秘伝の技

文字数 1,592文字

 ブロッス帝国将軍フィファーナとの戦いを経て、互いに信頼が置けそうと感じたギンとジエイはそれぞれの特技の話をした。

「まずは俺から話そう。俺は魔法剣という技を駆使して戦っている」
「魔法剣⁉古い書物で読んだことがあります。ですが、実物は初めてですな。まさかこの時代にも使い手がいたなんて」
「剣を魔力で纏い火の魔法を発動させたんだ。それでお前の先程の秘術は?」
「はい、私は忍術というものを駆使しています」

 忍術という聞きなれない言葉にギンは思わず聞き返してしまう。

「何だ?それは、聞いたことがないぞ」

 他の者も聞きなれない言葉に反応を示し、ルルーは知ってるかもしれないと思ったムルカに聞く。

「ムルカ様、今のニンジュツとは一体なんでしょうか?」
「私にも分からん。だがジエイ殿がわざわざ秘術と言うからにはなにかあるのだろう」

 他の者達が遠くから聞きながらジエイがギンに忍術の説明をする。

「忍術とは、おそらくあなた方から見ると魔法の亜種みたいなものでしょう。私の先祖が独自に編み出し、わが家に代々その技術が受け継がれたのです。魔法とはその性質が違うゆえ、魔法障壁を貫通することができるのです」
「そうか、だがさっき俺達が探れないくらいうまく気配を隠していた暗殺者の居所を正確に探り短剣を命中させたのは、あれも忍術なのか?」
「殺気、ですね。まあ、修行の賜物で殺気を感じやすいので少しでも集中する間があればあの程度は私にとっては造作もありません」

 また忍術の類かと思ったギンだが、ジエイの返答に少し気が抜ける返事を返す。

「そうか、いや、聞けば聞くほどお前の凄さに驚くばかりだ」
「あなたもです、剣技でフィファーナと互角に戦えるものなど帝国にもそうおりますまい」

 互いを絶賛するギンとジエイ、その様子を見ていたブライアンが近くのルルーにその様子についての自分の考えを述べる。

「何か珍しいな。ギンがあそこまでベタ褒めするなんて、ちょっと気持ち悪いくらいだ」
「そうね、特にさっきまでケンカを売るような態度だったしね」

 ブライアンとルルーの会話を聞いていたエイムが、自分の思いを2人に話す。

「きっとギンさんはジエイさんがご自分を信じてくださってうれしくなったんだと思います。先程までジエイさんがご自分を信じてくれないことが少し、その、寂しいと思ったかもしれないから」

 エイムの寂しいという言葉に思わずブライアン、ルルーが笑い出してしまう。おおよそギンには似合わない言葉と思ったのかおかしくなったのだ。

「ギャッハハハ!」
「フフフ、ハハハハハハ!」

 突如笑い出した2人に対して戸惑うエイムが思わず2人に尋ねる。

「ええっ⁉私、なんかおかしいことを言いました?」
「あ、いや悪い。別にエイムを笑ったわけじゃないんだ」
「ごめんね、なんかギンが寂しいっていう言葉が似合わなくて、ついね」

 笑いが収まったブライアンとルルーがエイムに笑った経緯を話す。

「なんだろうな、あいつがそんなことで傷つくタマじゃなさそうだしよ」
「私もそう思うわ。そりゃあ、彼の言い方に少しは怒りがわいたとは思うけど、傭兵をしているんだし多少の割り切りはできるとおもうわ」
「お2人のおっしゃる通りかもしれません。だけど私はそういうことで少し寂しいと感じるギンさんの方が身近に感じれると思います」

 エイムの屈託のない返答にそれ以上ブライアン、ルルーは何も言えないでいる。話し終えたエイムはギンとジエイに駆け寄る。

「ハハハハ!貴殿らの負けだな、ルルー、ブライアン殿」

 後方からムルカが笑い出しルルーとブライアンに話をした。

「ムルカ様」
「ムルカの旦那」

 反応を示した2人にムルカは話を続ける。

「きっと、エイム殿がギン殿のことを我らの中でも1番素直に見ているのだろう。案外それがギン殿の本質かもしれんな」

 ムルカの言葉に沈黙する2人はギンの本質とは何かを考えていた。
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