巣立
文字数 1,672文字
エイムが自らの実子ではないことを語ったエイムの父トール。そのトールはギンに何故この話をしたかを打ち明けようとしている。
「理由は2つあります。1つはエイムがあなたの助けになるかも知れないからです」
「彼女が自分の助けに?」
「ええ、あなたを狙っているかも知れないブロッス帝国には強力な魔法を使用する宮廷魔術師が存在すると聞いている。名はエンビデスといったと思います。彼は魔術師の軍団を束ねる存在であると同時に政治面でも宰相として皇帝の補佐をしている人物です」
エンビデスという人物の存在を聞かされたギンはトールに聞き返す。
「彼女がそのエンビデスなる人物の魔力に匹敵すると?」
「私には分かりませんが、少なくとも魔法剣だけでは厳しいでしょう。だからあなたにはエイムの魔法が助けになると思います」
「それで彼女に旅の許可を、では2つ目の理由は?」
トールはギンの問いに言葉を溜めて話す。
「2つ目の理由は……、あなたにエイムを守ってほしいからです」
「どういうことです?先程は自分の力になるとおっしゃっていたのに」
「あの時、ボース王国の軍が私達の村の近くの町に襲撃をしていた。もしかしたらエイムはボースの関係者の子かも知れないと私は考えています」
トールの推測に沈黙を守りながら聞くギンに対してトールは更に言葉を続ける。
「まだ帝国はエイムの存在に気付いてないとは思いますが、気付くのは時間の問題でしょう。その時に私達ではエイムを守れない。それどころか私達の方が足手まといになってしまう」
「それは……」
「だから強力な魔法剣を使うあなたと共にいることが互いの助けになりエイムを守ることにもつながるかも知れない。身勝手を承知でお願いします。どうか私達の代わりにエイムを守ってください」
そう言ってトールはギンに対して頭を深々と下げて懇願する。しばらくしてからギンがトールに対して思いを話す。
「頭をお上げください。彼女には依頼のさなかも助けられましたから、守り抜くことで受けた恩を返すことになるというなら……」
「では……」
「あなたのお願いをお聞きします。傭兵ではない1人の人間として」
ギンの言葉に感激したトールはギンの手を握りながら礼を述べる。
「ありがとうございます!」
「さあ、もう休みましょう病み上がりでお体に障りますよ」
そう言ってギン、トール共に寝床に着く。
翌朝、一同は朝食もほどほどに旅支度を終え、いよいよ出発となった。エイムが両親に対して出発の挨拶をしていた。
「それじゃあ、お父さん、お母さん、行ってきます。あと、ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて」
エイムの言葉を聞いた母のアンリがエイムを突如抱擁する。
「お、お母さん」
エイムは一瞬戸惑うがアンリはエイムに思いを話す。
「いつかはこういう日が来ると思っていた。あなたが巣立っていく日が、でも忘れないで。あなたはいつでもここに帰ってきていいんだから。
だってあなたは私達の娘なんだから」
「お、……母さん……うっ、うっ……」
母の言葉を聞いたエイムは涙が止まらず子供のように泣き続ける。
「うっ……うっ……」
だが自ら涙をぬぐい、母に自らの気持ちを話す。
「はい、きっと帰ってきます。だから2人ともそれまでお体に気を付けてくださいね」
そう言ってエイムはギン達に声を掛ける。
「お待たせしました」
エイムの呼びかけにギンが返事を返す。
「ああ、行こう」
こうしてエイムとギン達は村を後にした。
近くの町まで徒歩で移動していく中、ギンがエイムに声を掛ける。
「エイム、ご両親との別れは辛くないか?」
「辛くないといえばウソになりますけど、でもいつかまた会えると信じて旅立つことにしましたから」
「強いなエイムは」
「それはギンさん達が一緒にいてくれるからです」
エイムの言葉に感激したブライアン、ルルーが感激の言葉を言う。
「うれしいこといってくれるじゃねえか」
「そうね、そう言ってもらえるだけでここまで来た甲斐があったわ」
楽しそうにしている3人を見てギンは何年振りか分からないほどの穏やかな気分になっていた。
「理由は2つあります。1つはエイムがあなたの助けになるかも知れないからです」
「彼女が自分の助けに?」
「ええ、あなたを狙っているかも知れないブロッス帝国には強力な魔法を使用する宮廷魔術師が存在すると聞いている。名はエンビデスといったと思います。彼は魔術師の軍団を束ねる存在であると同時に政治面でも宰相として皇帝の補佐をしている人物です」
エンビデスという人物の存在を聞かされたギンはトールに聞き返す。
「彼女がそのエンビデスなる人物の魔力に匹敵すると?」
「私には分かりませんが、少なくとも魔法剣だけでは厳しいでしょう。だからあなたにはエイムの魔法が助けになると思います」
「それで彼女に旅の許可を、では2つ目の理由は?」
トールはギンの問いに言葉を溜めて話す。
「2つ目の理由は……、あなたにエイムを守ってほしいからです」
「どういうことです?先程は自分の力になるとおっしゃっていたのに」
「あの時、ボース王国の軍が私達の村の近くの町に襲撃をしていた。もしかしたらエイムはボースの関係者の子かも知れないと私は考えています」
トールの推測に沈黙を守りながら聞くギンに対してトールは更に言葉を続ける。
「まだ帝国はエイムの存在に気付いてないとは思いますが、気付くのは時間の問題でしょう。その時に私達ではエイムを守れない。それどころか私達の方が足手まといになってしまう」
「それは……」
「だから強力な魔法剣を使うあなたと共にいることが互いの助けになりエイムを守ることにもつながるかも知れない。身勝手を承知でお願いします。どうか私達の代わりにエイムを守ってください」
そう言ってトールはギンに対して頭を深々と下げて懇願する。しばらくしてからギンがトールに対して思いを話す。
「頭をお上げください。彼女には依頼のさなかも助けられましたから、守り抜くことで受けた恩を返すことになるというなら……」
「では……」
「あなたのお願いをお聞きします。傭兵ではない1人の人間として」
ギンの言葉に感激したトールはギンの手を握りながら礼を述べる。
「ありがとうございます!」
「さあ、もう休みましょう病み上がりでお体に障りますよ」
そう言ってギン、トール共に寝床に着く。
翌朝、一同は朝食もほどほどに旅支度を終え、いよいよ出発となった。エイムが両親に対して出発の挨拶をしていた。
「それじゃあ、お父さん、お母さん、行ってきます。あと、ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて」
エイムの言葉を聞いた母のアンリがエイムを突如抱擁する。
「お、お母さん」
エイムは一瞬戸惑うがアンリはエイムに思いを話す。
「いつかはこういう日が来ると思っていた。あなたが巣立っていく日が、でも忘れないで。あなたはいつでもここに帰ってきていいんだから。
だってあなたは私達の娘なんだから」
「お、……母さん……うっ、うっ……」
母の言葉を聞いたエイムは涙が止まらず子供のように泣き続ける。
「うっ……うっ……」
だが自ら涙をぬぐい、母に自らの気持ちを話す。
「はい、きっと帰ってきます。だから2人ともそれまでお体に気を付けてくださいね」
そう言ってエイムはギン達に声を掛ける。
「お待たせしました」
エイムの呼びかけにギンが返事を返す。
「ああ、行こう」
こうしてエイムとギン達は村を後にした。
近くの町まで徒歩で移動していく中、ギンがエイムに声を掛ける。
「エイム、ご両親との別れは辛くないか?」
「辛くないといえばウソになりますけど、でもいつかまた会えると信じて旅立つことにしましたから」
「強いなエイムは」
「それはギンさん達が一緒にいてくれるからです」
エイムの言葉に感激したブライアン、ルルーが感激の言葉を言う。
「うれしいこといってくれるじゃねえか」
「そうね、そう言ってもらえるだけでここまで来た甲斐があったわ」
楽しそうにしている3人を見てギンは何年振りか分からないほどの穏やかな気分になっていた。