手負いの武人

文字数 1,275文字

 プレツ攻略に失敗したバンス隊、そしてプラナはブロッス本国への帰還を果たしていた。帰還するバンスを1人の女性が心配そうに待っている。

「そろそろお父様がお帰りになるのよね」
「今しばらくお待ちくださいピリカ様、バンス様は今回の戦いで負傷なされたので、お連れするのも慎重になっていると思われます」

 侍女らしき女性によるとこの女性はピリカという名でバンスの娘だそうだ。侍女の言葉にピリカが返事を返す。

「それは分かっているわ。でもお父様が戦いでそれほどの大きな怪我をしたことがなかったから心配なのよ」
「ピリカ様、申し訳ございません。お心中察しいたします」

 ピリカと侍女がやりとりをしていると、兵士達の姿が目に入る。

「あれは?」

 ピリカが兵士達に気付くと、馬車にいるバンスにも気付き、駆け寄っていく。

「お父様!ご無事ですか⁉」
「おお、ピリカか、いかがしたか?」
「何を言っておいでなのです、お父様がそれほどのお怪我をしたなんて聞いたことがなかったから心配になったのです」
「はっはっはっ、おお、痛。わしはなピリカ、お前の花嫁姿を見るまでは死にはせんぞ」

 バンスの言葉に少し照れが入り、思わずピリカは憎まれ口を叩いてしまう。

「なっ、お父様そこは孫が生まれて、その子を武人として鍛えるって言わないと」
「ふっ、お前の方が1枚上手か、じゃあわしも治癒室にいかねばならん」

 そう言ってバンスは馬車と共に治癒室まで向かう。取り残された、ピリカに副官であるブリードが声をかける。

「ピリカ様、申し訳ありません。このブリードがいながらあのような怪我を将軍に負わせてしまい」
「ブリード、いいえ、きっとお父様をあそこまで追い詰める相手がいたんでしょう」
「はっ、では自分は将軍に代わって陛下に今回の戦いの事を報告しなければならないのでこれで」

 そう言ってブリードは皇帝であるギガスが待つ玉座の間へよ向かっていく。

 最後にピリカに声をかけたのはプラナであった。

「ピリカ様、お久しぶりです」
「プラナ!そういえばあなたがお父様に従軍していたのよね」
「はい、申し訳ありません。助力が足りなくて将軍にあのような怪我を負わしてしまい」
「あなたのせいじゃないわ。むしろあなたが協力してくれたからお父様は死なずにすんだのかも知れないわ」

 ピリカの言葉に対しプラナは感謝の言葉を述べる。

「ピリカ様、心遣い感謝いたします」
「いいえ、あなたと私の仲じゃない。落ち着いたらまたお茶でも飲みにいらしてね」
「はい、あ、ご婚約おめでとうございます。確かルホール地方の領主様のご子息様でしたよね」
「ありがとう。ルード様とは幼馴染でもあったし。その、陛下とお父様には感謝の気持ちでいっぱいよ」

 ルホール地方領主の息子であるルードはピリカとは幼馴染であり、少なからず思っていたようであり今回の婚約はピリカにとっては喜ばしい出来事なのだ。

「それは良かったですね。では私も今回の事をまずカイス様にご報告しなければならないので失礼します」
「ええ、またね」

 プラナはカイスのもとに報告へと向かい、ピリカは侍女と共に屋敷へと戻っていく。
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