第18話   呼び出し

文字数 4,698文字

朝フェレンは目を覚ますと隣の人物に目がいった。その人物は裸でありフェレンは昨日の夜の出来事を思い出す。あ~そういえば昨日の夜やられたなぁ、とそんな事を思い出しながら体を起こしその人物の体を揺らした。

「おーい、起きろ。エルナ。明日は忙しいから色々準備しなきゃいけないから」
「ん~。だ~め、まだもうちょっと」
「えぇい!諦めて起きろ!」

エルナは起きようとせずベットに潜る。だがそれに苛立ったフェレンは掛け布団を上げエルナを強制的に目を覚まさせる。太陽の光が眩しくて目を守るがそれも通じずフェレンに起こされる。

仕方ないと諦めエルナは体を起こしてフェレンに挨拶をする。

「フェレンおはよう」
「おはよエルナ。さて、早く着替えてまずはこれからの目的を考えるか」
「うん」

いい返事を返し2人は早速せっせと服を着替える。よいしょよいしょと服を羽織るエルナはなんとも愛おしい。そんな姿に見蕩れながらフェレン達は朝食を食べに行った。

数分後、朝食を食べ終えた2人は早速部屋の中で今後の方針を決めていくのだった。当然疑問が色々出てくるのでフェレンはそれも対処していく。

「さて、取り敢えず俺達の最終目標は世界を変えることだが前にも話した通り仮面のクソ野郎を倒さなきゃそれは始まらないんだ。だから取り敢えず、仮面のクソ野郎を倒すことに今は集中したいんだが何か意見はあるか」
「ううん、取り敢えずそれでいいと思う。それで次の町は王都なの?」
「あぁ、まぁ元々あの手紙がなくても行くつもりだったんだがあの女のせいで面倒事が増えそうだ」

そんな愚痴を言いつつフェレンは2本の剣を収納魔法から取り出した。出した2本を見ながらエルナは首を傾げる。まだ分からないのか説明を求めている。そしてフェレンが取り出したのは折れた紅黒牙と禍々しい妖刀だった。

「あぁ、実はな俺武器を新しく作ってもらおうと思ってるんだ。この紅黒牙はもう折れたしこの妖刀もなんかしっくりこないんだ。だから1から作ってもらおうと思って」

するとフェレンはまた収納魔法からひとつの素材を取り出した。その素材は角で薄く7色に光っている。だがエルナはこれを見てもわからなかった。そんなエルナに丁寧に説明する。

「これはな伝説の魔獣でなんか角が素材として取れたんだよ。だから俺はこの角で武器を作ってもらおうと思っている。それとお前のマジックドールも」
「あ」

マジックドールの話を持ち込んだ途端エルナの顔は少し泣きそうな顔になっておりそれを見たフェレンはエルナに抱きつき話を聞かせる。

「あのなエルナこのマジックドールは別にお前のせいじゃないんだこれは俺の・・・」
「ううん、フェレンのせいじゃない。これは私の実力不足この子達を操れないんじゃ全然だめ。これからは自分だけで魔法を扱えるようにしたい。でないと強くなれない」

そんなしっかりとした言葉にフェレンは呆気を取られるがエルナの言葉を受け入れてしっかりとその考えを尊重した。そしてエルナはマジックドールを全部出して自分で傷んだ所を縫い始めた。

フェレンは素材と武器を仕舞ってエルナに一言出かけると告げた。エルナはいってらっしゃいと笑顔で見送ってくれた。そしてフェレンは必要な物を買い揃えていく。

まずフェレンは回復薬やテント、寝袋を買ったり、欲しい情報を買っていた。

それから翌日

帰還する日になり2人は持ち物や色々確認していた。武器やら服何から何まで。

今からフェレン達の武器を少し教えよう。

今フェレンの武器、紅黒牙は折れてしまったので新しく作るまでに代用で禍々しい妖刀が今の相棒である。
フェレンは昨日少し森の中で試し斬りをしていた。

そして何回か斬っているうちにフェレンはこの妖刀を熟知していった。まずこの妖刀は斬った傷口に痺れと呪いの状態を付与する効果がある。

そしてこの妖刀軽く振るだけで大木を簡単に切れる。元々切れ味が良くその切れ味はかの勇者の聖剣を超えているそうな。そんな妖刀と化け物みたいなフェレンが扱えば一体のどれほどの被害が出るだろう。

さらにフェレンは今まで茶色いボロいフード付きのコートを着ていたがエルナに私が新しいコートを作ってあげるということで急ピッチで仕上げてフード付きの白いコートをくれた。

この白いコートには何もなくエルナの贈り物だった。なのでこれを大事にしようと思い想現力を使ってスキル付与を想像した。これによってフェレンの白いコートはスキルはリフレクター・修繕・回復の3つになった。

まずリフレクターだが相手に攻撃されそうになったり危険な時に発動させるもので白いコートに魔力を通すことで自由自在に大きさや角度繊細に操れるようになった。

そして修繕だがこれは言葉通りで傷ついたところは勝手に直してくれる優れものである。回復も同様で装着者が傷つけば勝手に治してくれるものである。

次にエルナだがマジックドールを修復しフェレンが少し改良したものになっており名前を改名するならマジックドール・改。

このマジックドールには新たに武装と服を強化した。武装は杖で変わらないが背中には丸い縦と短剣を装備させており服にはスキルを付与し白いコートと同じである。

今のフェレン達には回復手段はあまりないので回復や修繕というスキルはとても重宝される。

「さて、準備はオッケーか?」
「問題ない。いつでもばっちこい」
「そうか、じゃあ馬車の方に行くか」

そう言ってフェレン達は宿を出ていって馬車の東に行くのだった。数十分後目的地に必要な1台の馬車が見えた。

馬車にを運転する人にフェレンはキャスパーの手紙を渡した。それを読んだ運転手は任せな!と快く引き受けてくれた。早速出発するとのことでフェレン達は後ろの荷台に乗って馬車はそのまま走り始めた。

ガタガタと揺れる中馬車はゆっくりと走る。エルナはマジックドールで遊んでおりフェレンは外の景色を見ていた。草原地帯を越え森に入る辺りから馬車の運転手にフェレンは面白い話がないかと質問する。

「なぁ、なんか面白い情報とかないか?なんでもいいんだ」
「そうだね、1週間前からかななんか王都アルナギで勇者召喚を成功させたとかなんとかおかげで今の王都は大盛り上がりさ。魔王を早く倒して欲しいね。」
「アルナギで勇者召喚か。はぁ~それは頼もしいね。何やってんだかあの女は・・・・・・」
「ん?なんか言ったかい?」
「いいや大丈夫だ。おかげで考える時間が出来たからな」
「そうかい、それは良かったな」

運転手との会話は終わりフェレンは少し考えに没頭する。そんなフェレンを見てかエルナはマジックドールの操作をやめてフェレンの肩に寄り添った。肩に違和感を持ったフェレンは考えるのやめて肩に寄り添ってくれてるエルナに少し微笑んだ。

エルナは気持ち良さそうに肩に寄り添っているのでフェレンはエルナの頭を優しく撫でた。撫でてくれたことに嬉しかったのか目を瞑った。

フェレンも疲れたのか欠伸をし目を擦った。そんなフェレンの珍しい姿を見たエルナは微笑んでフェレンはエルナの膝に頭を置いた。急なことに驚いたがエルナは嬉しそうに受け入れフェレンはそのまま寝ようとした。

その瞬間・・・・・・。

バキバキッ!ドゴッ!ギュォオオオオオ!!

!?


そんな異音と共に響いた雄叫びにフェレン達は驚き荷台から顔を出した。それと同時に運転手は震えるような声でフェレンに逃げ出す相談をする。

「お、お客さん!?済まないが遠回りしていくよ!」

1度止まる馬車。方向転換しようと動かすが奥から大きな角と異常に発達した足と腕を持っている熊みたいな魔獣が姿を表した。

「ヒィ!?あ、あれはこの森の主デビルベアー!や、やべぇ!?早く逃げなきゃ!お客さんしっかり捕まっていて。ってお客さん!?」

逃げるように言う運転手だがフェレンは馬車から降りた。それにびっくりする運転手だがフェレンは落ち着かせる。妖刀を取り出しデビルベアーに向き直る。だが、運転手にとっては命知らずと言っていいほどでありフェレンを必死に止める。

「お、お客さん!俺はあんた達に怪我をしてほしくねぇんだよ!頼むよ亡くなって欲しくないんだよ。今からでも逃げよう。まだ間に合うから!な!」
「待ってろ。今終わらせるから」
「え?お、おい!?」

そう言ってフェレンの説得に失敗し運転手は半ば諦めていた。もう終わりだどうしよう、と頭を抱えブツブツと言っている。

そんなことは無視してフェレンはデビルベアーに一言聞こえるように大きな声で挑発する。

「かかってこいよ!くま野郎相手をしてやるよ!」
「グルルルルル!グゥゴォオオオオオオオ!」

挑発に乗せられた哀れなデビルベアーはそのまま怒りに任せてフェレンに向かって疾走し始めた。フェレンは不敵な笑みを作り向かっていく。

デビルベアーは衝突する時フェレンを爪で引っ掛けようとするもフェレンはそれをヒョイっとステップで横に避け妖刀を抜いてその邪魔な腕を斬った。

フェレンはつまんなそうに目を細める。相手の動きが遅く時間が止まっているようにも見えた。逆に言うとフェレンはそれほど化け物みたいな力を得ているということになる。

斬られた腕の痛みに悲鳴を上げそれでもなおフェレンに向かってくる。

「ゴォオオオオオオオオオオオオ!」

大きく咆哮を上げフェレンを威嚇し噛みちぎろうと、もう片方の腕でフェレンを掴もうとする。フェレンは掴もうする腕を避けもういいや、と一言呟いてからデビルベアーの首を斬り下ろした。

ズルッと首は下に落ちフェレンは妖刀を納め仕舞った。そして運転手はというと何も言葉を発さず、ずっとフェレンの戦いを見ていた。落ちた首を見たあとハッ、と現実に戻り信じられないとフェレンを賞賛した。

「お、お客さん!あんた凄いなぁ!まさかこの森の主デビルベアーを倒すなんて!ひょっとしてかなりの実力者か?」
「あ、まぁそれより早く出してくれまだかかるんだろ」
「そ、そうだったね。ささ乗ってくれ」

フェレンは話を逸らし荷台に乗った。運転手は馬車を走らせフェレンは荷台に座り横になった。その時エルナは自分でフェレンの頭を膝に置いた。小さく一言お疲れ様、とだけ言って頭を優しく撫でた。

数時間後

馬車は止まる。その変化に気づきフェレンは目を開けた。目を開けた先にはエルナの顔があり起きたことに気づいたエルナはフェレンにおはようといいフェレンは体を起こす。

「んぁあああああぁぁぁ、おはようエルナ。王都に着いたのか」
「着いた。フェレンしっかり寝てて寝顔が可愛かった」
「・・・ゔゔん、いやまぁ何取り敢えず止まるまで待つか」

馬車は王都の門に着くと衛兵が簡単な検査を行った。
その検査はすぐに終わり馬車は馬車は門をくぐり少し開けた道で下ろした。

「じゃあな、あんたは強いんだ。ちゃんとその子を守れよ」
「あぁ、こっちも助かった。もし縁があればまた頼む」

そう言って馬車はこの場を去った。フェレンは馬車を1度見たあとエルナに言った。

「じゃ行くか。城に」
「うん、少し楽しみ」

フェレンはフードを被り2人は街を歩き出す。街は賑やかで活気があった。そんな中エルナはある4人組を見つける。その4人組は他の人達より一際目立っていた。キラキラした鎧を着ていたためか。その4人組とエルナ達2人はすれ違う。

エルナはすぐその4人組に興味をなくしフェレンにくっついた。そんな中ある4人組の1人の少女がフェレン達2人を見ており、そして一言呟いた。

「あの人・・・・・・どっかで?」
「おーい、何しているんだ置いてくぞ!」
「あ、うん」

立ち止まっていた事に気づいたのかその少女は3人に置いていかれないよう早歩きで行くのだった。
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