決着の時

文字数 1,354文字

 エイムとブライアンの援護があり、ルルーがプレツ軍の守る砦への入城に成功し、治癒魔法で兵士達の治療を開始する。そんな中ギンが敵の指揮官であるブリードと対峙する。

「くっ!たった1人でこれほどの兵をなぎ倒すとは、こうなれば俺自らが貴様を始末してくれるわ」

 そう言ってブリードは剣を抜きギンに対して向ける。互いに間合いをはかり、一騎打ちが始まる。

 ギンとブリードの激しいつば競り合いが続き、一進一退が続くが、ギンが距離を取り後退する。

「どうした、逃げるのか。ん?」

 その時にギンが速度強化の魔法を使用し、更に剣に魔力を纏わせ威力を強化する。

「な、何⁉」

 驚くブリードに対して剣で切り込みアーマープレートを破壊する。その衝撃が大きかったのかブリードは吐血して激しく狼狽する。

「ぐはぁぁっ!バ、バカな」
「ブリード様!」

 兵士に支えられるも立ち上がるのが精一杯のようではあるがギンに言葉を放つ。

「バカな、この俺がこんな若造に劣るとは、それに今のは魔法剣か……バンス様に報告せねばなるまい、皆の者引くぞ」

 ギンは逃がすまいと追撃を試みるが残存兵が弓を放ち、足止めされる。そのすきに他の兵と共に馬に乗ったブリードは戦場を離脱する。

「逃がしたか」

 そう呟くギンに対してムルカが声を掛ける。

「剣士殿、感謝いたす。ルルーと貴殿らが来なければ我らは全滅していたやも知れぬ」
「いえ、帝国は自分にとっても敵ですから。それよりさっきの指揮官が言ってたバンスとは確か帝国の将軍だったのでは?」
「うむ、帝国の動きが日に日に激化しておるのやも知れぬ。将軍の直属軍がよもやこのプレツに押し寄せてくるのだからな。司祭様がおっしゃていたあの計画を本格的に進めるやも知れぬ」
「あの計画?」

 ギンがムルカの発言に疑問を抱いていると、エイム達3人が戻って来る。そんな時、ルルーがムルカに声を掛ける。

「ムルカ様!ご無事でなによりです、お怪我はございませんか?」
「私は大丈夫だ。剣士殿は?」
「自分も大丈夫です。それよりムルカ殿……でいらしましたよね?あの計画とは?」
「とりあえず教会に戻るとしよう、あ、その前に私は将軍殿達に挨拶をしてくる」

 そう言ってムルカは将軍たちへの挨拶に砦へと向かっていった。

 ちょうどその頃、撤退したブリードは停泊させていた船に辿り着いた。そこで1人の男に声を掛けられる。

「ブリード!どうしたその傷は⁉」
「申し訳ございません、バンス様。砦の奪還に失敗しました」
「しかし、お前ほどの者がそれ程の傷を負うとは一体なにがあったのだ?」

 男の名はバンスといい、先程ギン達が話していたブロッス帝国の将軍だ。そのバンスに戦況を兵士が報告する。

「ご報告させていただきます。ブリード様は魔法剣を使う剣士と交戦し、深手を負われました。さらにミッツ教徒の男が多くの兵をなぎ倒し、同様のことをした者がいるとの報告がありました。更に強力な魔法を使う魔術師がいたとの報告もあります」
「何だと⁉」
「バンス将軍、いかがなさいますか?残りの戦力を投入してプレツ攻略を継続いたしますか」
「いや、敵に未知の戦力がいた以上、これ以上の深追いはいたずらに兵を失うだけだ。1度引きあげ陛下にこの事をご報告するぞ」

 バンスはそう言って、船の出発を急がせる。目的は本国への帰還だ。
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