第9話 着替え
文字数 1,374文字
二人とも頭も服もびしょ濡れになってしまったため、まずは着替えをする事にした。
何も考えずに後ろに振り替えると、当然弓月も雨で濡れているため、
服が肌に張り付き、下着が透けて見えていた。
目のやり場に困ったため、俺は返事を待つ事無く休憩室に駆け込んだ。
休憩室に入ると、静まり返った室内で大きく一つため息をついた。
と言いつつ、そこは自分の好みの人物の綺麗な姿を見るのは、
嬉しいので複雑な気持ちだ。
まずタオルを取って髪をさっと拭くと、シャツとズボンを脱いで予備の物に着替える。
ロッカーからタオル数枚と青色のシャツ、ジーンズを手に取り机の上に置く。
弓月は少し考えるような仕草をすると、こくんと頷いて休憩室へと入っていった。
肩を回しながら、ドライヤーがあるコーナーまで歩いていく。
商品を勝手におろす訳にいかないので、展示用のドライヤーを手に取ると、
休憩室に向かいノックする。
レジカウンターに腰かけ、タオルで水分を拭き取りながら、外に目を向ける。
「離してください。でないとあなたにも」
これらは恐らく、6年前の件と繋がっているのだろう。
今の情報量ではこれを解き明かす事は不可能だが、もうここまで来ると後には引けない。
引くわけにはいかない。
俺は弓月にあんな切ない顔をさせたくないんだ。
こんなに雨が降っていてもいつか止む。
止まない雨はないのだから。
しばらくの間目をつぶり、弓月が戻るのを待った。
扉が開く音がすると、弓月が姿を現した。
髪は家で見た時のように、まっさらな黒髪ストレート。
服は俺が渡した青色のシャツに、色のはげたジーンズを身に付けている。
相変わらず表情はないが、先ほどより落ち着いた様子で少しほっとした。
店の袋が透けて見えないタイプだったため、弓月に手渡す。
そう言いながらレジカウンターに座り、弓月を隣の椅子に座るように促す。