君は呟くのか?呟かないのか?それは戦うことなのか?逃げることなのか?
文字数 1,251文字
「だから」は順接の接続語で、前後の内容が違います。逆接の「しかし」との違いは、順接の接続語は、前が原因で・・・
田中がいつものようにシンプルで神のように分かりやすい説明をいつものように左右にクネクネしたクセのある字で板書しながらいつものように聞き取りにくい声で、黒板に向かって一生懸命に繰り広げている、僕らに背を向けて。
僕の右斜め前の佐々木さんは、いつも通り機械のようにその板書をノートに書き写している。佐々木さんは大して成績は良くないが、田中の文字の解読技術は多分、うちのクラスでも(きっと学校内でも)トップクラスで僕は時々、彼女にノートを貸してもらっている。(直接板書を写すよりずっと効率的だからだ)
田中が45分間の授業の内、40分は黒板に向かっているせいで国語の授業でノートに向かってシャーペンを動かしている生徒はほとんどいない。勉強が出来る奴らは塾の問題集や参考書の問題を解いてるし、それ以外の奴らは寝るかスマホをこっそり見ている。
佐々木さんの後ろ、僕の右隣には山田がいるが、奴はマジのポンコツ野郎のくせに何故だかいつも集中してペンを走らせている、うつむいたままで。前に、すごく気になったので身を乗り出して奴のノートを覗き見たことがある。
花だった。ノートの見開き2ページいっぱいの花、バラは分かったけど名前も知らないよく分からない花がノートの中に咲き乱れていた。(こいつ絵上手いな)素直にそう思った。山田は他の授業ではうつむいていると怒られるからコッソリ教科書やノートの隅に何かをチマチマ書いているのだけれど、国語の時間だけはいつも大作に取り掛かる。今日も物凄いスピードでペンが動いている。(今日は何描いてんだろう)本当は山田に話しかけて奴の大作をじっくりと鑑賞してみたいのだけど、奴は大山がクラスにいなければ100%タカハシにいじられるような存在なので、僕は(事務的な会話以外の)必要が無ければ極力話しかけないように心掛けていた。チラッと横目で山田を追うと
・ん・・ん・・ん・・ん ・ん・・ん・・ん・・ん・
声が聞こえる。(えっ?)(なんだ?)少しだけ山田の方に体を傾けてみる。
・fん・fん・fん・fん ・fん・fん・fん・fン・
声とペンの動きがリンクしている。すごく気になる。思い切って身を乗り出して顔を山田の側に近づけてみると、
・rん・rん・rん・rん ・rん・rん・rん・rん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん
(えっ、なに、るんるん、なに、るんるん、ってえっ)
では次回は256ページの事実と意見の区別をやります。日直は黒板お願いします。
終業5分前、田中が黒板への説明を終了して宿題を出した後で40分ぶりに僕ら生徒の方を向いて次回の予告と黒板拭きの依頼を呟いたのちゆっくりと話し声の拡がる教室を立ち去った。山田はもうノートを閉じていて、カバンの中に教科書とあのノートをしまい始めている。
それが、たぶん始まりだった。
田中がいつものようにシンプルで神のように分かりやすい説明をいつものように左右にクネクネしたクセのある字で板書しながらいつものように聞き取りにくい声で、黒板に向かって一生懸命に繰り広げている、僕らに背を向けて。
僕の右斜め前の佐々木さんは、いつも通り機械のようにその板書をノートに書き写している。佐々木さんは大して成績は良くないが、田中の文字の解読技術は多分、うちのクラスでも(きっと学校内でも)トップクラスで僕は時々、彼女にノートを貸してもらっている。(直接板書を写すよりずっと効率的だからだ)
田中が45分間の授業の内、40分は黒板に向かっているせいで国語の授業でノートに向かってシャーペンを動かしている生徒はほとんどいない。勉強が出来る奴らは塾の問題集や参考書の問題を解いてるし、それ以外の奴らは寝るかスマホをこっそり見ている。
佐々木さんの後ろ、僕の右隣には山田がいるが、奴はマジのポンコツ野郎のくせに何故だかいつも集中してペンを走らせている、うつむいたままで。前に、すごく気になったので身を乗り出して奴のノートを覗き見たことがある。
花だった。ノートの見開き2ページいっぱいの花、バラは分かったけど名前も知らないよく分からない花がノートの中に咲き乱れていた。(こいつ絵上手いな)素直にそう思った。山田は他の授業ではうつむいていると怒られるからコッソリ教科書やノートの隅に何かをチマチマ書いているのだけれど、国語の時間だけはいつも大作に取り掛かる。今日も物凄いスピードでペンが動いている。(今日は何描いてんだろう)本当は山田に話しかけて奴の大作をじっくりと鑑賞してみたいのだけど、奴は大山がクラスにいなければ100%タカハシにいじられるような存在なので、僕は(事務的な会話以外の)必要が無ければ極力話しかけないように心掛けていた。チラッと横目で山田を追うと
・ん・・ん・・ん・・ん ・ん・・ん・・ん・・ん・
声が聞こえる。(えっ?)(なんだ?)少しだけ山田の方に体を傾けてみる。
・fん・fん・fん・fん ・fん・fん・fん・fン・
声とペンの動きがリンクしている。すごく気になる。思い切って身を乗り出して顔を山田の側に近づけてみると、
・rん・rん・rん・rん ・rん・rん・rん・rん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん るんるん
(えっ、なに、るんるん、なに、るんるん、ってえっ)
では次回は256ページの事実と意見の区別をやります。日直は黒板お願いします。
終業5分前、田中が黒板への説明を終了して宿題を出した後で40分ぶりに僕ら生徒の方を向いて次回の予告と黒板拭きの依頼を呟いたのちゆっくりと話し声の拡がる教室を立ち去った。山田はもうノートを閉じていて、カバンの中に教科書とあのノートをしまい始めている。
それが、たぶん始まりだった。