ぼっち姫、敗北。
文字数 2,204文字
「と、とにかく! ニーラクの村の方が心配だ。用が済んだ事だし早くここから出よう」
「にーらく?」
そうか、その辺の事をめりにゃんに何も説明してなかった。
俺はかいつまんで今までの経緯を説明する。
「つまり、セスティの仲間がいる村が今頃魔物に襲われてるかもしれないんじゃな?」
「そういう事だ。だからすぐに戻らないと」
しかし、俺は途中から落とし穴で一気に下まで落ちてきたので正しい順路がわからない。
そのあたりはメディファスが案内してくれるかもしれないな。
いや、それよりすぐに転移アイテムを使って帰るか。
その方が早いし、万が一の場合もあるから急いだ方がいいだろう。
俺は懐から転移アイテムを
転移アイテムを……あれ?
無い。無いぞ!?
あ、そうだ。メディファスのよくわからんレーザーで腕が吹っ飛んだ時に落としたんだった。
慌てて地面に目をやり、粉が散らばっている辺りをよく探してみる。
と、だ。
「おいおいおい冗談だろ……?」
転移用の球体は落下の衝撃でヒビだらけになっていた。
拾って使えるか試してみるが全く反応が無い。
もう転移は使えない。
まずいな。
「おいメディファス。お前こいつを直せるか?」
『解析……否定。これはかなり特殊な精製方法を用いた道具のようです。可能ではあるでしょうが時間をかけた解析が必要になります』
「どのくらいかかる?」
『およそ三十時間ほどあれば』
つっかえねぇなぁおい!
そこで、ふと思いつく。
そうだ。わざわざ転移アイテムなんか使わなくてもいいかもしれない。
「おいメディファス! お前転移はできるか?」
『否定。我はここにて主が現れるのを待つ存在ですので勝手にどこかへ行くことのないよう転移系の力は与えられておりません。もとよりここを単独で離れるような事があれば消滅してしまいますので』
つっかえねぇぇぇぇ!!
「じゃあ出口までの案内をしろ! すぐにだ」
『了解。それは可能です。しかし、問題が発生』
なんだなんだ今度は一体なんだってんだ畜生。
『ここは特別な力で守られた空間です。本来ならば我が主と認めたその時点で外への道が開かれる筈なのですが……』
その言葉を聞き終わる前に辺りを見渡してみるが、確かに俺たちが入ってきた場所はまだ塞がれたままだ。
「出るにはどうすればいい?」
『思案。おそらく我とこの空間が切り離された事により防衛機能が誤作動を起こしている可能性が高いです』
「そんな事はいい。出るにはどうすればいい? あの壁を早く」
『……修復作業に入ります。尚、この作業完了までには時間をする場合が……』
「ならあの壁をぶち抜けばいいんだろ? それなら俺が……」
『この空間は特別と申し上げた筈。正規の方法以外で開く事はありません』
くそがっ!!
マジで使えねぇなこいつ。
何がアーティファクトだよ。
すげぇ力があったってこれじゃ意味がないじゃないか。
勿論村が今襲われているとは限らない。
だが、今の俺にはそれを知る手段が無い。
こんな状態のままただ待ってるだけなんて……。
「セスティ、よく分らんのじゃが、要はその村の様子が分かればいいんじゃな?」
めりにゃんが近くまでとてとて歩いてきて俺の手を取った。
「お、おう。だけど……」
「おいメディファスとやら。儂の力を今ここで開放してほしいのじゃ」
何を?
不思議そうに見ていた事に気付いためりにゃんが、「それくらいなら儂にもできるのじゃ♪」と俺にニコッと笑いかけた。
『ではヒルデガルダ・メリニャンの封印を一時的に緩和致します。我が主、ヒルデガルダ・メリニャンの手を離さないで下さい』
俺の体を通してめりにゃんにかけられた呪いを緩和するという事か。
俺の手が輝くと、めりにゃんの掌が輝き、そしてその全身が光り輝く。
めりにゃんの身長がぐんぐん伸びて……
ぐんぐん、伸びて、止まる。
俺より少し小さいくらいの身長で。
「めりにゃん、本当の姿もそこまで大きくはないんだな」
「うっ、うるさいのじゃっ! ちゃんとさっきよりはいろいろ大きくなっておるじゃろ?」
……確かに。
今までせいぜい十歳程度だった外見は、十四歳くらいまでには成長しただろうか。
ほんの少し顔が大人びたが、それよりも大きな変化がいくつかある。
尻尾はそのままだが、額の角は割と大きくなっていて、背中の羽根も今までの倍以上のサイズに進化している。
そして、何より、何より、だ。
「お、おいセスティ、どこ見とるんじゃっ。あんまり、じろじろ見られたら恥ずかしいのじゃ……」
そう言ってめりにゃんは開いている方の腕で胸のあたりを隠す。
俺は自分についている物とめりにゃんのそれを見比べてみた。
なんだろう。
なんだこのとてつもない敗北感。
めりにゃんのそれは、私のそれよりも
おおきかった。
「……スティ。おい、セスティ! 聞いておるのか?」
「はっ、あ、あぁすまん。ちょっと取り乱していた」
「ほほう。本来の儂の姿に見とれていたのかのう?儂も罪な女じゃなぁ♪」
その通りだ、とは言わないでおこう。
悔しいから。
「にーらく?」
そうか、その辺の事をめりにゃんに何も説明してなかった。
俺はかいつまんで今までの経緯を説明する。
「つまり、セスティの仲間がいる村が今頃魔物に襲われてるかもしれないんじゃな?」
「そういう事だ。だからすぐに戻らないと」
しかし、俺は途中から落とし穴で一気に下まで落ちてきたので正しい順路がわからない。
そのあたりはメディファスが案内してくれるかもしれないな。
いや、それよりすぐに転移アイテムを使って帰るか。
その方が早いし、万が一の場合もあるから急いだ方がいいだろう。
俺は懐から転移アイテムを
転移アイテムを……あれ?
無い。無いぞ!?
あ、そうだ。メディファスのよくわからんレーザーで腕が吹っ飛んだ時に落としたんだった。
慌てて地面に目をやり、粉が散らばっている辺りをよく探してみる。
と、だ。
「おいおいおい冗談だろ……?」
転移用の球体は落下の衝撃でヒビだらけになっていた。
拾って使えるか試してみるが全く反応が無い。
もう転移は使えない。
まずいな。
「おいメディファス。お前こいつを直せるか?」
『解析……否定。これはかなり特殊な精製方法を用いた道具のようです。可能ではあるでしょうが時間をかけた解析が必要になります』
「どのくらいかかる?」
『およそ三十時間ほどあれば』
つっかえねぇなぁおい!
そこで、ふと思いつく。
そうだ。わざわざ転移アイテムなんか使わなくてもいいかもしれない。
「おいメディファス! お前転移はできるか?」
『否定。我はここにて主が現れるのを待つ存在ですので勝手にどこかへ行くことのないよう転移系の力は与えられておりません。もとよりここを単独で離れるような事があれば消滅してしまいますので』
つっかえねぇぇぇぇ!!
「じゃあ出口までの案内をしろ! すぐにだ」
『了解。それは可能です。しかし、問題が発生』
なんだなんだ今度は一体なんだってんだ畜生。
『ここは特別な力で守られた空間です。本来ならば我が主と認めたその時点で外への道が開かれる筈なのですが……』
その言葉を聞き終わる前に辺りを見渡してみるが、確かに俺たちが入ってきた場所はまだ塞がれたままだ。
「出るにはどうすればいい?」
『思案。おそらく我とこの空間が切り離された事により防衛機能が誤作動を起こしている可能性が高いです』
「そんな事はいい。出るにはどうすればいい? あの壁を早く」
『……修復作業に入ります。尚、この作業完了までには時間をする場合が……』
「ならあの壁をぶち抜けばいいんだろ? それなら俺が……」
『この空間は特別と申し上げた筈。正規の方法以外で開く事はありません』
くそがっ!!
マジで使えねぇなこいつ。
何がアーティファクトだよ。
すげぇ力があったってこれじゃ意味がないじゃないか。
勿論村が今襲われているとは限らない。
だが、今の俺にはそれを知る手段が無い。
こんな状態のままただ待ってるだけなんて……。
「セスティ、よく分らんのじゃが、要はその村の様子が分かればいいんじゃな?」
めりにゃんが近くまでとてとて歩いてきて俺の手を取った。
「お、おう。だけど……」
「おいメディファスとやら。儂の力を今ここで開放してほしいのじゃ」
何を?
不思議そうに見ていた事に気付いためりにゃんが、「それくらいなら儂にもできるのじゃ♪」と俺にニコッと笑いかけた。
『ではヒルデガルダ・メリニャンの封印を一時的に緩和致します。我が主、ヒルデガルダ・メリニャンの手を離さないで下さい』
俺の体を通してめりにゃんにかけられた呪いを緩和するという事か。
俺の手が輝くと、めりにゃんの掌が輝き、そしてその全身が光り輝く。
めりにゃんの身長がぐんぐん伸びて……
ぐんぐん、伸びて、止まる。
俺より少し小さいくらいの身長で。
「めりにゃん、本当の姿もそこまで大きくはないんだな」
「うっ、うるさいのじゃっ! ちゃんとさっきよりはいろいろ大きくなっておるじゃろ?」
……確かに。
今までせいぜい十歳程度だった外見は、十四歳くらいまでには成長しただろうか。
ほんの少し顔が大人びたが、それよりも大きな変化がいくつかある。
尻尾はそのままだが、額の角は割と大きくなっていて、背中の羽根も今までの倍以上のサイズに進化している。
そして、何より、何より、だ。
「お、おいセスティ、どこ見とるんじゃっ。あんまり、じろじろ見られたら恥ずかしいのじゃ……」
そう言ってめりにゃんは開いている方の腕で胸のあたりを隠す。
俺は自分についている物とめりにゃんのそれを見比べてみた。
なんだろう。
なんだこのとてつもない敗北感。
めりにゃんのそれは、私のそれよりも
おおきかった。
「……スティ。おい、セスティ! 聞いておるのか?」
「はっ、あ、あぁすまん。ちょっと取り乱していた」
「ほほう。本来の儂の姿に見とれていたのかのう?儂も罪な女じゃなぁ♪」
その通りだ、とは言わないでおこう。
悔しいから。