第5話   西と東の端

文字数 4,560文字

飲食店にてフェレンは夕飯を食べながら今日のキャスパーとの話を振り返っていた。
大好きなハンバーグをモグモグ食べている。
もちろんちゃんとフードは取っている。
だが、それによりいつもフェレンを見ている女性、チラチラと様子を伺っていた。

他の女性定員からも行きなよ!と応援されているが大体その前にフェレンが食べ終わり帰っていく。
あぁ、と残念がるも毎日来てくれるので!と気持ちを強く持つ女性定員。

ちなみにフェレンはモテているということは気づいている。気づいてはいるがその熱っぽい視線が嫌いなのでいつも苛立っている。
夕飯を食べた後フェレンはまたいつものように居酒屋に行く。

魔獣の討伐を報告しておこうと思ったからだ。
当然フェレンが来ると急に静かになる。
そこもやはり変わらずフェレンを怒らすと自分たちが死ぬことを知っているからだ。
だが、そこに関してはフェレンも満足しており騒がしい所よりかは静かにできるところの方が気が楽でいいのである。

早速席に着きマスターと話す。
マスターはいらっしゃいと歓迎して質のいい酒を出してくれた。
グラスと取り酒を注ぐ。
そのグラスをフェレンは勢いよく飲む。

「いい報告がある」
「ほほう、それはさぞかしいいものですな」
「あぁ、今日スターボーンホースを討伐できた」
「それは本当ですか?」

マスターや耳を立てて聞いていた人達も驚いた。

「本当だ。嘘もついていない。証拠もある」

そう言ってフェレンはカードを出しマスターに見せた。
なるほど、頷きながら少し微笑みながらグラスを出しボトルに酒を注いだ。

「なら、乾杯といこうじゃないか。君の勝利に祝って乾杯」

カランとグラスの音を立てまた飲んだ。
フェレンはカードをしまった。
周りは本当にやったのか疑問を抱いていたらしいがマスターの行動に自然と納得した。
それによりフェレンの恐ろしさがこれ以上に伝わった。

「それで、マスターまた新しい依頼を頼まれたんだ。それについての情報が欲しい」
「その依頼は?」
「ある宗教を壊滅させて欲しいと言われていて・・・。今からその宗教の名前を言う。仮面教」
「仮面教・・・・・・」

その言葉にマスターは少し首を捻り考えた。
記憶を遡りフェレンに情報を教える。

「そういえば、半年前にその仮面教っていうのが私を勧誘しに来たね」
「なに!?」
「だが、私は断った。この店を経営して行かなきゃ行けないからね。で、君が聞きたいのはなんだい?」
「俺が聞きたいのはその宗教が拠点にしている場所」
「場所か・・・・・・確か西と東両方の端、スラムに構えていると聞いたことがある。だが、それも半年前、今もそれがあるかどうか分からない」
「いや、ありがとう。それだけで十分だ」

そうお礼を言うとフェレンは最後まで酒を飲み干し代金を払ってこの場を去っていった。
西と東の両方か、そう呟きながらフェレンの心が少し踊りこれで情報が増えるかもしれないと希望を抱いきながら宿屋に戻るのだった。

翌日

いつものように宿で朝食を食べながらフェレンは今日の予定を考えていた。
スープをずぞぞっと飲みながら。
今日には取り敢えず仮面教に情報を教えてもらいそのまま壊滅させることを目的としているが、そのためにはまず地形の把握が必要である。
しかも戦力が分からないままでは命を落とす可能性も出てくる。

フェレンはできる限り対策を練ってから今回の依頼に踏もうと思っていた。
早速方針を決めると朝食をペロリと平らげ宿屋を出ていった。

フェレンは早速西の端の様子を見に行き始めた。
朝は西、昼は東、夜は両方。
そんな感じに進める。
西の端までは結構距離があり進むには1時間はかかる。
1時間かけて目的地の一つに着いた。

そこは何も書かれておらずむしろだがむしろそれが不気味に思えさせ近づけなかったではないだろうか?
そんな風に考えながらもフェレンは奥に入っていった。

異様な雰囲気の中フェレンは気にせず奥に進み仮面教に関するものを片っ端から探す。
だが、ある違和感に思い当たる。
ここは確かにスラムではあるが人が少ないというより全然いない。

もしかしたら、既に仮面の奴らにやられたのか、または贄にされたのかわからないがとにかく注意した方がいいなとフェレンはフードを深く被る。
それに仮面のような奴らも見えず何も分からない。
まるで、フェレンが来るのをわかっていたような。
そんな感覚になるが頭の隅に入れつつ散策する。

ん?と、ある物を見つける。
マンホールの上にノートが置いてあった。
中をペラペラと適当に見ると仮面の文字が入っていた。
ある人の日記のようだ。
意外な収穫、そう思いながら他の所を見る。
そこからは探しても何もなかった。
だが、異様にマンホールが見えた。
そこに疑問を持ったが東に行けば分かるだろうと思いフェレンはお腹が減ったためいつもの店に行くのだった。

大好物なハンバーグをモグモグ食べながらさっき拾ってきた日記を開き見るのだった。
日記の中を少し覗こう。

『〇〇月/〇〇日
今日は不思議な日だった。
いつものように薪を切っているとある仮面の男が現れた。そいつは不気味なオーラを纏っている感じだった。少し怖く感じたがその仮面は普通話しかけてきた。『ちょっといいかな?君はこの紋章を見たことあるかな?』と。見せてきたメモに紋章が描かれていた。だが、俺はそんなものは知らなて、見た事ないと伝えた。そうすると普通に納得した後仮面は俺にこう言ってきた。
『君、私が作った教会に入らないかい?』
『え?』
急にそんなことを言ってきた仮面。
最初は訳が分からなかったが次第に納得していきその教会に惹かれ、仮面教に入った。』

『〇〇月/〇〇日
今日はちょっと私たちの導きでもある我等の神が教えてくれた。
《滅ぼすもの危険であり、すぐさま葬りさり我を安心させよ》
神からお次いでくれたお言葉だ。
我等を導いてくれる者必ずや成功させよう!』

『〇〇月/〇〇日
我等の中で神に近い仮面卿。
遂に教祖様が復活する日が近いと申していた。
その言葉に私も感服しながらも仮面卿の話を聞いた。
復活する日は近いと言ってくれた。
だが、それは完全ではないらしい。
そのため我らは神を復活させる為、贄になるものを探す旅に出た。』

『〇〇月/〇〇日
この街に潜伏し贄を与え続けて半年。
まだ、復活しないのか?
あれだけ贄を捧げているのに。
いや、逆にそれほどの贄を与えることで力を蓄えているのではないだろうか?
そう考えれば自然とやる気が出てくる。』

『〇〇月/〇〇日
最近、仮面卿が忙しいと聞く。
なんでもトラブルにあったのだとか。
我等は無事をお祈りしておきます。
我等の神の加護があらんことを。
余談ですが、最近何やら不届き者が来るとの噂が・・・。
どうせ、我等より弱い。
夜が来るまで精々震えているがいい。
捕まえたあとは贄にして神復活の為に役立ててやるとしよう』

ニヤリとフェレンは笑った。
まさかここで仮面の男が出てきたとは。
奴は生きてる、そんな嬉しい感覚を久々に感じるフェレン。
ハンバーグを食べ終え次に東の端に向かった。

東の端も西と同じで時間が結構かかった。
東の端も西と同じほとんど人は西と違う所といえば少し異臭がする。
奥に進めば進むほど臭いは酷くなる。
だが、一向に死体も見つからず疑問に思っていた。
そういえば、日記の所にマンホールがあったな。
と思い出したようにマンホールを見つけ開ける。

そこからの異臭も酷く吐きそうになるが我慢する。
マンホールの入口からか、声が響いて聞こえくる。
本当は夜に行動しようとしたが場所である。
ここはスラムで人は全然いない。
入っても問題ないが視察の為だ、と言い聞かせフェレンはマンホールの中に入った。

中は暗く地下水路には汚水が溜まっている。
あまり臭いを嗅がないよう注意しながら散策する。
角に注意しながら地形のを把握する。
構造は単純だがだだっ広いので迷う可能性も出てくる。
迷わないよう、しっかりとマーキング(剣で壁に傷をつける)をつける。

たまに叫び声が聞こえてくる。
フェレンはその声を頼りにしながらゆっくりと音を立てずに進んでいく。
進んでいる途中、仮面を被った人を見つける。
あの時の仮面とはデザインが違っておりマントも羽織っていない。
あの時仮面ではないようだ。


一瞬、剣を抜いて殺そうとするが騒ぎをまだ起こしたくないためそのまま息を潜めた。
仮面の男はそのままフェレンに気づかず通り過ぎて行った。
特に問題なく回避出来たフェレン。
今度は魔法で自分たちが自身を隠蔽し身を隠した。
今度は仮面がにバレことなく進むことが出来た。
進むでいると途中、扉を見つけた。

鉄の扉だ。
開けようとするが中から鍵がかかっており開けることが出来ない。
仮に扉を壊して開けることはできるがそこでバレるのは本末転倒。
夜に行動することが目的である為今騒ぎを起こすと大変なことになる。

1度ここを離れて戻ろうとするが扉の奥から話声が聞こえてきた。
情報を掴むチャンスだろうと思い聞き耳を立てる。
そこから若い男性と老いた男性の声が聞こえた。

「あの、本当にここに不届き者が来ると思いますか?
私にはとてもそんな風には思えず・・・・・・」
「アホか、来るに決まっている。あの人が教えてくれたんだぞ。間違いない」
「そう、ですよね。」
「なんだ歯切れが悪いな。どうした?」
「いえ、少し胸騒ぎがして、もしかしたら既に潜入しているかもとか」
「ハッハッハ、そんな訳なかろう。もしきたら我等だけでいける」
「だと、いいのですが」

扉の奥の会話はこれで終わった。
あまり情報が手に入らなかったなと思いながらフェレンは1度来た道を引き返すのだった。
早めに夕飯を取り宿に戻って今一度今回やることを確認する。

今回やることはこの街の仮面教の壊滅及び行方不明の捜索である。
拠点は西と東の端に建てておりその地下に潜伏している。
スラムには全く人はおらず子供もいない。
人間がいない世界だと思い込むほどに。

だが、そこの東のスラムは異臭が酷く吐きそうになるくらいの異臭がスラム一帯を包んでいる。
そしてマンホールも多くあることから、もしかしたら地下水路に潜伏しているのではないか。
そんな可能性を考えながら地下水路に入った。

予感は当たっており仮面を被った男が目の前を通った。
幸いバレずに済んだが、まだ行方不明の散策には時間がかかるもよう。
取り敢えずは壊滅と行方不明の捜索に今夜は力を入れる。

既に外は夜になっていた。
フェレンは不要な物は机に置いて回復薬や予備の武器はバックに入れ収納魔法で身を軽くする。
宿を出て早速東の端に向かう。
ギルドのような中心は賑やかになっているが今フェレンが向かっているのはスラムだ。

比べるまでもなく雲泥の差である。
早く終わらせようと少し急ぐ。
東の端に着く頃東から吹く風に異臭も一緒に流れる。
嫌だなぁ、と思いながらスラムに入る。

夜のスラムは少し違った。
仮面の集団が3人組で巡回している。
今回潜入するフェレンの邪魔をする奴だろう。
ここで暴れるのもありと考えたが地下に行って暴れた方が倒しやすいと思ったからだ。

3人組にバレないように上手く回避しつつマンホールを目指した。
フェレンが初めて入ったところだ。
マンホールの中に意外と簡単に入ることができた。
そして入るや否やすぐに見つかった。
だが、フェレンは不敵に笑いこう一言呟いた。

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