第4話   ギルドの支部長とお話

文字数 4,750文字

空は快晴になりさんさんと照らす太陽。
フェレンは魔獣の残骸、素材の角を持ってこの場から離れた。

「何とも呆気ない、やはり伝説の魔獣もそこまで・・・か」

そんなことを残念そうに呟きながら疲れた体を休める為に戻ろうと早く歩くのだった。

しばらく歩いていると壊滅状態だった中規模集団が数十メートル先の方に休んでいる姿を見つけた。
面倒だな、フェレンは面倒事が嫌いだ。
なので一言も喋らずに通り抜けようと考える。

だが、現実はそう上手くいかず近くで休んでいたものはフェレンとその持っている角を見て呼び止めた。

「ちょ、ちょっと君!待ってくれないかな?君!」
「・・・・・・・・・」
「待ってくれないかな?」

そう言ってズカズカとフェレンに近づきガッと肩を掴まれた。
急に肩を掴まれ、しかも他の冒険者もフェレンを見る。

そんなことを無意識にやっていた奴にイラっときたフェレンはこれまで感じたことの無い殺意《いあつ》を出した。

その殺意にプルプル震えながらフェレンを見ていた。
フェレンを掴んでいた奴も咄嗟のことに手を離しごめんと謝った。
また、気を失いそうな奴らはフェレンの頭の上に文字が写っているように見えた。

(次変な事したら殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)

怖っ!と思いながらも冒険者達は絶対に変な事をするなよと初めて意見が合致した日でもあった。
もう何もしてこないな、そう判断したフェレンは堂々とその道を進んだ。

何かあるなら言ってこいと冒険者達がそこそこ話すがあの殺意の後そうそう聞きに行けるはずもなく、歩いていく姿を見ていた。

しばらく歩くと森の出口に出た。
門の入口が見えてきたと同時にフェレンは立ち止まり門の方まで歩き何事もなく帰ることが出来た。

街までやってきたフェレン、まずギルドを目指した。
魔獣を倒したことを報告する為だ。
ギルドは長方形を縦にした。
細長い建物だ。街の中心でもあるこの建物はよく目印として利用されている。

ギルドに入り受付を済ませた人物の所に行く。
その人は眼鏡をかけており真っ直ぐフェレンを見据えている。

「じぃさん、倒してきたぞ」
「なら保証カードとその魔獣の素材を出せ」

(保証カード、ギルド加入に発行し貰えるカード。個人の情報が入っており名前、性別、年齢、LV、討伐した魔獣の名前、数、ステータス、そして星のランク。星のランクとは★1から★15まで存在する。フェレンのランクは★5)

言われる通りにフェレンは保証カードと角を出した。
じぃさんは目を見開いて角をまじまじと見た。
するとフェレンの目を見て言った。

「本当にやったのか?」
「やったから来ただろ。それにカードにも記載されてるはずだ。よく見ろ」
「た、確かに。ちょ、ちょっと待ってくれ!すぐ支部長に話をつけるから!」

そのカードに記載されていた魔獣の名前は《一角雷神スターボーンホース》。
そう言ってじぃさんは慌てて角とカードを奥に持って行った。
数分経つとじぃさんと一緒にある男が戻ってきた。
その人は若く、眼鏡をかけておりシャープな顔立ち。
その男はフェレンの方まで近寄って自己紹介をした。

「初めまして、私はキャスパー支部長の秘書ディルテと申します。キャスパー支部長が貴方と話がしたいと申しております。ついてきてください」

ディルテが後ろを向き案内しようとするがフェレンが待ったをかける。

「済まないがその前に昼を取らせてくれ。俺はそのまま帰ってきたんだ。少しくらい休憩を取らせてくれないか?」
「いいでしょう。ですが、こちらも忙しい身なるべく早く済ませてください。それとさっき預かっていた角とカードです」

そう言い終わるとディルテはすぐに戻っていった。
カードと角を受け取りそのまま反対側の方向をフェレンは歩き昼食を取りに行った。
フェレンはいつも昼食を取っている場所にいく。
そこにはナイフとフォークをクロスに描いた金属の看板が目に入る。

フェレンはそこの店に入った。
また、フェレンはこの店の常連客の用で毎日ここに足を運び大好物なハンバーグを食べている。

フェレンは早速カウンターへ行きいつもの様にハンバーグを頼んだ。
楽しく明るい雰囲気だが1部の人が静かにしていた。
やはり、フェレンが現れると空気が一気に変わる。
フードを取り料理を待つ。

数分待つとハンバーグがやってきた。
店員さんは何故がフェレンを熱っぽい目で見ながら戻っていった。
途中チラチラ他の人に見られていたフェレンは早く済ませようと早く食べた。

昼食を早く済ませたフェレンはギルドに戻った。
戻るとそこにはディルテが行儀よく待っていた。
そしてディルテはついてこいと言うように勝手に歩き出した。
フェレンもそれについて行った。

長い長い階段を上り1番上まで登ってきた。
その扉にディルテはノックをかけた。

トントントン

「どうぞ」

30代後半くらいの声に聞こえたフェレン。
ディルテは“失礼します”と言って扉を開けた。
中は物凄く綺麗で赤いカーペットが敷かれている。
その上にテーブル、黒い椅子に挟まれており奥には業務用の机と椅子が置いあった。

黒い椅子に1人の男が座っていた。
その男は茶髪、オールバックにしておりなかなか声とのギャップに少し困惑した。

「どうしたんだい?早く座らないのかい?」

フェレンは黒い椅子に腰掛け、ディルテは支部長の横に立った。
支部長はうん、と頷き話を始めた。

「さて、まずは自己紹介からだ。私の名前はキャスパー・ウィルソン。冒険者ギルド、ハールバル支部長部長だ。そして君はフェレン・ディーア。そうだね?」
「そうだ、俺がフェレン・ディーアだ。それでお偉いさんがこの俺に一体何の用だ?」

フェレンはこの先何かがあると踏んでおり本題に入ろうと踏むがキャスパーはまぁ待て、と少し息を着いた。

「まず、君に聞きたい事がある」
「なんだ?」
「君のカードを見た時、私はある疑問に至ってね。君のステータスと魔獣討伐の名前に。
「・・・・・・」

疑問をぶつけられて困惑する中キャスパーは追撃をするが、それをフェレンは冷静に答えていく。

「はぁ、ステータスは別にそのままの通りだ。魔獣討伐もだ。別に疑問にすることはないだろう?」
「いいや、あるね」

ないと言っているが頑なにキャスパーはそれを認めない。どうやら、その疑問を解決したいらしい。

「君が今日討伐した前の魔獣、あれは半年前から潜伏していたゴブリンだ。早速冒険者達に依頼を頼み討伐に行かせてみたものの、帰ってきた報告は冒険者全員が全滅だった。だが、次の日お昼頃には何故がそのゴブリンが全て討伐されたと報告が来てね。私はその書類に目を通した。
あまりにおかしな出来事だったからね。あれは今でも記憶に残っているよ。そして、今日その人物に会えた。君だ。カードを見た時にゴブリン討伐と表示されていた」
「それで結局何が言いたい?」
「そうだね。正直言うと私は君のその力に興味がある。」

なるほど、と納得したフェレン。
だが、それに一体なんの意味があるのかと少しバカにした。
キャスパーは一息ついたあと1つの書類をフェレンに向けてテーブルに置いた。

「疑問も解決した事だし、早速本題について話をしよう。まず君のその力に見込んで1つ依頼をしてもらいたい」
「断る」

キャスパーが依頼を提案しようとした瞬間、フェレンが被せ気味に言いながら席を立った。
だが、キャスパーの次の言葉でフェレンの足が止まる。

「君の欲しい情報が手に入るかも知れないよ?」
「・・・・・・お前」

フェレンが欲しい情報、つまりはフェレンの秘密を少なからず知っていることになる。
フェレンはその事を悟ると瞳は酷く黒く闇が深くなった。
だが、キャスパーは手を上げた。

「いやいや、何も君とやり合うつもりは無い。話だけでも聞いてくれないか?依頼を受けるかは君次第だ」
「・・・・・・」

立っていたフェレンはそのまままた椅子に腰をかけた。キャスパーはフェレンが席に着くと同時に話を続けた。

「今回の依頼、そこに書いてある通りある集団を壊滅させて欲しい。ギルド、いや世界に呼びかけているんだ。そして、それはギルドにも伝わったがあまり宜しくない。」

キャスパーの話を要約するとこういう事だ。

まず数週間前に突然現れた集団。いや、集団というより宗教に近い。その宗教が勧誘しているらしいが勧誘された人達はある協会行ったんだ。だが勧誘された人達は一向に帰ってこず行方不明になっているらしい。もしくは何かの生贄か儀式によって殺されたか。

そのことはギルドにも伝わっているらしく、緊急に高ランクな冒険者を集め行かせてみたもののそのパーティーは1人だけ帰ってきた。帰ってきた1人に聞くも言葉は発さずただ震えていたという。
これにより、あまり高ランクでも危険が及ぶと判断セれたことに出だしができなかったという事だ。
ギルドも独自にやろうと作戦を練っているらしい。

「本当はそこまで問題ではなかった。だが、私の友人もその宗教に勧誘されてからと言うものの一向に帰ってこず心配なんだ。それに迂闊に高ランクを行かせればまた、やれらるかもしれない。全滅という可能性も。だが、そこに君がいた。伝説の魔獣と倒したと聞くしこれなら行けると踏んだんだ」
「いいのか?俺はそんなに強くないぞ。伝説の魔獣もたまたま倒せたし」

フェレンは自分が弱いと言うがキャスパーにはまるで通じない。

「君は伝説の魔獣を倒したはずだろう。それに、普通はもっと傷がないとおかしいのに君は全く無傷じゃないか」

やべっ!とコートを見る。
確かに傷がついておらず自分がそれほどの実力だと言っていることになる。
やっちまったと思いながらもフェレンは了承する。

「はぁ、その依頼引き受ける」
「ありがとう、助かるよ。それと宗教の名前を言っていなかったね。その宗教の名前は仮面教。今も勧誘している。早急に対処して欲しい」
「!?」

仮面、その言葉に強く反応した。
もしかしたら、分かるかもしれない。
そんな希望を抱くようになり強く願った。

「分かった。できるだけ早くやるよ」

キャスパーも安心した様子だった。
フェレンは一息着いた後、話を切り出した。

「それじゃ、今度はこっちだ。質問には答えたんだあんたも答えてくれよ」
「わかった。わかる範囲だけ答えよう」
「俺は10年前からある人物を探している」
「これはまた随分」
「その男は仮面を被っているんだ。数年前仮面の男が滞在とかしていたか?なんでもいい。少しでも情報が欲しいんだ」
「君の気持ちは汲み取ろう。だが、残念ながらそういった情報は入ってなかったね。もし良ければ私も過去の情報を漁ってみるよ」
「それは助かる。俺が聞きたかった話はこれで終わりだ」

今回のフェレンの目的は仮面の男の情報を手に入れることにある。
だが、キャスパーが過去の資料に目を通すという。
そうなればもう目的は達成されたも同然。
あとは依頼されたものを済ませるだけ。
フェレンはあまり損はしなかったことになる。

「依頼が達成出来るように祈るよ。それと報酬は弾ませてもらうよ。私の友人の命が関わっているからね。それとランクも★10まであげよう。何かあれば私を盾にしても構わない」
「そこまで言うだったら遠慮なく」
「ぜひ、よろしく頼むよ」

1度席を立ちフェレンを見て深々と頭を下げた。
人柄もよく礼儀正しい。貴族ではない。その可能性は大いにあるがもし、彼が貴族でないとしたフェレンはきっと彼のことを信じていたのかもしれない。
その姿を見てフェレンは立ち上がり軽く言った。

「まかせておけ」

そう言ってフェレンはこの街の詳しい地図と行方不明人物のリストを受け取ってこの部屋を出ていった。
フェレンはすぐにその階段をおりギルドを出てもう一度見た。
何を思ったのか、フェレンは1度フッと微笑んだ。
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