ぼっち姫、マリスにドン引く。
文字数 2,378文字
「我の命を使い潰す……何か利用価値あるとでも言いたげであるな」
「馬鹿言うなよ。利用じゃなくて協力さ」
デュクシとナーリアは俺の言いたい事に気付いたらしく露骨に大きなため息をついた。
「なんだ、どういう意味だ?」
ちょっとだけライゴスが焦っている。
これから自分がどうなってしまうのかと不安なのだろう。
何も取って食ったりしないのにな。
「俺はお前に勝った。だが命は取らない」
「何故だ。お前にとって俺は敵であり、先ほども命を使い潰すと言っていたではないか。あれは殺すとは違う意味なのであるか?」
「おうよ。負けたお前の命は勝った俺のもんだ。だから俺の役に立て」
ライゴスは思い切り眉間に皺を寄せて俺の言っている言葉の意味を探る。
「つまり、セスティは我に味方になれ、と言うのか? 魔王軍の幹部であるこのイオン・ライゴスに? 正気であるか?」
「正気も正気よ。お前は殺すには惜しいからな。使えるもんはなんだって使ってやるさ」
「ふむ……我を負かした相手の軍門に下るというのは悪い話ではないのであるが……それは叶わぬであろうよ」
これだけお堅い奴なら魔王に心からの忠誠でも誓ってるのかもしれないな。
「魔王を裏切るのは嫌か?」
「いや、そうではない。今の魔王は……我が忠誠を誓うに値しないのは確かである。だが、我には、我等魔王軍幹部には等しく魔王の呪いがかけられておるのだ」
また呪いか。
もう呪いはうんざりだ。
俺は念のためにライゴスに呪いの内容を聞いた。
「簡単な話だ。我が魔王軍に牙を剥くような事があればこの首輪が我の頭と胴体を切り離すであろう。この首輪は我等にはどうする事もできぬ。それはセスティ、お前でも同じ事であろう」
確かにライゴスの首にはぶっとくていかついオシャレさのかけらもない首輪が嵌っている。
「動くなよ」
俺は剣を抜き、思い切りライゴスの首輪目掛けて降り抜いた。
ガギイィン!
俺の剣先三センチほどが、首輪に当たった衝撃で折れ、宙を舞った。
「お主でもこれを破壊する事はできなんだか。そういう事だ、下らん考えは捨てて我を屠れ」
気に入らねぇな。
気に入らねぇよ。
こうでもしないと魔王様って野郎は自分の仲間を従わせる事もできねぇのか?
「ぷっきゅっきゅきゅい♪」
今まで大人しくしていたマリスが頭の上でぴょこぴょことリボンを揺らす。
「セスティ、一応聞くがそれはなんだ? 我にはリボンが喋ったようにしか見えなんだが」
「その通りだよ。こいつはマリスって言ってな。俺の仲間さ」
「いや、しかしそのような魔物は見た事も……うおぉっ!」
ライゴスの言葉が終わる前に、俺の頭上のリボンが突如巨大化してライゴスの頭に噛み付いた。
「ま、マリス…?」
形状変化して真っ赤な塊となったマリスは俺の頭から体を伸ばし、ライゴスの頭ごと包み込んでボリボリと噛み砕いた。
「おい、マリス……なんて事しやがる」
俺とした事が一瞬、ほんの一瞬だがマリスに殺意を向けてしまった。
この毛玉、そしてリボンである可愛いマリスも所詮魔物だったのかと、俺はがっかりして、まだいい戦友になれそうだったライゴスの胴体を眺めた。
ライゴスの胴体の方はまだビクビクと動いている。
マリスが俺の目の前でライゴスを生きたまま食った。
「ひ、姫……早くマリスから離れて下さい!」
「あぶないっすよ!!」
二人もこの状況に一瞬言葉を失っていたが、すぐに俺に危険を促してきた。
危険な魔物という事が証明されてしまっては俺も放置する訳にはいかない。
悲しみと、怒りと、そして少しの間一緒に行動したという意味で愛を込めて、俺が殺してやらなければ。
「おぉぉぉっ!! なんなのだこれは!? なんなのだこれはっ!?」
…へ?
マリスにすっぽりと包まれた頭はそのままだが、胴体がじたばたと暴れだす。
そして、確かにライゴスの声が聞こえた。
やがて、ごきゅり。と何かを飲み込む音がしたと思ったらマリスは一瞬で元のリボンに戻ってしまった。
「げぷぅー♪」
「い、いったい今のはなんだったのであるか……。生きた心地がしなかったのである」
「生きてた、のか……。ん? おい、お前首輪が……」
俺の言葉にライゴスが自分の首をわさわさと触る。
「ない、無いのである!! 首輪が……一体お主のそれはなんなのであるか!? 我や他の幹部たちは勿論お主でさえ壊せなかった首輪をいとも簡単に食ってしまうとは……」
「……はは、こいつは俺の最高の相棒だよ。疑ってわるかったな」
俺はさっきマリスに対して相当ひどい勘違いをしてしまった事を詫び、リボンをそっと撫でてやった。
「ぷっきゅ♪」
リボンがゆらゆら動いて俺の指にすりすりとその身をこすりつけてくる。
本当に小動物かなにかのようだ。
めっちゃかわいい。
「どういう事か分らぬが……何にせよこれで我を縛る呪いは消えた。提案通り、我はお主を主と認めよう。この命、好きに使うといいのである」
ライゴスはその大きな体をできる限り小さく丸め、地面に片膝をついた。
「そういうのいいって。俺はお前を無理やり従わせたいんじゃない。あくまでお前の自由意思で俺を手伝え。嫌ならどっかいっていいからよ」
「ふん。性格の悪い事だ。魔王への忠誠の証とも言える首輪を壊され、我にどこへ行けと? それに、我は一度死んだ身である。生憎と今の我にはお主に忠義を尽くす事しかする事がないのである」
そういってライゴスがくしゃっと笑った。
ライオンみたいな顔だからさ、にこやかに笑うと無駄に可愛いんだよなこいつ。
「馬鹿言うなよ。利用じゃなくて協力さ」
デュクシとナーリアは俺の言いたい事に気付いたらしく露骨に大きなため息をついた。
「なんだ、どういう意味だ?」
ちょっとだけライゴスが焦っている。
これから自分がどうなってしまうのかと不安なのだろう。
何も取って食ったりしないのにな。
「俺はお前に勝った。だが命は取らない」
「何故だ。お前にとって俺は敵であり、先ほども命を使い潰すと言っていたではないか。あれは殺すとは違う意味なのであるか?」
「おうよ。負けたお前の命は勝った俺のもんだ。だから俺の役に立て」
ライゴスは思い切り眉間に皺を寄せて俺の言っている言葉の意味を探る。
「つまり、セスティは我に味方になれ、と言うのか? 魔王軍の幹部であるこのイオン・ライゴスに? 正気であるか?」
「正気も正気よ。お前は殺すには惜しいからな。使えるもんはなんだって使ってやるさ」
「ふむ……我を負かした相手の軍門に下るというのは悪い話ではないのであるが……それは叶わぬであろうよ」
これだけお堅い奴なら魔王に心からの忠誠でも誓ってるのかもしれないな。
「魔王を裏切るのは嫌か?」
「いや、そうではない。今の魔王は……我が忠誠を誓うに値しないのは確かである。だが、我には、我等魔王軍幹部には等しく魔王の呪いがかけられておるのだ」
また呪いか。
もう呪いはうんざりだ。
俺は念のためにライゴスに呪いの内容を聞いた。
「簡単な話だ。我が魔王軍に牙を剥くような事があればこの首輪が我の頭と胴体を切り離すであろう。この首輪は我等にはどうする事もできぬ。それはセスティ、お前でも同じ事であろう」
確かにライゴスの首にはぶっとくていかついオシャレさのかけらもない首輪が嵌っている。
「動くなよ」
俺は剣を抜き、思い切りライゴスの首輪目掛けて降り抜いた。
ガギイィン!
俺の剣先三センチほどが、首輪に当たった衝撃で折れ、宙を舞った。
「お主でもこれを破壊する事はできなんだか。そういう事だ、下らん考えは捨てて我を屠れ」
気に入らねぇな。
気に入らねぇよ。
こうでもしないと魔王様って野郎は自分の仲間を従わせる事もできねぇのか?
「ぷっきゅっきゅきゅい♪」
今まで大人しくしていたマリスが頭の上でぴょこぴょことリボンを揺らす。
「セスティ、一応聞くがそれはなんだ? 我にはリボンが喋ったようにしか見えなんだが」
「その通りだよ。こいつはマリスって言ってな。俺の仲間さ」
「いや、しかしそのような魔物は見た事も……うおぉっ!」
ライゴスの言葉が終わる前に、俺の頭上のリボンが突如巨大化してライゴスの頭に噛み付いた。
「ま、マリス…?」
形状変化して真っ赤な塊となったマリスは俺の頭から体を伸ばし、ライゴスの頭ごと包み込んでボリボリと噛み砕いた。
「おい、マリス……なんて事しやがる」
俺とした事が一瞬、ほんの一瞬だがマリスに殺意を向けてしまった。
この毛玉、そしてリボンである可愛いマリスも所詮魔物だったのかと、俺はがっかりして、まだいい戦友になれそうだったライゴスの胴体を眺めた。
ライゴスの胴体の方はまだビクビクと動いている。
マリスが俺の目の前でライゴスを生きたまま食った。
「ひ、姫……早くマリスから離れて下さい!」
「あぶないっすよ!!」
二人もこの状況に一瞬言葉を失っていたが、すぐに俺に危険を促してきた。
危険な魔物という事が証明されてしまっては俺も放置する訳にはいかない。
悲しみと、怒りと、そして少しの間一緒に行動したという意味で愛を込めて、俺が殺してやらなければ。
「おぉぉぉっ!! なんなのだこれは!? なんなのだこれはっ!?」
…へ?
マリスにすっぽりと包まれた頭はそのままだが、胴体がじたばたと暴れだす。
そして、確かにライゴスの声が聞こえた。
やがて、ごきゅり。と何かを飲み込む音がしたと思ったらマリスは一瞬で元のリボンに戻ってしまった。
「げぷぅー♪」
「い、いったい今のはなんだったのであるか……。生きた心地がしなかったのである」
「生きてた、のか……。ん? おい、お前首輪が……」
俺の言葉にライゴスが自分の首をわさわさと触る。
「ない、無いのである!! 首輪が……一体お主のそれはなんなのであるか!? 我や他の幹部たちは勿論お主でさえ壊せなかった首輪をいとも簡単に食ってしまうとは……」
「……はは、こいつは俺の最高の相棒だよ。疑ってわるかったな」
俺はさっきマリスに対して相当ひどい勘違いをしてしまった事を詫び、リボンをそっと撫でてやった。
「ぷっきゅ♪」
リボンがゆらゆら動いて俺の指にすりすりとその身をこすりつけてくる。
本当に小動物かなにかのようだ。
めっちゃかわいい。
「どういう事か分らぬが……何にせよこれで我を縛る呪いは消えた。提案通り、我はお主を主と認めよう。この命、好きに使うといいのである」
ライゴスはその大きな体をできる限り小さく丸め、地面に片膝をついた。
「そういうのいいって。俺はお前を無理やり従わせたいんじゃない。あくまでお前の自由意思で俺を手伝え。嫌ならどっかいっていいからよ」
「ふん。性格の悪い事だ。魔王への忠誠の証とも言える首輪を壊され、我にどこへ行けと? それに、我は一度死んだ身である。生憎と今の我にはお主に忠義を尽くす事しかする事がないのである」
そういってライゴスがくしゃっと笑った。
ライオンみたいな顔だからさ、にこやかに笑うと無駄に可愛いんだよなこいつ。