ぼっち姫、洪水に巻き込まれ毛玉を手に入れる。
文字数 2,204文字
「い、痛いですぅ……」
「うるせぇ! もう勝手に視るなよ!? 次はもっと強く叩くぞ!?」
ナーリアはしょんぼりしながら小さい声で「はぁい」と頷いた。
「それで、今度はお前だぞデュクシ」
「えっ、デュクシ? 俺の事はハーミットかカルゼって」
「いや、お前はデュクシだ。もう決めた」
「えー。姫ちゃんそりゃないっすよぉ」
さっきナーリアも言ってたけどその『姫ちゃん』ってのなんとかならんのか?
「お前がその呼び方を改める気がないならどうにもならん。セスティと呼ぶなら」
「デュクシでいいっす」
こんにゃろう。即答かよ……。
「まぁそれはいい。とにかくスキルを教えてくれ」
「あー、やっぱり言わないとまずいっすよねぇ?」
「ナーリアのスキルも大概だったから細かい事気にするな。下らねぇスキルでも何かの役に立つかもしれないだろ?」
そもそもスキルというものは自分で選ぶ事が出来ない。
自分が生まれつき持っているものだったり、経験や成長によって新たに己の中に発生する物だったりする。
ちなみに、自分がどんなスキルを持っているかというのは自分でも分からない。
ナーリアのスキャンはそういうのも分かるのだろうか?
通常どうやってスキルを認識するのかと言えば、簡単な話である。鑑定アイテムを使えばいい。
マジックアイテム屋などに行くと必ず置いてある羊皮紙のような物で、使用者はその紙に一分間程手を当てていればいい。
するとその紙にスキル名と詳細が浮き上がるという訳だ。
ごくまれに詳細不明スキルもあるが、ある程度の物については分かるようになっている。
「実は俺も三つスキルもってるんすけど、とりあえず一つ目は身体能力微向上っす」
身体能力を向上させる系統のスキルは使い勝手がいいし腐る事が無い。
しかし、微向上ってあたりがいかにもデュクシっぽい。
「それと、確率操作ってのがあります」
ん?なんか凄そうじゃないか?
「どんな内容なんだ?」
「それが……俺もイマイチ使い時が分かってないんすよ。とりあえずギャンブルなら負けないっす。サイコロ十回振って全部六出すとかもできるっすよ」
そりゃすげぇな。
……でも金稼ぎ以外にどう使うんだそれ。
使えるような使えないような……。
「んで最後は?」
「それが、何回調べても『運を天に任せる』ってのが出てくるんすけど、内容が『何かがおきる』しか書いてなくて」
なんじゃそりゃ。
またギャンブル系の能力って事か?
「俺も試してはみたんすよ。そしたら小銭拾ったりいきなり空から槍が降ってきたり……」
あぶねぇなオイ!
「お前そのスキル使うな。何が起きるか分からん物は事態が悪化する可能性があるしな」
「了解っす! 俺も怖くてもう二年くらい試してないんすよ」
しかし、結構な特殊スキルである。
まったく、これっぽっちも欲しいとは思わないが。
でも何が起きるか分からないっていうのはちょっと興味ある。
一回だけ試してみようかな。
「デュクシ、やっぱり一回だけ検証してみよう。今ここで使ってみろ」
「うへぇ……了解っす。ほんとにやっちゃいますよ? 何かあったら助けてくれるんすよね?」
「分かった分かった。なんとかすっからやってみろ」
「じゃあ、いくっす! 運天!」
うわ、だっせぇ!!
「あれ? 何も起きないですね?」
ナーリアが警戒しながら辺りをキョロキョロ見渡す。
「あ、でもちょっと地面揺れてませんか?」
お、確かに……地震を起こしたのか?
だとしたら規模はでかいが大したことない結果だな。
ぐごごごごっ
めきめきめきっ!!
「ひ、姫ちゃんこれなんの音っすか?」
ごきゅごっきゅめきめきっ!
妙な音はどんどん激しさを増して、もう騒音ってレベルになってきた。
森が揺れている。
一斉に鳥たちが飛び立ち、魔物達が騒がしくあちこち走り回る。
「おいおいおい、こりゃちょっとまずいかもしれねぇぞ」
その言葉を言い終わる直前くらいだったか。
目の前が水で埋め尽くされた。
「うおっ!? 二人ともこっちこい! 俺につかまれ!!」
慌てて俺はアシュリーからもらった転移アイテムで王都まで戻ってきた。
「お前ら無事か!?」
「は、はいっ!はぁ、はぁ……」
「こらナーリア、どこ触ってんだてめぇもう離れろ!」
油断も隙もねぇ!!
「お、俺も無事っす……。今の、なんだったんすか?」
「津波か洪水か……。周りに海もねぇのに突如森に大量の鉄砲水か。デュクシ、アレはもう絶対使うな」
「う、うっす。絶対使わないっす!」
ほんとこいつら使えるのか使えねぇのか全然わからん!
それにしてもあの森、今頃どうなってる事やら……。
魔物はかなり被害を受けただろうし、森自体もかなり木がなぎ倒されたんじゃないだろうか。
別にだからと言って俺達に何かを弁償しろとか言って来る奴もいないし問題ないのだが、ちょっとだけ罪悪感がある。
きっと普通の動物たちも居ただろうし。
私は動物は好き。可愛いから。
「ぷっきゅきゅーい♪」
ドタバタで転移に巻き込まれたのか、私の背中に可愛い毛玉がくっついていた。
「うるせぇ! もう勝手に視るなよ!? 次はもっと強く叩くぞ!?」
ナーリアはしょんぼりしながら小さい声で「はぁい」と頷いた。
「それで、今度はお前だぞデュクシ」
「えっ、デュクシ? 俺の事はハーミットかカルゼって」
「いや、お前はデュクシだ。もう決めた」
「えー。姫ちゃんそりゃないっすよぉ」
さっきナーリアも言ってたけどその『姫ちゃん』ってのなんとかならんのか?
「お前がその呼び方を改める気がないならどうにもならん。セスティと呼ぶなら」
「デュクシでいいっす」
こんにゃろう。即答かよ……。
「まぁそれはいい。とにかくスキルを教えてくれ」
「あー、やっぱり言わないとまずいっすよねぇ?」
「ナーリアのスキルも大概だったから細かい事気にするな。下らねぇスキルでも何かの役に立つかもしれないだろ?」
そもそもスキルというものは自分で選ぶ事が出来ない。
自分が生まれつき持っているものだったり、経験や成長によって新たに己の中に発生する物だったりする。
ちなみに、自分がどんなスキルを持っているかというのは自分でも分からない。
ナーリアのスキャンはそういうのも分かるのだろうか?
通常どうやってスキルを認識するのかと言えば、簡単な話である。鑑定アイテムを使えばいい。
マジックアイテム屋などに行くと必ず置いてある羊皮紙のような物で、使用者はその紙に一分間程手を当てていればいい。
するとその紙にスキル名と詳細が浮き上がるという訳だ。
ごくまれに詳細不明スキルもあるが、ある程度の物については分かるようになっている。
「実は俺も三つスキルもってるんすけど、とりあえず一つ目は身体能力微向上っす」
身体能力を向上させる系統のスキルは使い勝手がいいし腐る事が無い。
しかし、微向上ってあたりがいかにもデュクシっぽい。
「それと、確率操作ってのがあります」
ん?なんか凄そうじゃないか?
「どんな内容なんだ?」
「それが……俺もイマイチ使い時が分かってないんすよ。とりあえずギャンブルなら負けないっす。サイコロ十回振って全部六出すとかもできるっすよ」
そりゃすげぇな。
……でも金稼ぎ以外にどう使うんだそれ。
使えるような使えないような……。
「んで最後は?」
「それが、何回調べても『運を天に任せる』ってのが出てくるんすけど、内容が『何かがおきる』しか書いてなくて」
なんじゃそりゃ。
またギャンブル系の能力って事か?
「俺も試してはみたんすよ。そしたら小銭拾ったりいきなり空から槍が降ってきたり……」
あぶねぇなオイ!
「お前そのスキル使うな。何が起きるか分からん物は事態が悪化する可能性があるしな」
「了解っす! 俺も怖くてもう二年くらい試してないんすよ」
しかし、結構な特殊スキルである。
まったく、これっぽっちも欲しいとは思わないが。
でも何が起きるか分からないっていうのはちょっと興味ある。
一回だけ試してみようかな。
「デュクシ、やっぱり一回だけ検証してみよう。今ここで使ってみろ」
「うへぇ……了解っす。ほんとにやっちゃいますよ? 何かあったら助けてくれるんすよね?」
「分かった分かった。なんとかすっからやってみろ」
「じゃあ、いくっす! 運天!」
うわ、だっせぇ!!
「あれ? 何も起きないですね?」
ナーリアが警戒しながら辺りをキョロキョロ見渡す。
「あ、でもちょっと地面揺れてませんか?」
お、確かに……地震を起こしたのか?
だとしたら規模はでかいが大したことない結果だな。
ぐごごごごっ
めきめきめきっ!!
「ひ、姫ちゃんこれなんの音っすか?」
ごきゅごっきゅめきめきっ!
妙な音はどんどん激しさを増して、もう騒音ってレベルになってきた。
森が揺れている。
一斉に鳥たちが飛び立ち、魔物達が騒がしくあちこち走り回る。
「おいおいおい、こりゃちょっとまずいかもしれねぇぞ」
その言葉を言い終わる直前くらいだったか。
目の前が水で埋め尽くされた。
「うおっ!? 二人ともこっちこい! 俺につかまれ!!」
慌てて俺はアシュリーからもらった転移アイテムで王都まで戻ってきた。
「お前ら無事か!?」
「は、はいっ!はぁ、はぁ……」
「こらナーリア、どこ触ってんだてめぇもう離れろ!」
油断も隙もねぇ!!
「お、俺も無事っす……。今の、なんだったんすか?」
「津波か洪水か……。周りに海もねぇのに突如森に大量の鉄砲水か。デュクシ、アレはもう絶対使うな」
「う、うっす。絶対使わないっす!」
ほんとこいつら使えるのか使えねぇのか全然わからん!
それにしてもあの森、今頃どうなってる事やら……。
魔物はかなり被害を受けただろうし、森自体もかなり木がなぎ倒されたんじゃないだろうか。
別にだからと言って俺達に何かを弁償しろとか言って来る奴もいないし問題ないのだが、ちょっとだけ罪悪感がある。
きっと普通の動物たちも居ただろうし。
私は動物は好き。可愛いから。
「ぷっきゅきゅーい♪」
ドタバタで転移に巻き込まれたのか、私の背中に可愛い毛玉がくっついていた。