ずに12星座は力を半分失ってしまった。

そして最終的に彼らはやつを封印出来ないと判断し各地に散らばり試練を作った。今フェレンが持っている紋章をある国に残して。その試練を突破し力を譲ることでその邪神を封印否倒してしてくれることを。

ハッハッハと愉快に笑いながら話したアリエス。ちなみにその紋章は創造神のトレードマークだそうだ。そんなことはどうでも良かったのでアリエスに力が欲しいよう頼む。

「はぁ、話は終わりなんだろ。なら力をくれ。」
「いいよ。あ、そちらのお嬢さんも。そしてわしが君に譲る力はこれだ」

すると急に小さな風が2人を包む。その風は暖かく優しいものだった。すぐにその風は収まりアリエスを見る。

「その力は魔力を体力に変換するスキルと木属性の効果を5倍に引き上げるスキルじゃ」
「それは凄いな」
「どうだい。満足してくれたかい」
「あぁ、かなりいいものだ」
「あぁ、言い忘れたがその紋章にはな名前があるんじゃよ。確か名前はトュルーだったな。その紋章にわしの星座の印を刻んだからな。大事にしてくれよ」
「わかった」

フェレンとエルナに新たな力を得て嬉しそうに顔を見合わせていた。これでまた一段と強くなったことを感じたのか。そしてアリエスは最後にこんな言葉を残した。

「いつか我らの過ちを正してくれることを祈っているよ」

その最後の言葉を残したあとアリエスは光の粒に変え上にスゥと消えていった。その姿を見終わりフェレンは紋章を取りエルナに向き直った。

「やっと終わった。さて、帰るか」
「うん、新しい力も手に入れて迷宮さまさま」
「ま、確かに。オマケに傷も癒してくれて力もくれたアリエスに一応感謝しないとな。それにしても出口どこ?」
「ん、ん。なんか奥に薄く青く光ってる」
「ほんとだ」

袖を引っ張り奥に何かを見つけたエルナ。フェレンはエルナの顔を見るなり手を繋いでその青く光ってる場所に向かった。

エルナは咄嗟のことで驚きながらも手を繋いでくれたことに嬉しく思い目を細める。なんやかんやで青く光ってる場所を見るなりフェレンは理解する。

「これあれか、転移陣か。アリエスはお優しい事だな」
「うん、優しいおじいちゃん」
「さて、とこれから俺たちの方針は帰ってから決める。マジックドールの件もあの依頼に関しても」
「うん」

覚悟を決める目。やはりこう見ているとフェレンは感じる強い女の子なんだなと。そんな風に思いながらフェレンはエルナを真っ直ぐ見る。

目を逸らさず見られていることに気づくエルナは顔を赤らめながらもフェレンを見ていた。

「なぁ、エルナありがとな。あの時大好きと言ってくれておかげで俺はエルナを信用出来る」
「え?・・・・・・それって」

フェレンの発した言葉にエルナは期待する。

「まぁ、そのなんだ。エルナが俺のことが好きって言うんだったら全部を俺に預けてくれ。俺も・・・エ・・・エルナに全部預けるから」
「!?うん!うん!」

嬉しさのあまり泣いているエルナに優しく抱き寄せるフェレン。そのまま身に任せて2人はキスをするのだった。

数秒したキスでエルナは嬉しく微笑み逆にフェレンは少し見蕩れていた。そんな姿を見たエルナはイタズラをするような顔でフェレンを見て一言呟いた。

「今のフェレン可愛い」
「あ、いやまぁ。いいや取り敢えず帰ろう」
「うん」

2人は青い光の円に乗る。その瞬間2人は青い光に飲み込まれた。
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