城下町ノック

文字数 1,169文字

 スールの王宮がある城下町、ノックへと辿りついた一同は馬車を町のはずれにある馬小屋にループごと預けて王宮へと向かうこととなった。

 その際にエイムがループに話しかけている。

「じゃあループ、私達が戻って来るまで良い子でいてくださいよ」

 エイムがそう言い終えるとスールの兵士の案内で王宮へと向かう。歩き出した直後にルルーがエイムに話しかけている。

「ねえエイム、少しいい?」
「はい、なんでしょうか?」
「私思ったんだけど、あのフィファーナっていう将軍がギンを狙っていたっていう剣士の上官じゃないのかな。彼女自身も強い魔力を持っていたようだし」
「私も最初はそう思いました。でも違うと思います」

 エイムの言葉にルルーが自分の考えを述べる。

「もしかして精霊と契約していないから?」
「それだけではなく、遠隔で発火する魔法というのはとても高度で精霊との契約以外にも魔力の感知能力や魔力コントロール全ての精度が高くないとできないんです」
「でも、そんな条件を満たしている魔術師って私の知る限りじゃあ1人しかいないわ」
「誰ですか?」

 ルルーはその名をだすことに少し間をおいて話す。

「ブロッス帝国の魔術師団の長であるエンビデスよ」
「エンビデス?」
「やっぱり、エイムは知らなかったのね。彼は帝国随一の魔力をほこり、宰相としても皇帝を補佐しているの」

 エイムがその話を聞いて驚愕している中、ルルーは話を続ける。

「多分、世界中探しても彼以上の魔術師はいないわ」
「私達、そんな力を持っている人と戦うんですね」
「そうね、彼らは軍事力や魔法の力も他国を凌駕しているわ。それなのに魔法剣を持つギンや、スールの古文書に書いてある何かを求めている。何を考えているのか分からないわ」

 帝国が持つ強大な力と更に力を求めるその姿勢に恐怖と不安を吐露するルルー。そのルルーにムルカが声を掛ける。

「ルルーよ、不安か?」
「ムルカ様、申し訳ありません。取り乱してしまい」
「いや、それは世界中の人々が今帝国に感じていることだ。無論私もだ」

 ルルーがムルカの言葉を静かに聞いている中、ムルカは話を続ける。

「だが、我らは局地戦とはいえ、帝国に勝利を収めている」
「はい」
「何であれ帝国が敗退しているという事実は反帝国の国々にとっては反撃の狼煙になりうる」

 その話を聞いてブライアンがムルカに尋ねる。

「つまり、俺達が帝国に勝てば、他の国も打倒帝国に立ち上がるってことか?」
「そういうことだ」

 ムルカとブライアンの話を聞いてジエイがある提案をする。

「今回の勝利も喧伝すれば反帝国同盟の締結がよりやりやすくなるかと」

 ジエイの提案にムルカがよい反応を示す。

「それは良いな。ジエイ殿、スール国王にそう進言してくれ」
「承知」

 強大な帝国と戦う中、不安と恐怖がありつつもわずかな希望に向けて前進を決意する一同であった。
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