第10話   救出迷宮

文字数 4,960文字

「は?」
「だからね。ダンジョンに潜って救出して欲しいんだ」

そんなカミングアウトをされフェレンはソファから立ち上がった。

「済まないがそれは無理だ。第1に何で俺がダンジョンに潜って助けなきゃいけないんだ」
「君はあの仮面から私の友人を助けてくれた。だから今回も・・・」

何とかフェレンにはダンジョンに行かせたいらしく説得するものの・・・。

「あの件に関しては仮面の情報を得られるとという可能性もあると考えたからだ。今言ったような人助けはやらん。もし必要なら俺よりもっと強い冒険者を選んでくれ」
「っ・・・・・・・・・」

言葉が出なかった。何とかして彼らを行かせてあげたい。焦り顔は青ざめ考えてる。そんな中一つの案がキャスパーの頭に響いた。

「では、こちらは君の知りたい仮面の情報を教える代わりに行ってあげてくれないか?」

必死の気持ちが伝わったのか1度フェレンはため息をつき仕方なしにといやいや言った。

「・・・・・・んー。はぁ、わかったやるよ。ただし、情報は確実のあるやつだ」
「あ、ありがとう」

ソファから立ち2人に頭を下げた。だが、フェレンはそんなことはいい、と言いキャスパーを座らせ早速依頼の情報を貰った。

「なるほどね、そりゃあ強い冒険者に頼む訳だ」

キャスパーの情報はこんな感じだ。

1つ・冒険者は4人パーティー
2つ・4人の実力は★6で中層を攻略していたらしい
3つ・その中層でトラブルが起こり1人が下の層に落下したらしい
4つ・3人はすぐに助けに行こうとしたが敵が多くダンジョンの入口まで撤退
5つ・3人は街まで戻り急いで冒険者を集めている

ちなみに今集まっている冒険者はおらずさっきたまたまギルドに入るところをキャスパーは見てフェレンに頼んだ。

「それで俺達はいつ行けばいい?」
「今すぐにだそうだ。回復薬はこちらで用意すると」
「そうか、わかった。じゃあ行ってくる」
「ありがとう。よろしく頼むよ。報酬として金貨50枚を君達にやろう。それと仲間の彼らもダンジョンまで連れて行ってやってくれ。あと彼らは南の門の所にいる」

その言葉を聞いたあと2人は立ち上がり扉を開け早速に門の所まで向かうのだった。

「さて、ちゃっちゃと終わらせて早いとこ情報を貰うとするか」
「うん、そしたらこの街を離れて別の町」
「ま、そうだな。それまで頑張るか」
「うん」

色々喋っているうちに門に着いた。3人組ということもあり直ぐに見つかった。3人の方もフェレンを見つけ歩み寄った。3人は顔を青ざめていたがフェレンに話しかける前にエルナを見て顔を赤に染め上げていた。

早く情報が欲しいそんなことばっか考えているフェレンは1度咳払いをし話を進めた。

「取り敢えず回復薬を渡して欲しい」
「あ、あぁ済まない。これが回復薬だ。・・・・・・なぁ嬢ちゃん。もし、この依頼が終わったら一緒に遊ぼう」
「・・・・・・」

フェレンは薬を受け取りエルナはフェレンについて行こうとするが急に変なことを言われたのでフェレンに隠れ黙るのだった。そんな3人の様子を見てフェレンは違和感を持ち疑問を吹っ掛ける。

「お前らは仲間の命より女を優先するだな?」

その言葉を聞いた3人組は直ぐに青ざめた表情に戻し誤解だと言ってすぐに仲間を心配する。その様子にエルナもじっと3人を見ていたが時間の無駄だと判断しフェレンについて行った。

南の門の先にはエルナのマジックドールで特訓した草原がありその500メートルくらい先には迷宮の入口に繋がる森がある。

5人はその森を歩く。日差しが入らない森をフェレンとエルナは先行し手を繋いで歩いておりその後ろからついてくるように3人は歩いている。

その森を少し歩くと石レンガの階段が見えた。コケやツルが多くて目障りだがかき分けながら進む。少し登ると円柱型の迷宮の入口を見つけた。

その入口に入る前フェレンは3人に向きこう言った。

「さて、着いたな。お前らはここで待ってろ」
「いやいや冗談じゃない!仲間が居るんだ俺達が行かなきゃ意味ないだろ」

急にそんなことを言われ頭にきたのかフェレンにキレていた。だが、そんなことも計算されているようにスラスラと答える。

「大丈夫だ、必ず連れて帰る。ただ、俺達が来るまでここにいて欲しいだけだ」

そう説得するように誘導するものの上手くいかず逆に相手に気合いを入れさせてしまった。また言おうとしたが、さっきのようにうるさく言われるのも面倒なので仕方なくフェレンは3人を連れていくことにした。

フェレンはまたある違和感を抱えながらダンジョンの入口に入っていった。

地下迷宮

初心者冒険者や超一流が何度も挑める恐ろしい化け物がいる巣窟。ここに来ては冒険者は腕試しのように潜るものもいれば金品財宝を集める人もいる。

ちなみに迷宮は全部で60階層ほど存在しており過去最高到達点は25階層である。それぞれ3さ20階層ずつに区切られており1層から20層が初心者、21層から40層が中級者、41層から60層が上級者となっているが最高25階層となっている為半分が未開拓地である。

ちなみに10層ごとに番人がおり50層からの先は生きて帰れるかわからないとも言われている。

「んで、お前らの仲間はどこに落ちた」
「あぁ、確か13階だ」
「じゃあ、そこまで案内してくれ」
「わかった」

そう言って今度は3人が先行しフェレン達が後を追うことになった。中はそれほど汚くはなく綺麗になっている。とても魔獣がいるとは思えない程だ。その美しさに見蕩れつつエルナはフェレンについて行く。

数十分歩きながらフェレンはあることを考えていた。それはあの3人のことだ。フェレンは3人を凝視しながらエルナに少し注意を流す。

「エルナ、あの3人に少し注意しろ。なんかあれ企んでるな」
「なんで?」
「あいつらの装備がな。あれは普通に高いんだ。それにランクも以外に高いそんな奴らがヘマなんてするとは思えない」
「わかった、絶対フェレンに離れないようにする」

彼らの装備はあの街で3番目に高い防具並の冒険者では普通は買えない。ありえないと思いながらも警戒しつつ進む。素直にフェレンの忠告を聞いたので安心し人探しに目を向けた。

1層は中々広く迷路のような感じだ。そのため魔獣の強さはそれほど高くないが2層に行くまで30分くらいかかった。2層は少し狭い代わりに魔獣が少し強くなった程度でフェレンとエルナにとってはなんも問題なかった。

一向に面白みがなくただその出来事が起こった所まで進むのに有した時間は約3時間。そしてようやく着いた10層の番人部屋。全く疲れてはいないが精神的に疲れた3人

だが、休憩している暇はないぞ!と言うように2人はスタスタと10層の番人部屋に足を踏み入れる。薄暗く視界が少し悪い。そんな中奥の方で赤紫の魔法陣が広がっていた。

その魔法陣からゆっくりと何かが這い上がってく。出てくる魔獣に警戒しつつフェレンとエルナは準備をする。フェレンは剣を取り出しエルナはマジックドール銀髪ちゃん。ルナと赤髪マーズを収納魔法で取り出した。

ちなみにエルナはマジックドールをいちいち手で持っていくのは面倒とそんなことを言ってきたのでフェレンが直直に収納魔法を教えた。エルナは理解することに特化しており直ぐに収納魔法を覚えた。今では自在にできる。

そしてマジックドールにも少し変化を加えておりマジックドールは武器を所持している。ルナとマーズの剣だ。それぞれの色パーソナルカラーもあり、これはフェレンの特製で1から創ったものである。だが、これはあくまでも飾りのような物に近いが本当は魔法を使い倒していく戦法だ。フェレンが近接、エルナが遠距離となっている。

「出てきた」

フェレンの先にはゴブリンがいる。が王冠を被り大剣を持っている奴と槍を持ち防具を装備しているゴブリンがいた。所謂ゴブリン王と言ったところだろう。

そのゴブリン王達はエルナに狙いを定めた後、瞬殺!と言うように猛突進して来た。明らかに周りが見えておらずバカだなと思いながらフェレンは魔法を使った。

「拘束」

ゴブリン王達の下から魔法陣が出現し思わず立ち止まる。その瞬間、バッと青い鎖が飛び出しゴブリン王達の足を絡めた。そのまま顔から地面にキスをし激痛にもがいていた。

その様子を見ていたエルナは1度フェレンを見た。フェレンはそのまま攻撃せずずっと拘束で相手を縛っていた。その瞬間エルナは理解しルナとマーズに魔力を込める。そうして、エルナは一言呟いた。

「蒼炎天(そうえんてん)」

その魔力はルナとマーズに通され手に赤い魔法陣が現れフン!と言うように勢いよく大きく青い球が2つ射出された。それと同時にフェレンは拘束を解いた。そして2つの球はゴブリン王達の方に飛んでいく。

その青い2つの球はやがてゴブリン王達に当たった。その瞬間炸裂した。その炸裂した炎はまるで業火の如く激しく燃え盛りゴブリン王達を苦しめた。

「「「ギャアアアアアアアァァァァ!?」」」

突然の炸裂に対応できずやられるがままにゴブリン王達は叫び声を上げる。じわりじわりと来るその熱さと熱気にやられ、ついに顔が見えなくなるくらいに黒焦げになった。

やがて、ゴブリン王達を苦しめた魔法蒼炎天は消え残ったのは、ゴブリン王の王冠と手下の金属製防具だけだった。

呆気なく終わった番人との戦い。初めての実践で上手くいったエルナは嬉しそうにフェレンを見た。フェレンはエルナに近づき頭をポンポンと当てた。嬉しそうに見上げるエルナにフェレンは言った。

「お疲れ」
「うん!」
「よく頑張ったな」
「うん!」
「お前の魔法威力はあって凄かったな。次もこの調子で頼む」
「うん!任せて!」

ちなみにエルナのステータスは今のゴブリン王達の戦いで大幅にアップした。

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エルナ 女 15歳 LV25 ランク★5
種族 人族
職業 冒険者 魔術師
体力・56
魔力・94
俊敏・49
知力・51
耐性・48

スキル
『魔力向上』『詠唱略 少』『成長速度倍』
────────────────────────

成長速度がバクである。驚きの成長速度にフェレンもびっくりした。

ちなみにあの3人はと言うと唖然とし開いた口が塞がっていない。本当はゴブリン王を狙っていた3人。だが、三体まとめて動きを封じる魔法を使ったことと無詠唱で発動させたことに驚き動きが止まってしまった。

今度はエルナ、収納魔法でマジックドール、人形を出した事に3人は笑っていたが浮いたことに驚きしかもフェレンと同じように詠唱無しでさせ、ゴブリン王達を苦しめた魔法を人形が放ったことに言葉が出なかった。

そしてフェレンとエルナの行動を見てやっと3人は現実に帰ってきた。3人はフェレン達に近づき凄いなぁと褒め称える。

「あんたら凄いなぁ。魔法を詠唱無しで発動されるとか普通は出来ないのにどうやったんだ?」
「ん?あんたら何してたんだ?」
「いや、俺らも倒そうとしたけど2人の戦闘に驚いてびっくりしたしたんだ」
「そうか、なら問題なにな。早く行くぞ、まだ先は長い」

そう言ってフェレンは先の11階層に進む。エルナはフェレンについて行き3人はその後ろをついて行くのだった。


ギルド支部長室にて

「キャスパー支部長この書類のサインをお願いします」
「うん、やっておくよ」
「それにしても彼らは大丈夫でしょうか?」

少し心配するディルテ。彼らはフェレン達が救出に出発してからおおよそ約3時間半経過していた。だが、キャスパーは自信があるようにディルテに言った。

「大丈夫さ、彼らは強い。あの集団を1人で倒してしまうくらいだからな」
「・・・・・・」

納得したように頷くディルテだが思い出したようにキャスパーに話す。

「知っていますか支部長。ここ最近迷宮で少しおかしな犯罪が起きてることを」
「ん、なんだいそれは?」
「知らないのですか?その被害に合われた方は身ぐるみ剥がされて帰ってきたそうです。」
「そんなことが起きていたんだね」
「えぇ、そしてその加害者達はなんでも3人組だそうで中級者だそうです」

その言葉に少し不安にキャスパーにディルテは確認を取った。

「彼ら大丈夫でしょうか?」
「だ、大丈夫だよ。きっと帰ってくるはずだ」
「・・・・・・」

その放った言葉にディルテは不安に狩られるだった。
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