第11話 病院
文字数 1,756文字
スマホの住所録から笠原さんを探し出し、電話をかける。
電話口から離れたのかしばらく無音の後、
【10分間隔の状態なのでまだ時間はあると思いますよ】
と言う言葉が電話口から漏れ聞こえる。
自分の考えが正しいと確信した俺は、弓月にも話が伝わるよう音源をスピーカーに変えた。
笠原さんはそう答えるが、怪我の診察では無いと確信していたので直言する。
人によってかかる時間が違うが、平均時間で見ると……と言う話を
笠原さんから、重ねて説明を受ける。
笠原さんに言われてもう1つ聞く事があるのを思い出した。
笠原さんはそう言うと、看護師さんに呼ばれたのか無言のまま電話を切った。
確かに社長は謎の部分が多いが、幅広い人脈を持っているのは確かだ。
笠原さんの言うように頼るべき場面では頼ると心に決めて、次は弓月と向き合い声をかける。
弓月は笑顔を浮かべながらも、頬には一筋の涙が伝っていた。
外の様子に気付いた俺は、弓月の視線を外に向ける。
あれだけ降っていた雨が、今は完全にあがっていたのだ。
俺は弓月に手を差し伸べて一緒に店を出ると、黒猫が白猫を連れて歩いてきた。
そう言うと、弓月はすぐに白猫に駆け寄り、優しく抱き抱える。
俺もルキアを抱きかかえて、弓月にゆっくりと歩み寄る。
笑顔でそう答えて再度店の中へと誘導し、一緒にレジカウンターで腰を下ろす。