もう1人の家族

文字数 963文字

 同盟交渉の旅で起きた出来事をミッツ教団司祭に報告していたルルーは、最後に魔法剣について尋ねていた。

「魔法剣についてですが司祭様はギン殿がかつて邪龍を倒した剣士の末裔であると考えているのですか?」

 ルルーの問いに司祭が返答をする。

「確証はありませんが私はそう思います。あの伝承自体はこの大陸に伝わるものではありますが、ルワール王国があった大陸に剣士が渡ったとしても不思議ではありません」
「確かにそれはあるかも知れません。伝承とこれまでの彼の戦いを重ねればそれほどの力を秘めていたとしても不思議ではないと思います」
「まあ、いずれにしても別の書物で調べてみる必要がありそうですね」

 司祭はギンがかつて邪龍を倒した剣士の末裔ではないかと考えてはいたものの、確証を得るために再度書物を調べなおすこととした。

 司祭の言葉を受け、ルルーが立ち去る旨を司祭に伝える。

「お手数をおかけしますがよろしくお願いします。では私は聖堂の方へ戻ります」
「ええ、あなたもゆっくり休んでください」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」

 そう言ってルルーはブライアンがいる聖堂の方へと戻っていく。

 ルルーが司祭に旅の報告をしている頃、ギンとエイムはスップの街を歩き回っていた。

 なにやらエイムがギンに話しかけているようだ。

「あのギンさん……」
「何だ?」
「ルルーさんもおっしゃていましたけど、話しづらかったのに話してくださってありがとうございます」
「その事か、いずれは話さなければならないとは思っていたが、タイミングが難しくてな」

 ギンの言葉を聞いてエイムが言葉を返す。

「それは仕方ないと思います。それでもギンさんがご自身から意を決して話してくださったんですから」
「エイム……、ついでだからもう1つ話しておこう。男の兄弟では俺が1番下だが、俺の下には妹がいたんだ」

 ギンが自らの妹の存在について打ち明けたことにエイムは驚きを隠せずにいた。それと共にある思いがよぎる。

「ギンさん、妹さんがいらしたんですか⁉あ、でももしかして……」
「そんなに気を使わなくていい、別に戦争に巻き込まれて命を落としたわけではない」
「それでは、今はどうされているんですか?」
「それは……」

 ギンは自らの兄弟が2人の兄とは別に、妹の存在を打ち明けた。彼の妹の現在は果たして……。
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