暗雲

文字数 455文字

 とある玉座の間に一人の男が佇んでいる。玉座に座るでもなくひたすらたたずみ、何かを待っている様子である。

 「申し上げます。南西のルワール王国の都市であるスピットの制圧に成功したとの報告がございました。このまま首都制圧に向かうとのことでございます。」 

 一人の兵士が玉座の間でたたずんでいる男へ跪いて都市の制圧という軍の成果を報告しているようである。玉座に佇む男は兵士の方を見向きもせず受け答えを続ける。

 「そうか、報告ご苦労であった。下がってよいぞ。」

 まるで、そのくらいのことは想定したかのような様子で返し、兵士を下がらせるのであった。

 「はっ! では失礼します」

 そう言って、即座に兵士は下がり、自らの任務へと戻っていくようであった。 

 玉座の男はある国の王、あるいは皇帝のようであり、ルワール王国と交戦中であり、しかもこの男が治める国が優勢なようである。
 しかし、この男は今回の戦果に喜びを表すことなく、更なる対価を求めているようであった。そして、その考えの真の意味はこの男にしか分からないようである。
 
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