第8話   エルナのために

文字数 4,676文字

「さて、準備はいいか?」
「うん、行ける」
「じゃあ、やるか」


ギルドの最上階

「取り敢えず、私から言えることはよくやってくれたということだ」
「あぁ、まぁこれくらいは別に問題ない」

エルナを解放した次の日

フェレンとエルナは朝早くにギルドを訪ねキャスパーと話していた。仮面教のこと、実験やその他諸々知っている限りの情報を与えた。そして今フェレンはキャスパーの友人について語りだした。

「済まない、あんたが探していた友人は結局見つからなかった」
「いや、大丈夫。見つかったよ」
「なに?」

唐突なカミングアウトにより一時的にフェレンの体は固まった。キャスパーは少し笑顔になりながら昨日のとを語った。

「実は昨日の深夜。私の友人が大怪我を負いながらギルドまで来てね。びっくりした。だが何より生きていたことに喜んだ」
「へぇ、でその後は」
「あぁ、どうやってここまで来たのか。説明してもらったよ。実はね君が騒動を起こしたと同時に彼は見つからないように隠れながら道を歩いていたそうだ」
「なるほどね」
「元々ここに来た時には既に息が上がっていて泣いていたよ。生きたよ!と、それに君にお礼がしたいとも言っていたな」

そこで話を区切ると1度キャスパーは下を向き目を抑えていた。きっと、話しているうちに何かを思い出したのだろう。涙を浮かべていた。

そんな様子に少しフェレンは息をつきエルナを見た。ここまで喋っていなかったがフェレンが自分を見ていると気づいた時には微笑み体を傾けフェレンに預けていた。

涙を拭きキャスパーは顔を上げる。そこで思い出したようにフェレンに尋ねた。

「今更な気もするが君の隣にいる人は誰だい?前来た時にはいなかったが?」
「あぁ、こいつはエルナっていう。殲滅している時に見つけた奴だ。あとは色々なことがあって成り行きで一緒に行動することになった。」
「なるほど、ところで報酬だったな、君が前討伐した魔獣のも付けなければな」

少し楽しそうに話すキャスパーだがフェレンは少し待ったと言い出した。

「済まないが、金は別に良いんだ。今そんな金に困っていないしただエルナにカード作って欲しい」

少しだけ遠慮ガチに言ったがそれを聞いたキャスパーは笑ってから笑顔になった。

「ハッハッ、なんだそんな事か。別に全然いいよランクも★5にしよう」
「助かる。さて、これで依頼は達成された。早速エルナのカードを発行しに行くか」
「うん」

そう言ってフェレンとエルナは立ち上がる。それを見たキャスパーも立ち上がり頭を下げた。

「私の友人、そして依頼を受けてくれてありがとう」

その言葉を背に受けフェレン達は扉を開け出ていった。そのまま階段を降りて受付の人にカードを発行して欲しいと頼んだ。

「カードの発行ですか?少々お待ちください」

そう言って受付の人は奥の方へ消えていった。数分後、受付の人は戻ってきた。手にはカードを持っておりエルナに渡し説明を始めた。

「えー、まずカードの発行は無料ですので支払いはいりません。カードが紛失、無くした場合は受付の人に言えば直ぐに貰えます。それと登録についてですが針を渡すので自分の指を少し切って血をカードにつけてください。そうすれば自分のステータスをいつでも見られます。」

わかりやすい説明のおかげでエルナは簡単に出来た。針を指に刺してプクッと出てきた血をカードに擦る。すると、カードは銀色に輝き包まれ一瞬爆ぜるように光った。やがて光は収まりカードにステータスが記載されていた。エルナはそのカードをまじまじと見ていた。


────────────────────────
エルナ 女 15歳 LV1 ランク★5
種族 人族
職業 冒険者
体力・12
筋力・14
魔力・50
俊敏・10
知力・15
耐性・13

スキル
『魔力向上』『詠唱略 少』
────────────────────────

ステータスを見ていたエルナは1度受付の人に見てもらった。すると、受付の人はエルナを1度見た後フェレンに言った。

「この人の魔力は異常ですよ。普通でも10が当たり前なのに!この人は50凄いですね!しかも、こんなに可愛いなんて」

目力が強く顔を引き攣ってしまったフェレン。エルナも少し下がりカードを受け取ってから2人は逃げるようにギルドを出ていった。

しばらく街を歩きながらフェレンはこの後どうしようかと悩んでいた。すると、エルナがこんなことを提案する。

「私、新しい服が欲しい」
「ん?服。・・・・・・あぁ、そうだな。」

フェレンは1度エルナを見る。エルナの着ている服はボロボロ。布を縫ってただ繋げたそんな感じだった。だが今のフェレンは依頼を達成しお金もそこそこある。なら、こんな服を着なくても良いのではないか?そんなことを思った為か自然と言葉が出てきた。

「じゃあ、服を買いに行くか」
「うん!」

フェレンがそう言うとエルナは返事を返した。今までこういったことをした事がなかったのか、エルナは凄く嬉しそうにしていた。そうして2人は服屋を目指した。

服屋に着くと早速中に入る。中に入るや否や女性店員に声をかけられた。しかも、目が輝いていた。

「いらっしゃいませー。ッ!?な、なんですか!?この子!か、可愛い!て、天使ですか!?天使ですか!?」
「いや、違うが・・・・・・取り敢えずこいつに似合う服が欲しい」

あまりの言葉に驚き黙りそうになった。怖い。エルナも少しプルプル震えている。きっと初めてなのだろう。女性店員はわかりまっした!と言い奥の方に消えていった。しばらくして姿を現した。服を2着程抱えながら。店員は机にドンッと服を置き1着をエルナに渡した。

「これに着替えてください。試着室はそこにあるので大丈夫ですよ。」

そう言うとエルナは何も言わずに試着室に入ってカーテンを閉めた。しばらくするとカーテンは開き姿を現した。そこには白を基調にした銀色の模様のフリルを着ていた。袖口もパーソナルカラーの感じに銀色だった。エルナは少しもじもじしながらフェレンに近づいた。

何も喋らずずっと見ていた。きっと感想を待っているのだろう。だが、フェレンはそれに気づかずずっとエルナに見蕩れていた。返してくれるのを待っていたがエルナは我慢出来なくなりやがて喋った。

「ねぇ、感想は?言ってくれないの?」
「・・・・・・あぁ、ごめん。少し見蕩れてた。えっと、まぁなんだいいと思うぞ」

淡々と告げるフェレン。それを聞いたエルナは頬を赤く染めフェレンの腕にしがみついた。それを見た店員はというと・・・。

「・・・・・・・・・・・・」

気絶していた。

なんとも哀れだろう。きっと、エルナを見て萌え死にでもしたのだろう。ご愁傷様・・・。そんなことを思いながらもフェレンは金貨2枚を机に置いてもうひとつ置いてあった服も一緒に持って2人は店を出ていった。

嬉しそうに歩いているエルナにフェレンはある提案をした。

「なぁエルナ。今からお前の武器を買おうと思うんだが何が欲しい?」
「え?私に武器?」
「あぁ、だってお前は俺と同じで冒険者になったわけだし色々何をやりたいとか決めなきゃならないからな。取り敢えず今から武器や防具が売っている店に行こうと思うがいいか?」
「いいよ。フェレンがいいって言うならどこでもついて行く」

フェレンは最後に聞いた言葉に少し照れながら店に急いで行くのだった。その店に着くと早速中に入っていった。

カランッカランッ

鈴の音を鳴らしながら入っていく。フェレンはそのままカウンターへ行きエルナは周りを見ていた。鈴の音に気がついたのか奥から1人の大柄な男が出てきた。

「お!フードのあんちゃん!今日はどうした?」
「あぁ、今日はちょっと武器を買いに来てな。こいつでも扱える武器とかはないか?」
「ん、こいつ?誰か連れてきたのか?」

すると、フェレンの後ろからちょこっと顔を覗き見たエルナが出てきた。流石に男も想像していなかったのかビックリしていた。こ、こんな子がうちの店に来るなんて!?と。フェレンは1度咳払いをして男を現実に戻した。

「なるほどね。で、嬢ちゃんは何が欲しいんだ?」
「分からない?」
「そうか、ならスマンがちょっとカードを見せてくれ」

どんな武器が欲しいのか分からない。だからまず男はステータスを見て何をやりたいのか決めていこうと話していた。男はステータスを見た後カードをエルナに返して少し考えるのだった。やがて考えがまとまったのかエルナに話した。

「なるほど、嬢ちゃんは魔力が非常に高いな。これなら魔法使いでいいな。嬢ちゃんはどうしたい?」
「魔法使いで。武器は適当に決めて」
「わかった」

魔法使いということで今度は武器を選ぶ。最初に持ってきたのは小さい杖だった。木の棒を加工して細くしたような感じだ。

「これは初心の心っていう杖だ。名前通り初心者に優しい杖だ。初めての奴でも上手く扱える。ここで1回やってみたらどうだ?」
「うん」

男の提案に従う。初めてなの魔法ということもあり意外と緊張している。それを見てか男は丁寧に教えた。
エルナもそれに従いやり方を覚えていく。

「まずはその杖に魔力を込めるんだ。そうだな、こう自分の中に流れているものを右腕に集中するような感じに」
「・・・・・・」

言われた通り右腕に力を込める。すると右腕に妙な感覚に襲われる。すると杖から赤い炎がボッと出てきた。それを見た男はおお!と言いながら褒めた。

杖から炎がを出したエルナはじっと自分の手を見ていた。初めて使えた魔法に心踊っていた。だが、エルナは眉をひそめながら杖を机に置いた。

「どうした?なんか違かったか?」

その言葉に頷いた。表情を見た男は近くにあった杖や奥にしまってある杖を机に並べた。エルナはそれを手に取って色々試していった。

数十分後

2人は店を出ていた。その中エルナはシュンと落ち込んでいた。

「ごめん。!?」

無意識に謝っていたエルナにフェレンは頭を撫でた。撫でられたことにより嬉しかったのか少し微笑んでいた。

「あのな、別に自分に合う武器なんてそんな簡単に見つかるわけがない。むしろ、新しい武器を作ることだって出来るしな。だからそう残念がるな」
「え?武器を作る?」

フェレンの言った言葉に疑問を持ったのかエルナは不思議に思った。そのままフェレンは返す。

「作れる、言ってなかった。まぁ、それは宿で話すか。取り敢えず、今は武器だ。エルナの要望でやるが何かいい案があればいいんだが」

そう言って武器を作るために色々考えるフェレンだったがエルナは唐突に何かを見ていた。釣られるようにフェレンも見る。エルナが見ていたものは親子だった。

手を繋ぎゆっくりと歩いている。だが、そんなことで目移りする筈がない。だが、エルナはその子供を見ていた。よく見ると、子供が抱えている人形をじっと見ていた。

もしかして、あのぬいぐるみが欲しいのか?そう思いながらエルナに聞いた。

「なぁ、もしかしてあの人形が欲しいのか?」
「え?なんで?」
「ずっと視線を追っていたからな。・・・・・・」

と、そこで1度考えに没頭する。だが、その考えは直ぐに解決する。

「なるほど、人形を武器に使うのもアリか。なぁ、エルナ人形を武器にして戦うっていくのどうだ?」
「うん、フェレンがそれでいいって言うなら私はそれにする。ただ、人形はフェレンが作って」
「え?」

その言葉にフェレンは迷うが自分から言ったので責任を持つしかない。1度エルナの目を見る。フェレンに任せる信じているそんな目をしていた。だから、フェレンはそんなエルナの思いに答えるため人形を作ることを決めた。
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