第10話 猫

エピソード文字数 660文字

「猫を探していたのか?」
その問いかけに弓月が頷く。
「顔見知りの猫?」
「……昨日の夕方に出会った白猫。でも声をかけない方が良かった」
「どう言う事だ?
 もう少し具体的に話してもらえると助かるな」
「この近くを歩いていたら、物陰から猫が出てきたの」
そう言うと、弓月は外に目を向けて言葉を続ける。

「ふらふらしてたから大丈夫かなと思って駆け寄ったら、

 その子が側溝に落ちてしまって……」

弓月はその時の光景を思い出したのか、目をぎゅっとつぶる。

「側溝から出そうにも重くて上げられなくて……。
 すぐにサングラスの男の人が来てくださったのに、私はとっさに逃げてしまいました」
(サングラスの男、おそらく笠原さんだろうな。
 俺がバイト終わった後にそんな事があったんだ)
「それで猫がどうなったのか、気になって来たのか?」
「猫も……なんですが、そのサングラスの男の人も気がかりで」
「気がかりって逃げてしまったから?」
「ではなくてその方の身に、何か起きてないかと心配に」
(身に何か起きてないか心配? 
 確かに笠原さんは怪我をしたらしいが……。
 弓月の言う事が本当なら……未来予知か?)
「実際に見てないので断言はできないが、
 サングラスの人が昨日怪我をしたと聞いた」
「やっぱりその人も不幸な目にあったんだ」
弓月はそう言うと、体を丸めて小さく震えだした。
「弓月にしてやれる事はないのか……」
一生懸命考えていると、ある事を思い出した。
「弓月、大丈夫だ。俺の予想が正しければこの話は覆る」

俺は震えている弓月の頭を軽く撫でて、スマホをポケットから取り出した。

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登場人物紹介

綾瀬 亮介(あやせ・りょうすけ)

大学2年生。

相棒の猫・ルキアと心で会話する能力を持ち、また力を合わせる事で、

他者の心の状態を『色』で判別する事ができる。

謎の少女

亮介の自宅に突如現れた少女。


ルキア

亮介の家に住み着く猫。

亮介と会話をしたりする事ができる。

まさに深窓の令嬢と言う感じで、少し茶色がかったふんわりウェーブの髪と

青みがかった瞳が印象的で、ボディーガードを連れている。

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