猛攻！バンス将軍

　プレツの砦の攻略の為に前線に現れたブロッス帝国のバンス将軍は副官であるブリードに作戦を伝えていた。

「では作戦を伝える。お前は引き続き包囲を続け、敵の援軍に警戒をしろ」
「それではバンス様はいかがなさるのですか？」
「わしは自ら兵を率い砦に突入する」

　突如自ら前面に立つ作戦を提案したバンスに対し驚きと戸惑いのあまりブリードは反対意見を述べる。

「お待ちください。将軍自ら砦に突入するなど危険すぎます。我々が前面より敵を引き付けますのでバンス様はその隙を突いて敵将を討ち取って下さい」
「何を言うブリード！わし自らが突入するからこそ敵はわしを討とうと躍起になり隙が生まれるのだ。それともお前はわしがあの者達に後れを取るとでも？」
「いえ……」
「ならば、突入はわしに任せろ。砦にいる将を討ち取れば我らがあの砦を占拠することができる」

　バンスはあくまで自らを討とうとせんとする兵士たちをなぎ倒し砦の守備に隙を作り砦への侵入をしやすくする作戦が有効だと訴えた。

　これはプレツ兵では自らにかなう者がいないという自信と部下であるブリード達への信頼がバンスをこの作戦へと駆り立てるのだ。

　バンスの訴えを受け、ブリードが返答する。

「承知いたしました。このブリード身命を賭して敵の援軍を食い止めます」
「うむ、頼んだぞ」

　そう言ってバンスは兵を率い部隊の最前線に現れ、砦に向かって大声で叫びだす。

「プレツ軍の者どもよ！我こそはブロッス帝国将軍バンスである！これよりわし自ら貴様らを1人残らず成敗してくれる！」

　突然のバンスの叫びにプレツ軍将軍、ブライアン、ルルーは唖然とし戸惑っている。

「あれがバンス将軍か……」
「自ら前面に出て将軍自らが囮になるなんて……」

　ブライアンとルルーの言葉を受け、将軍はバンスの戦歴を思い出していた。

「まずいぞこれは……」
「どういうことでしょう将軍様？」
「バンス将軍が自ら剣をとればその戦いは勝ち戦と言われている」

　将軍はバンスが自ら前線で剣を振るうことで勝利を呼ぶことを思い出し更に言葉を続ける。

「鬼神バンスだ……」
「何をおしゃっているんですか、そんなのは伝聞に過ぎません！」
「し、しかし我らの戦力では……」

　将軍はバンス自らが前線で剣を振るうことにもはや勝ち目なしと戦意を喪失するが、ルルーがある訴えをする。

「プレツにも騎士ムルカがおります！」
「騎士ムルカ……」
「そうです、例え騎士身分ではなくともあの方が我らの希望である事には変わりません。あの方……いえ、ムルカ様だけではなく私達は仲間と共にこれまで帝国軍を打ち破ってきました！」
「シスター殿……」

　さらにルルーは強い言葉で将軍に呼びかけた。

「ムルカ様や彼らが来ればこの戦いもきっと勝てます。だから信じてください、私の仲間を！」
「シスター殿……そうだな以前もそなたらやムルカ殿のおかげで勝てたのだからな。そなたの言葉を信じ我らも最後まで戦い抜こう！」
「ありがとうございます！」
「礼を言うのは私の方だ。そなたらやムルカ殿がいるから戦意を失わずにすんだのだからな」

　ルルー達はいかにしてバンスの猛攻を耐えるのか？