広がる絆

文字数 1,234文字

 グラッス国内にあるトッポックスの領主がヨナ達傭兵に不当な通行料を徴収させた罪を問われ領地を没収され、身柄を拘束されるという情報を得たギン達は1晩様子を見、改めて同盟交渉に臨むべく、まずはジエイが王宮の様子を見るため、ヨナ達の村から出発しようとしていた。

「では昨日話したようにまずは私が王宮の様子の情報を収集してきましょう。皆さんはゆっくりと王宮に向かってください」

 ジエイの言葉にルルーが返答をする。

「そうね、じゃああなたも気を付けてね」
「しからば、ごめん」

 そう言うとジエイは高速で王宮へと向かっていく。

 ジエイが自分達の視界から消えるとムルカがギンに話を振る。

「さて、ギン殿、我らも出発の準備をするか」
「そうですね。急ぐ必要はないかもしれないが、準備はしましょう。馬車をとってきます」

 そう言うとギンは馬車の方へと向かっていった。エイムもループが気になったのかついて行くことを申し出た。

「あ、じゃあ私も行きます」

 ギン達が馬車の方へと向かうと、ルルーがヨナに話しかけている。

「私達は王宮へ向かうけど、あなた達は私達が戻って来るまでここにいてくれる?」
「ああ、分かったよ。行く前にちょっと聞かせてくれるかい?」
「何かな?」
「何で、あんた昨日最初はなんか説教臭かったのに、急になんていうのか、その、あたしらの気持ちを考えてくれたっていうのか……な」

 ヨナの思わぬ質問に戸惑うが、ルルーは自らの思いの変化について話す。

「私は特使として自分の使命を果たさなければならないと思っていたわ。だから最初はあなたに同盟の必要性を思わず訴えてしまった。でもあなたの言うようにそれは私達の都合であり、そもそも本来あなたに言うべきではなかったわ」

 無言で聞いているヨナに更にルルーは言葉を続ける。

「その後、ギンとエイムがあなたの話を聞くことで、あなたは複雑な思いを話してくれた。それを見て私が間違っていたと思ったわ」
「ちょっと待ってよ。金を巻き上げようとしたのはあたしらなんだよ。あたしもあの時は思わず感情的になっちまってあんたらに反発したじゃん」
「でもあなたは自らの非を認めた。それにあなたは結果的には私達から不当徴取はしなかったわ」

 再びヨナは黙り込み、ルルーが言葉をかける。

「あなた達がもう2度と過ちを犯しそうにならずに済むには、私達と一緒に過ちを犯さなくても生きていける道を探すことかなって思ったの」
「一緒に探す……か、そんなことあたしらに言ってくれる奴なんていなかったよ」
「信じられない?」
「いいや、少なくとも戦争を終わらすなんて大きなことを言う奴よりは信じてみようって気になるよ」

 ギンが前にヨナに語りかけた言葉だが、ルルーはこの返答に笑顔で答える。

「フフ、でも理想を追い求めるからこそ人って生きていけると思うわ」
「じゃあ、あたしもその理想にのっかるよ」

 2人が話している中ギンが馬車と共に戻って来た。

「それじゃあそろそろジエイを追いかけよう」

 王宮へと出発する時が来た。
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