ぼっち姫、合体を提案する。
文字数 2,264文字
作ってもらった身分証がよほど気に入ったのか、町を出てからもめりにゃんは手にそれを握りしめて数分置きにちらちら眺めてはにやにやと顔を綻ばせている。
ライゴスは勿論そんなめりにゃんの頭の上だ。
外を移動する時くらいそのままでもいいじゃないかとライゴスはぶつぶつ言っていたが、ナランまではずっと大通りを通っていく事になるので人目に付くのはまずいのだ。
諦めてもらうしかない。念には念を、というやつである。
ナーリアとデュクシについてはくだらない小競り合いというか言い合いをしていて、時折静かになったかと思えば二人で戦う際の打ち合わせなんかをしている。
意外といいコンビなんだよなぁ。
どうせ今日はどこかで野営をする事になるだろうからその時にでも二人にちょっと戦い方について軽く講義してやろうか。
ナランの街まで行くには馬車で約三日。
俺達が急いでいると言うとプルットが馬車を用意してくれたのだが、御者に関しては人手不足で用意できなかったとの事。
仕方ないので馬車の操縦経験のある俺が御者の真似事をしているという訳だ。
しかしこの馬車を借りてしまったが為に、尚更プルットの頼みを断る訳にはいかなくなってしまった。
ナランの街に到着したらまずはジャックスという男を訪ねるようにプルットに言われている。
既にその男には話が通っているらしく、なんでもそのジャックスという奴が奴隷商人についての情報を持っているのだとか。
一応ある程度潜伏先などを絞り込めているのならば大丈夫だろうとは思うが、出来る限りそこでの面倒事はさっさと済ませて本来の目的を果たしたいところだ。
むしろ奴隷商人の件は俺が単独で動いて、デュクシとナーリアにはリュミアについての情報を収集してもらうという流れの方が効率がいいかもしれない。
そんな事を考えながらひたすら道を馬車で進んでいると、めりにゃんが「おなかすいたのじゃー」とわめき出したので、草原が広がっている場所まで移動し、少しだけ道からそれて馬車を止める。
あらかじめプルットからしばらく分の食糧を貰っているので、日持ちのしそうに無い物から消費していく事にした。
干し肉や乾物の類は後回しでいいだろう。
今日の所は、何故旅人にこんな物を持たせたのか分からないが生肉が結構な量あったので、傷んでしまう前に消費しないといけない。
とりあえずプルットが用意してくれた備品の中から薪を取り出してデュクシの魔剣で着火。
今度は力加減もよくできている。
皆で薪を囲みながら肉を焼いて食べる。
たまにはこういうのも悪くないもんだ。特に、めりにゃんが加わった事もあって野営はとても賑やかな物になった。
さらに言えば今回は馬車の中で眠る事も出来るし至れり尽くせりというやつである。
難点があるとしたら、全員が横になるには少々狭いという事か。
それでも交代制で誰かが一人見張りをする事を考えたら問題無いだろう。
わいわいやりながら食事を終えた所で、俺はデュクシとナーリアに声をかけた。
「ちょっとお前らに今後の戦い方のアドバイスをしてやろうと思ってな」
「おっ、ほんとに教えてくれるんすね!」
「こんな奴は放っておいて私にいろいろ教えてほしいです!!」
二人の食いつきが激しすぎてちょっと怖い。
めりにゃんは「ご飯食べたら眠くなったのじゃー」とか言いながらフラフラと馬車へ向かう。
あれで本当に元魔王様だったのかねぇ。ただの子供にしか思えないが、だからこその純粋さなのだろう。
「めりにゃん、寝るならちゃんと毛布かけるんだぞ」
「わかったのじゃー」
彼女はこちらを振り向く事なく手をぴらぴら振りながら馬車に吸い込まれていった。
まったく。子育てしてる気分になってくるぜ……。
「で、だ。とりあえずデュクシ。お前の確率操作が他人にも作用するのかどうかを調べたい」
察しの悪いこの男は、「どういう事っすかね?」と言いながら首を傾げた。
「まぁいいから。とりあえず確率操作を発動してみろ。俺が今から石を投げるから、あそこの岩に当たるようにしてみせろ」
俺は茂みの中からちょっと出っ張っている岩を指さし、デュクシにスキルを発動させる。
そして適当に小石を投げてみる。
かこんっ。
「一応当たるな。もっと試してみよう」
その後十回ほど試してみたが全部その岩に小石が当たる。
念の為にその後目を瞑って同じ事をもう十回繰り返す。
「……なるほどな。お前のそのスキルは思ったより使えるな」
「ど、どういう意味っすかね?」
この察しの悪い馬鹿とは違ってナーリアはすぐにその実用性に気付いたようだ。
「つまり、この馬鹿にスキルを使ってもらえば私のスキルは必中になるんですね」
「あっ、そーいう事っすか!?」
まぁどっちみちデュクシの確率操作で命中させる事が出来るならナーリアのほぼ必中が死にスキルになってしまうが、単体で戦う時には必要になる物なのだから問題無い。
「これは二人で戦う時に使えるから覚えておけよ? それと、次なんだが……」
これは実際出来るかどうかが微妙な所だ。
結構繊細なコントロールが必要になるかもしれないが、出来るようになれば攻撃力がかなり上がる事になる。
「お前ら、合体しろ」
その瞬間、二人は顔を合わせて、今まで見た事の無いくらいクシャクシャな顔になった。
ライゴスは勿論そんなめりにゃんの頭の上だ。
外を移動する時くらいそのままでもいいじゃないかとライゴスはぶつぶつ言っていたが、ナランまではずっと大通りを通っていく事になるので人目に付くのはまずいのだ。
諦めてもらうしかない。念には念を、というやつである。
ナーリアとデュクシについてはくだらない小競り合いというか言い合いをしていて、時折静かになったかと思えば二人で戦う際の打ち合わせなんかをしている。
意外といいコンビなんだよなぁ。
どうせ今日はどこかで野営をする事になるだろうからその時にでも二人にちょっと戦い方について軽く講義してやろうか。
ナランの街まで行くには馬車で約三日。
俺達が急いでいると言うとプルットが馬車を用意してくれたのだが、御者に関しては人手不足で用意できなかったとの事。
仕方ないので馬車の操縦経験のある俺が御者の真似事をしているという訳だ。
しかしこの馬車を借りてしまったが為に、尚更プルットの頼みを断る訳にはいかなくなってしまった。
ナランの街に到着したらまずはジャックスという男を訪ねるようにプルットに言われている。
既にその男には話が通っているらしく、なんでもそのジャックスという奴が奴隷商人についての情報を持っているのだとか。
一応ある程度潜伏先などを絞り込めているのならば大丈夫だろうとは思うが、出来る限りそこでの面倒事はさっさと済ませて本来の目的を果たしたいところだ。
むしろ奴隷商人の件は俺が単独で動いて、デュクシとナーリアにはリュミアについての情報を収集してもらうという流れの方が効率がいいかもしれない。
そんな事を考えながらひたすら道を馬車で進んでいると、めりにゃんが「おなかすいたのじゃー」とわめき出したので、草原が広がっている場所まで移動し、少しだけ道からそれて馬車を止める。
あらかじめプルットからしばらく分の食糧を貰っているので、日持ちのしそうに無い物から消費していく事にした。
干し肉や乾物の類は後回しでいいだろう。
今日の所は、何故旅人にこんな物を持たせたのか分からないが生肉が結構な量あったので、傷んでしまう前に消費しないといけない。
とりあえずプルットが用意してくれた備品の中から薪を取り出してデュクシの魔剣で着火。
今度は力加減もよくできている。
皆で薪を囲みながら肉を焼いて食べる。
たまにはこういうのも悪くないもんだ。特に、めりにゃんが加わった事もあって野営はとても賑やかな物になった。
さらに言えば今回は馬車の中で眠る事も出来るし至れり尽くせりというやつである。
難点があるとしたら、全員が横になるには少々狭いという事か。
それでも交代制で誰かが一人見張りをする事を考えたら問題無いだろう。
わいわいやりながら食事を終えた所で、俺はデュクシとナーリアに声をかけた。
「ちょっとお前らに今後の戦い方のアドバイスをしてやろうと思ってな」
「おっ、ほんとに教えてくれるんすね!」
「こんな奴は放っておいて私にいろいろ教えてほしいです!!」
二人の食いつきが激しすぎてちょっと怖い。
めりにゃんは「ご飯食べたら眠くなったのじゃー」とか言いながらフラフラと馬車へ向かう。
あれで本当に元魔王様だったのかねぇ。ただの子供にしか思えないが、だからこその純粋さなのだろう。
「めりにゃん、寝るならちゃんと毛布かけるんだぞ」
「わかったのじゃー」
彼女はこちらを振り向く事なく手をぴらぴら振りながら馬車に吸い込まれていった。
まったく。子育てしてる気分になってくるぜ……。
「で、だ。とりあえずデュクシ。お前の確率操作が他人にも作用するのかどうかを調べたい」
察しの悪いこの男は、「どういう事っすかね?」と言いながら首を傾げた。
「まぁいいから。とりあえず確率操作を発動してみろ。俺が今から石を投げるから、あそこの岩に当たるようにしてみせろ」
俺は茂みの中からちょっと出っ張っている岩を指さし、デュクシにスキルを発動させる。
そして適当に小石を投げてみる。
かこんっ。
「一応当たるな。もっと試してみよう」
その後十回ほど試してみたが全部その岩に小石が当たる。
念の為にその後目を瞑って同じ事をもう十回繰り返す。
「……なるほどな。お前のそのスキルは思ったより使えるな」
「ど、どういう意味っすかね?」
この察しの悪い馬鹿とは違ってナーリアはすぐにその実用性に気付いたようだ。
「つまり、この馬鹿にスキルを使ってもらえば私のスキルは必中になるんですね」
「あっ、そーいう事っすか!?」
まぁどっちみちデュクシの確率操作で命中させる事が出来るならナーリアのほぼ必中が死にスキルになってしまうが、単体で戦う時には必要になる物なのだから問題無い。
「これは二人で戦う時に使えるから覚えておけよ? それと、次なんだが……」
これは実際出来るかどうかが微妙な所だ。
結構繊細なコントロールが必要になるかもしれないが、出来るようになれば攻撃力がかなり上がる事になる。
「お前ら、合体しろ」
その瞬間、二人は顔を合わせて、今まで見た事の無いくらいクシャクシャな顔になった。