第38話 家族の視線<大きすぎる失点>
文字数 7,984文字
知らない事はまだ多いし、知りたい事もまだたくさんある事には変わりはない。
それでも優希君が私に、私だけに話そうとしてくれたことはとても嬉しい。
そして今度こそ優希君に私を見て欲しいって考えてしまう。
そのための一歩として、二人だけの放課後の買い出し。
絶対に楽しい二人だけの時間にしたい。優希君の予定も確認して、月曜日の全校集会の時には決められたらなって思う。
ただ蒼ちゃんがそうしてくれたように、私もまた親友を大切にしたい。
優希君ならその辺りも理解してもらえそうな気がする。
私は蒼ちゃんの事を聞くために、一度職員室にいる担任の先生の話を伺ってから家に帰る。
今日はお母さんが帰って来てくれることもあって、昨日、一昨日よりかは帰路に就く私の足は軽かった。
「ただいま」
統括会自体は早く終わったけれど、その後の優希君との二人だけの時間や、蒼ちゃんの事を嫌な顔をされながら担任から聞いて帰って来たから、いつもより少しだけ遅い帰宅になっていた。
「おかえりなさい。愛美」
お母さんの顔を久しぶりに見た気がする。
「今まで学校?」
「うん。統括会と友達が学校を休んでいたから先生にその確認とね」
リビングの方に向かいながら返事をする。
「愛美、おかえり」
お母さんがいると言う事は当然お父さんも帰ってるって言う事で、
「……ただいま」
お父さんの姿を見るとどうしても先週の事と、一昨日のあの子の事を思い出してしまう。
「えっと……愛美?」
「……」
お父さんが私やあの子のために頑張ってくれている事は分かってるつもり。
でも私の中に出てくる嫌な気持ち、お父さんやあの子に対するフケツな感覚は無視できない。私はお父さんの視線を避けるようにして、自分の部屋へ向かう。
何かを言って変な想像をされるのも嫌だから無言で。
部屋着に着替えて、いつまでも自分の部屋に籠っているわけにもいかず、仕方なしに下へ降りるとお父さんは先にお風呂に入ったのか、リビングにはいなかった。
「愛美。お父さんにはお母さんからきつく言っておいたから、もう大丈夫なはずよ」
お父さんに対する感情を収めるように私を説得してくる。
「でもお父さんはそう思ってるから言ったんでしょ?」
お母さんからしたらお父さんとは元々他人だったから感覚が分からないのかもしれない……そう考えたら、この家の中で私は一人ぼっちなのかもしれない。
「違うの愛美。そうじゃないのよ。ただお父さんは愛美の事が気になって仕方がないのよ」
「気になってって……私ちゃんとお父さんの前で友達の家に泊まるって前もって言ったよ?」
……私の事、信じてもらえてないのかな……。
一度頭をもたげた感想は、喉につかえた小骨のように私の心の中に残る。
私が一人寂しさを感じていると
「お母さんも愛美の気持ちをは分かるわよ。お母さんもお母さんのお父さんに“不純交友”は駄目だって頭から決めつけられた事があるから。その時はすぐにお父さんとケンカ。それからしばらくはお父さんとは口を利かなかったわよ」
お母さんが私を温めるように抱きしめてくれる。
「お母さん……」
お母さんがそう言ってくれたとしても家族の異性からそう言う目で見られるフケツな感覚は消せない。女ってホント損だなって思う。
「だから。愛美が今回みたいに傷つかないように、先に言っておくわね」
そう言ってお母さんが私から一度離れて、テーブルに着いたから、私もそれに倣うと
「お母さんは愛美の事を信じてるから、この先愛美が“この人”って思える男の人が出来たら愛美が信じた男の子“なら”愛美が何をしても、お母さん応援するから」
お母さんが私を信頼してるとはっきり言って、その上で応援してくれると言う。
私は自然優希君の優しい顔をが浮かぶ。
それは恐らくお父さんやあの子が言うのと同じニアンスだと思うのだけれど、印象が全く違う。
「今の愛美の表情なら、理解してくれてるだろうけど、愛美の事を本当に信用していなかったら親としては絶対に口に出来ない言葉なのよ」
そこにはお母さんが心から私を大切にしようとする気持ちが伝わるからか、私の中で感じた寂しさが“少しだけ”まぎれる。
「さて、そろそろお父さん上がるわね。今の話はお父さんに言うとまた変な事言い出すから、お母さんと愛美との女二人の秘密ね」
「ありがとう。お母さん」
今日初めてお母さんに自然な笑顔を見せられたと思う。
ただそれも長く続く事は無く
「そう言えば慶久は? あの子いつもこんなに遅いの?」
何回も思ってる事だけれど、あの子は私よりもさらに二つ小さいのだ。
だからこんな時間まで外をほっつき歩いているのはおかしいと思うけれど
「あの子の事は、もう私知らない」
あの日以来、私自身も極力避けるようにしているから、どこで何をしているのか知らない。
それに聞いてもあの日みたいに何も答えないだろうし。
「あの子って……慶久と何かあったの?」
私のあの子を突き放したような言い方に、はっきりとお母さんの顔色が変わる。
私が事の詳細を言おうか言うまいか迷っていると、お風呂から上がったお父さんが顔を出す。お父さんの言葉が発端でこんな事になっていると思うと
「……」
お父さんの前で話すのも、視線を合わせるのも嫌だ。
「……愛美」
だから私は無言でお風呂……もまた、お父さんの直後で抵抗を感じたから、シャワーで済ませようと思う。
「お父さんは愛美が許すまで、年頃の娘に言ったことを反省してください」
「……はい」
両親の会話を背に、私はリビングを出た。
結局私が上がってもまだ帰って来ないあの子に対して、お母さんがあの子の携帯に電話をかけるも、あの子が出るわけもなく、仕方なく三人で久しぶりのお母さんのご飯を口にする。もっとも私はあの子の顔を見たくないから、これで良いのだけれど。
「愛美。慶久の奴いつも帰って来るのこんなに遅いのか?」
お母さんとのやり取りを知らないお父さんが同じ事を聞いてくる。
「知らない」
お父さんの一言を、あの子も口にしたのがそもそもの始まりなのだ。
「……中間テストはもう返って来たのか?」
私と会話をしたいのか、お父さんの質問に一貫性を感じない。
「中間テストは学年で7位。お父さんは私の事かあの子の事かどっちが気になってるの?」
だからお父さんの質問に最小限答えた後で、何が聞きたいのかを改めて聞く。
「あの子って……慶久の事か?」
今まであの子に対して一度も本気で見放した事が無かったからなのか、私の呼び方でお母さんだけでなく、お父さんも顔色を変える。
今までは両親からの印象を守るため、成績のフォローをしたりとか庇うばかりだったし。恩着せがましく言うつもりはさすがにないけれど、私自身もまさかあの子に女として見られている上に、そう言う事を考えられているとは思ってもみなかった。
「ひょっとして……慶久と何かあったのか?」
その聞き方が先週私の貞操を疑われたときの言い方と全く一緒だったから
「お父さんのせい――」
私の感情が漏れそうなった所で、一つ深呼吸をしてかぶりを振ってから
「――お父さんには関係ない。言いたくない」
同じような聞き方をするって言う事は、どうせ同じような事を考えているのか……
私は改めて言いなおす。
「……」
私の雰囲気に気圧されたのか、お父さんもお母さんも無言になる。
今のはちょっと私が悪かったかもしれない。
「……ごちそうさま。私、自分の部屋にいるから」
私が作り出してしまった食卓の雰囲気に、私自身がいたたまれなくなって、夜ご飯もそこそこに、少しの自己嫌悪を持ちつつ、自室へと引き上げる。
勉強するにも蒼ちゃんに電話するにしても、今の気持ちじゃ手につかないから全校集会の時の原稿を少し考える。
今回から総合の順位の貼りだしの事と、衣替えの話で軽くまとめてしまう事にする。
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入学された一年生にとっては、初めての定期試験だったと思いますが結果はいかがだったでしょうか? 前の学校ではそこそこの成績だった人も今回苦戦した人も多いと思います。結果が良かった人もこれで満足せずに周りで困ってる人がいたら積極的に声をかけてあげて下さい。
季節も6月に入り、梅雨の時期でじめじめした日が続きますが、衣替えも終わって心機一転、楽しい学校生活が送れるように皆さんで協力してこのじめじめした時期を乗り切りましょう!
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一通りまとめ終えたところで、私の部屋に誰かがノックをする。
「……」
さっきの聞き方一つ取ってもお父さんとは口を利きたくない。
「愛美。お母さんよ。お父さんじゃないから部屋に入れてもらえないかしら」
さすがに私の気持ちが分かった訳じゃないだろうけれど、お母さんが名乗り上げる。
「お母さんだけ? お父さんはいない?」
「お母さんだけよ。と言うかお父さん愛美に怒られてリビングで項垂れてるわよ」
私が自己嫌悪を持った分、お父さんもショックを受けたのかもしれない。
「ちょっと待って。今開けるから」
一人でいたかった私はかけていた鍵を開けてお母さんを招く。
お母さんが部屋に入ると、そのままお母さんが鍵をかけてしまう。
「これでお父さんは入って来れないから安心して」
お母さんがベッドに腰掛ける。
「改めて聞くけど、慶久と何かあったのね」
まあお父さんにあの態度じゃごまかせない……か。
私は慎重に言葉を選んで話す。
「私って男の人から見たらそんなにはしたなく見える?」
自分で口にして悔しくなる。あの子にまでそう言う対象として見られていた事が。それを直接言われたことが。
「誰にそんな事を……って慶久が愛美に言ったのね」
これも人によっては何でもない事なのかもしれない。
男の子向けの漫画やアニメでは、そう言うのを題材にしているのは耳に挟んだことくらいはある。でもそれはマンガやアニメの中だけの話であって、実際にそんな事があるわけが無いと私は思ってた。
そりゃあの子だって、思春期の真っただ中にいるのだからそう言う事を考えるのは自然な事だと思う。でも実の姉に面と向かって言うものなのか。
「お父さんが言ってた事と一緒の事言われたよ。私が夜遅くまで男遊びをした挙句、男の人と一緒に泊まって、一緒に寝てるって。私の女である部分を見ながら」
無遠慮に姉に向かってそう言う視線までも向けるものなのか。
「……」
私の言葉に表情を青ざめさせるお母さん。
普通なら気にする事じゃないかもしれない。平気な人も多いかもしれない。でも私の家はご承知の通り仕事の都合で週末にしか親は帰って来ない。その間は私はあの子と二人きりでの生活なのだ。
三年前ならいざ知らず、今のあの子に私が力で勝てるとは思えない。三年前と先日、あの子にお弁当箱を投げられたことを思い出す。
やっぱりあの時も今も変わらず恐怖を感じる。正直今はあの子に関わりたくないとも思ってる。そこには朱先輩との関係を汚されたという思いも過分に入ってる。
「だからごめんなさい。昨日、今日とあの子にお弁当を作ってないの」
でも、この理由だけは言わない。これを言うと今までの事を全部言わないといけなくなるから。
「良いのよそんな事は。慶久にはちゃんとお小遣いも渡してるんだから」
お母さんが目を……赤くしながら。
「……お母さん?」
お母さん……もしかしなくても泣いてるのかな。
「愛美は気にしなくても良いわよ」
気にしないわけないのに。
「それよりも、この話お父さんにしない?」
「なんで? 何でそんな事言うの? お母さん言わないってさっき約束してくれたじゃない。お父さんに言うのは絶対に嫌」
そもそもお父さんがあの子の前で言わなければこんな事にならなかったのに。またお父さんにこの話を蒸し返すのも嫌。これじゃ少し大げさかもしれないけれどセカンドレイプと変わらない。
「……愛美、お母さん。慶久がまだ帰って来ないんだが」
扉越しにお父さんの声が聞こえる。
「……どうして?」
お父さんが扉の向こうにいるの?
「違う。お母さんが呼んだわけじゃないわよ」
お母さんの赤い目を見れば、冷静さを欠いた今の私でも分かる。
あらかたまだあの子が帰って来ないから心配になっただけなのだと言う事くらいは分かる。
「分かってる……けれど今日はもう一人にして……お願い」
けれど今問題なのは、今のお母さんとの会話を聞かれたかもしれない事。
「……愛美……」
「お願いだから……ごめん」
私はお母さんの声に取り合わず、私が無理やり追い出すような形で出て行ってもらう。
一人で考えたい事もたくさんあったのだけれど、時間も時間だったから、先に蒼ちゃんの所に電話をかけさてしまう。
『もしもし……愛ちゃんどうしたの?』
何か久しぶりに蒼ちゃんの声を聞いた気がする。最近蒼ちゃんの声を聞く回数自体が減っている。
『良かった。蒼ちゃんが元気そうで』
蒼ちゃんの声を聞いて、色々な感情がない交ぜになって、私の目に涙が浮かぶ。
『愛ちゃん泣いてるの?』
『泣いてはないよ。ただ蒼ちゃんの声を聞いて安心したって言うか……こう言うのなんて言うんだろうね?』
親友の声を聞いて緊張の糸が切れるって言うか、私自身相当参っているのが分かる。
『心配かけてごめんね。月曜日にはちゃんと学校行けるから。ね』
本当は学校を休んだ蒼ちゃんを心配しての電話のはずだったのに、立場が逆転している。
『蒼ちゃんが電話で“ごめんね”って言ってすぐに切って、学校休んだから、すっごく心配したんだからね』
溢れそうになる涙をこぼさないように、瞼を少しだけ閉じる。
『……あの時はせっかく愛ちゃんが電話をしてきてくれたのに、蒼依が空気を悪くしちゃったから』
私と蒼ちゃんの仲でそんなこと気にしなくても良いのに。
『それより愛ちゃんの方も何かあったんでしょ?』
『ううん。特には何もないよ。昨日・今日と蒼ちゃんの姿を見て無いから心配だったくらい』
前回の蒼ちゃんとの電話の事があるから、私の話で追い込んでしまうかもしれない事を考えると、迂闊には話せない。
『愛ちゃんは本当に優しいよね。こんな蒼依の事でもちゃんと大切にしてくれるんだから』
蒼ちゃんはそう言ってくれるけれど、違うそうじゃない。
本当の私は蒼ちゃんに話せない事もたくさん出来つつある。親友だって言っておいて蒼ちゃんの事を傷つけてしまっている。
それに今回の電話だって、自分が滅入っているから、親友の声を聞きたいなんて都合の良い様に電話している自分の気持ちもある。
『そんな事ないよ。私の方こそありがとう。いつもそばにいてくれて』
だから、せめて全部を伝えられなくても、感謝の気持ちだけは伝えたいなって。
『後はこの前知らせた通り、成績の順位表が職員室の前に貼ってあるけれど成績上位者20人だけの分の公表に変わってるよ』
『そっか全員じゃなくなってるんだね。蒼依は良かったけど夕摘さん、また何か言われたのかな?』
自然に友達の事を思いやれる、あの時から変わらない蒼ちゃんに私の心は少し救われる。
『うん。例のグループがね。やっぱりあのグループは何かを言わないと気が済まないだけだよ』
戸塚君の事で苦しんでいるのも、あのグループが原因なのだ。
『蒼依も愛ちゃんくらい強かったら言い返せたりするのかな?』
前にも言ったことあるはずだけれど、蒼ちゃんには蒼ちゃんだけが持つ良い所がたくさんあるのだから
『そんな事ないよ。蒼ちゃんの良い所は私がちゃんと知ってる。だから蒼ちゃんは友達の事を自然に思いやれる今のままで十分だよ。また月曜日に色々話そうね』
私は。私だけは例のグループを気にせずに蒼ちゃんと仲良くしようと思う。
『うんありがとう愛ちゃん。今日はご両親帰って来るんだよね? 慶久君……はアレだけどご両親とは仲良くね』
やっぱりこう言うのは親友とか友達の方が分かって貰いやすいのかな。
『うん。こっちこそありがとうね』
蒼ちゃんの何気ない一言にまた私の心が少し救われたところで、時間も遅めだったから蒼ちゃんとの電話を切って、朱先輩に余計な心配をかけないように、気持ちをしっかりと落ち着けてから明日は参加する旨のメッセージを送る。
明日着て行く服を出し終えたところで、先に気持ちをしっかり落ち着けておいて良かったと心の中で思いながら、
『どうしたんですか? 朱先輩』
朱先輩からかかってきた電話を……取る。
『どうしたもこうしたも無いんだよ。最近愛さんがよそよそしい気がするから、わたしから電話する事にしたんだよ』
よそよそしいって……でもその朱先輩の気遣いがとても嬉しい。
『朱先輩にはちゃんと隠さずに話してますよ。だいたい隠し事させてくれないじゃないですか』
いくら言わないでおこうと決めても、朱先輩の前では隠し事を通せたことが無いのだ。
『当たり前だよ。わたしは愛さんの一番の理解者でありたいんだよ』
そんな言い方されたら、さっきのお父さんとお母さんの事、今週のあの子の事も話したくなってしまう。
『いつもありがとうございます』
その朱先輩の色々な言葉が、いつもの別れ際のやり取りが幾度私の心を救ってくれた事か。
『……愛さんがまたちょっとよそよそしい気がする。明日またわたしの家で話をした方が良いと思うんだよ』
そしてまた明日も、私は朱先輩に救われるのかな。
『今週は両親とも帰って来てるから……』
お父さんの事もあの子の事もあるから、だからどうと言うのが言えない。
『……分かったよ。明日は愛さんと一緒に夜ご飯だよ』
お母さんはともかく、お父さんの顔もあの子の顔も見たくなかった私には
『ありがとうございます』
結局お礼を言うしかできない。
『それと明日ボタンの取れたブラウスを私が直すから忘れずに持ってくるんだよ』
そう言えば今週も色々あった上に、元のボタンの取れたブラウスははねていたから、朱先輩のお下がりを借りていて枚数も合っていたと言うのもあってすっかりとその事を忘れていた。
言い返せば朱先輩のお下がりのブラウスは私に馴染んでいると言う事にもなる。
『はい、明日持って行きますね』
私は普通に返事をしたはずなのにどうして朱先輩は分かるのか。
『愛さん忘れてたでしょ』
『明日ちゃんと持って行きますから』
私にはごまかすように言い切る事しかできなかった。
『それと、明日は昼からの方もお願いしたいからまた動きやすい格好でお願いするね』
『分かりました。先週はテスト前で朱先輩にも助けて頂きましたし』
気分転換の意味でも、外の空気を吸って、外の風に当たって体を動かすのはいい気分転換にもなるかもしれない。
『うん。じゃあ明日はいつも通りの場所、時間で』
朱先輩と約束をして電話を終えた私は、明日に備えてそのまま眠る事にした。
――あの子がいつ帰って来たのかも気に留める事もなく――
―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――
「お母さんも一緒にいるから」
愛美を一人にしないと母親が言う
「昨日かな? また愛さんに悲しい事があったんだね」
どうしてか、わかる朱先輩
「愛さん。それ聞いてどうするの?」
緊張をはらむ朱先輩
「時が来たら必ず言う。今はまだ言えないんだ」
サブタイトル ☆ 心の鍵の解き方 ☆
39話 分からない視線<兄弟は他人の始まり>