ぼっち姫、命を使い潰す決意をする。
文字数 2,456文字
これだよこれ。言ってみたかったんだ。
いつだったかリュミアが対峙した魔物に向かって言ってて痺れたね。あれはかっこよかった。
「愚かな娘セスティよ。無力さを実感し、我に向かって来た事を泣いて詫びよ!」
ライゴスはその巨大な斧を軽々と頭上でぐるんと回し、俺に向かって振り下ろした。
「姫ちゃん!!」
「姫、かわして下さい!」
おうおう、俺の事がそんなに信用できないもんかねぇ?
なら、安心していいって所を見せてやらないとな。
すっ。
振り下ろされた斧は、爆音を轟かせる事もなく、勿論俺も真っ二つにされてなどいない。
何事もなかったかのように俺の目の前で停止している。
「ば、馬鹿なっ! 貴様いったい何をした? 妖術か!?」
妖術ってお前……世界観どうなってんだよ。むしろ妖術って概念がお前ら魔物の間にあるのならご教授願いたいね。
「これはお前のためにやってるんだ。力量の差をはっきり分からせる為にな。俺はただお前が振り下ろした斧を人差し指と中指で挟んだだけだぜ?」
これにはデュクシ、ナーリアも言葉が出なかったらしい。
「貴様……一体どのような術をっ!? ぐぅ、離せっ!!」
だから術とかじゃないってば。
確かに涼しい顔でやってるけど、本当はめっちゃ力入れてるよ?入れてるけどさ、ただ本当に思い切り指二本で白刃取りしただけだぞ。
この体になってもこのくらいはできる。
「まだ力量の差が分からないのか? 泣いて謝るなら今のうちだぜ?」
「ふっ、強者と戦えるのならむしろ本望よ! ぬおぉぉぉぉっ!」
「あつっ!!」
突然ライゴスの斧が赤く光り、高熱を発した。
ちょっとだけ指が火傷したじゃないか!
思わず斧を離してしまい、ライゴスは斧を担ぎなおして距離を取る。
「恐ろしきかな小娘よ……いや、セスティと言ったか。お前は新たな魔王様の脅威になりえる。ここで、我が仕留める!」
ライゴスが自分の目の前の地面にその巨大な斧を突き立てる。
そして、目を閉じ集中すると……その斧の輝きがどんどん増していき、やがて炎に包まれる。
魔剣ならぬ魔斧ってところか。
しかしやはり魔法系の武器というのは基本炎なのか?作った者が安易に火を使いたがる傾向にあるんだろうか?
ライゴスは炎を纏わせた斧を先ほどよりも高速で回転させ、周囲に疾風を巻き起こす。
こりゃすごい。炎だけじゃなく風の属性まで操る武器か。ダブルなんて初めてみたぞ。
斧から発生した炎が、竜巻のように吹き荒れる。
「くらうがいい! 我が奥義! 風神炎斧!」
ライゴスが巨体に似合わずものすごい勢いで突進してきて、再び俺に斧を振り下ろす。
俺はその一撃を今度は受けずに半歩横にズレてかわす。手で受け止めたら熱いからやだ。
そしたら次の瞬間、地面に斧が触れたと同時に地面が爆発し、大量の爆炎が吹き荒れる風に乗って俺に襲い掛かった。
「……恐ろしい手合いであった。そこの二人、あの少女、セスティに感謝するのだな。命をかけてお前らに防御魔法をかけ、守ったのだから。セスティに免じてお前らの命はとらん。早々に立ち去るがいい」
「焦ったっす…これ姫ちゃんが防御魔法で防いでくれたんすね」
「姫が守ってくれなかったら私達は黒焦げでしたね」
その二人の言葉が随分軽かった事に違和感を覚えたのか、ライゴスが「まさか……」と呟く。
「おいこの炎いつまで立ち上ってんだよ。いい加減消えろこんちくしょう!」
俺を包み込んだ炎は燃え続け、炎の柱になっていた。
しばらく待っていたが、全然消える気配がないので仕方なく風の上級魔法を拳に乗せて炎の柱をぶち破った。
「ま、まさか無傷とは……。一つ確認したいのだが、セスティ、貴様は防御魔法の専門家か何かなのか?」
ライゴスの声が驚きから称賛に代わる。
「ん?いや、最近使えるようになっただけでむしろ苦手な方かな」
「はっはっはっはっは!素晴らしい。お前のような人間が居るとは……。しかしその力、ただの人間が自然に身に着けたとは思えぬな」
「うるせー。俺にもいろいろあったんだよ」
そう、この体になって膨大な魔力を手に入れた事もそうだし、それ以前、俺が鬼神と呼ばれるまでに強くなった事にも一言では語れぬ苦労があったんだよほんとに。思い出したくもねぇ。
「これは負けを認めざるを得ないな。セスティ、貴殿が思い切り我を殴ったとしたら、我はどうなる?」
「本気でやれば塵も残さねぇよ」
思い切り殺意を込めて睨んでやると、ライゴスは両手を上にあげて「まいった」と言い、笑った。
「何笑ってんだよ。降参すれば助かるとでも思ってるのか?」
「いや、気に障ったならすまぬ。貴殿のような強者と戦えて幸せだった。我はその一撃で死す事が出来るのならば、喜んでその拳をこの身に受けよう」
困ったな。
こういう奴、嫌いじゃないんだよなぁ。
敵とか味方とか強い弱いじゃなくて、純粋に自分を負かした相手に敬意を払える奴。
殺したくなくなってしまうじゃないか。
「さぁ、殺してくれ」
「一つ聞きたい。なんでお前だけで来た?魔物の群れはどうした?」
「……先日、この村に一度警告をしに来た後、魔王様から新たな命が下ったのだ。魔物の軍勢の指揮官を解くとな」
はぁ?
「じゃあお前は今指揮する立場に無いって事か?」
「そういう事になる。おそらく誰か別の者が新たな指揮官となっているであろうよ。おそらく、この村を滅ぼせという魔王様の命をすぐに実行しなかった事が逆鱗に触れたのだろう」
なるほど。じゃあこいつは勝手に村人に時間を与えて逃げる猶予を作ったってのか。魔王の命令に逆らってまで?
「ははは。お前、いいよ最高だ」
「何を言っている? もういいだろう。早く殺せ」
「嫌だね。お前の命は私が使い潰してやるわ♪」
いつだったかリュミアが対峙した魔物に向かって言ってて痺れたね。あれはかっこよかった。
「愚かな娘セスティよ。無力さを実感し、我に向かって来た事を泣いて詫びよ!」
ライゴスはその巨大な斧を軽々と頭上でぐるんと回し、俺に向かって振り下ろした。
「姫ちゃん!!」
「姫、かわして下さい!」
おうおう、俺の事がそんなに信用できないもんかねぇ?
なら、安心していいって所を見せてやらないとな。
すっ。
振り下ろされた斧は、爆音を轟かせる事もなく、勿論俺も真っ二つにされてなどいない。
何事もなかったかのように俺の目の前で停止している。
「ば、馬鹿なっ! 貴様いったい何をした? 妖術か!?」
妖術ってお前……世界観どうなってんだよ。むしろ妖術って概念がお前ら魔物の間にあるのならご教授願いたいね。
「これはお前のためにやってるんだ。力量の差をはっきり分からせる為にな。俺はただお前が振り下ろした斧を人差し指と中指で挟んだだけだぜ?」
これにはデュクシ、ナーリアも言葉が出なかったらしい。
「貴様……一体どのような術をっ!? ぐぅ、離せっ!!」
だから術とかじゃないってば。
確かに涼しい顔でやってるけど、本当はめっちゃ力入れてるよ?入れてるけどさ、ただ本当に思い切り指二本で白刃取りしただけだぞ。
この体になってもこのくらいはできる。
「まだ力量の差が分からないのか? 泣いて謝るなら今のうちだぜ?」
「ふっ、強者と戦えるのならむしろ本望よ! ぬおぉぉぉぉっ!」
「あつっ!!」
突然ライゴスの斧が赤く光り、高熱を発した。
ちょっとだけ指が火傷したじゃないか!
思わず斧を離してしまい、ライゴスは斧を担ぎなおして距離を取る。
「恐ろしきかな小娘よ……いや、セスティと言ったか。お前は新たな魔王様の脅威になりえる。ここで、我が仕留める!」
ライゴスが自分の目の前の地面にその巨大な斧を突き立てる。
そして、目を閉じ集中すると……その斧の輝きがどんどん増していき、やがて炎に包まれる。
魔剣ならぬ魔斧ってところか。
しかしやはり魔法系の武器というのは基本炎なのか?作った者が安易に火を使いたがる傾向にあるんだろうか?
ライゴスは炎を纏わせた斧を先ほどよりも高速で回転させ、周囲に疾風を巻き起こす。
こりゃすごい。炎だけじゃなく風の属性まで操る武器か。ダブルなんて初めてみたぞ。
斧から発生した炎が、竜巻のように吹き荒れる。
「くらうがいい! 我が奥義! 風神炎斧!」
ライゴスが巨体に似合わずものすごい勢いで突進してきて、再び俺に斧を振り下ろす。
俺はその一撃を今度は受けずに半歩横にズレてかわす。手で受け止めたら熱いからやだ。
そしたら次の瞬間、地面に斧が触れたと同時に地面が爆発し、大量の爆炎が吹き荒れる風に乗って俺に襲い掛かった。
「……恐ろしい手合いであった。そこの二人、あの少女、セスティに感謝するのだな。命をかけてお前らに防御魔法をかけ、守ったのだから。セスティに免じてお前らの命はとらん。早々に立ち去るがいい」
「焦ったっす…これ姫ちゃんが防御魔法で防いでくれたんすね」
「姫が守ってくれなかったら私達は黒焦げでしたね」
その二人の言葉が随分軽かった事に違和感を覚えたのか、ライゴスが「まさか……」と呟く。
「おいこの炎いつまで立ち上ってんだよ。いい加減消えろこんちくしょう!」
俺を包み込んだ炎は燃え続け、炎の柱になっていた。
しばらく待っていたが、全然消える気配がないので仕方なく風の上級魔法を拳に乗せて炎の柱をぶち破った。
「ま、まさか無傷とは……。一つ確認したいのだが、セスティ、貴様は防御魔法の専門家か何かなのか?」
ライゴスの声が驚きから称賛に代わる。
「ん?いや、最近使えるようになっただけでむしろ苦手な方かな」
「はっはっはっはっは!素晴らしい。お前のような人間が居るとは……。しかしその力、ただの人間が自然に身に着けたとは思えぬな」
「うるせー。俺にもいろいろあったんだよ」
そう、この体になって膨大な魔力を手に入れた事もそうだし、それ以前、俺が鬼神と呼ばれるまでに強くなった事にも一言では語れぬ苦労があったんだよほんとに。思い出したくもねぇ。
「これは負けを認めざるを得ないな。セスティ、貴殿が思い切り我を殴ったとしたら、我はどうなる?」
「本気でやれば塵も残さねぇよ」
思い切り殺意を込めて睨んでやると、ライゴスは両手を上にあげて「まいった」と言い、笑った。
「何笑ってんだよ。降参すれば助かるとでも思ってるのか?」
「いや、気に障ったならすまぬ。貴殿のような強者と戦えて幸せだった。我はその一撃で死す事が出来るのならば、喜んでその拳をこの身に受けよう」
困ったな。
こういう奴、嫌いじゃないんだよなぁ。
敵とか味方とか強い弱いじゃなくて、純粋に自分を負かした相手に敬意を払える奴。
殺したくなくなってしまうじゃないか。
「さぁ、殺してくれ」
「一つ聞きたい。なんでお前だけで来た?魔物の群れはどうした?」
「……先日、この村に一度警告をしに来た後、魔王様から新たな命が下ったのだ。魔物の軍勢の指揮官を解くとな」
はぁ?
「じゃあお前は今指揮する立場に無いって事か?」
「そういう事になる。おそらく誰か別の者が新たな指揮官となっているであろうよ。おそらく、この村を滅ぼせという魔王様の命をすぐに実行しなかった事が逆鱗に触れたのだろう」
なるほど。じゃあこいつは勝手に村人に時間を与えて逃げる猶予を作ったってのか。魔王の命令に逆らってまで?
「ははは。お前、いいよ最高だ」
「何を言っている? もういいだろう。早く殺せ」
「嫌だね。お前の命は私が使い潰してやるわ♪」