第13話 皇社長

エピソード文字数 1,316文字

社長から何の連絡だろうと電話に出ようとするが、ふと手が止まる。


なるべく早めに名取と連絡を取りたいが、あまり遅い時間だと連絡方法を調べる時間も無いし、

相手の都合も付きにくくなってしまう。

(となると、今日だけでもバイトを上がらせて欲しいと、社長を頼るべきか)

言わずに後悔するなら言って後悔だと、自分を奮い立たせる。

皇社長

「なかなか電話に出ないから席を外してるのかと思ったよ。

 店の方はどうだ? 客は来てるか?」

「昼から店番をしてますが、雨が降っていた影響もあって来てないですね」
「そうか、それは残念だ。そうしたら綾瀬にお願いがあるのだが」
「社長。その前に俺から1つ相談させて頂きたいのですが、よろしいですか?」
「綾瀬から相談か、珍しいな。話してみなさい」

「友達のためにある人と連絡を取りたいんですが、

 状況を考えるとなるべく早めに連絡を入れたいと思っています」

「そのため今日だけでも、バイトを早めに上がらせて頂きたいと思うのですが」

社長に自分の想いをぶつけてみる、どうなるかは後で考えればいい。

「その友達は、綾瀬の大事な人なんだよな?」
「はい。必ず連絡を取って、その人の笑顔を取り戻したいと思っています」
「そっか。それならこれで上がっても大丈夫だぞ」
「本当ですか?」

社長の言葉で、飛び上がりそうなくらいの嬉しさがこみ上げてくる。

「私も綾瀬の願いを叶えてやりたいと言うのもあるし、

 私が連絡したのは今日はこれで店を閉めて、綾瀬をあがらせようと思ってたんだよ」

「元々今日は休みにする予定でいたしな」
「そう言う事だったんですね。それではお言葉に甘えさせて頂きます」

「若人よ、頑張ってくるんだぞ。って事で戸締まりをしっかりしておいてくれよな。

 バイトは7時まででつけとくから」

「ありがとうございます! さすが社長、尊敬してます!」
「はは、口が達者な奴だな。それじゃ今日は寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだぞ」

社長がどこか嬉しそうな口調でそう言い残すと、電話を切った。

『皇社長は、相変わらず凄いにゃ!』
「やはり社長に頼ってよかったよ。今日はこれで店を閉めて良いそうだ」
「まだ話の途中だし、話したい事もあるからそうだな……俺のうちにくるか?」
「はい、綾瀬さんがよろしければ。後、ルキア君もね」
「お、弓月から初めて名前を呼ばれた気がする」

弓月も話せるようになって来てるみたいだし、前進、前進。

「ってルキアの声が弓月も聞こえるのか!?」
「はい。この電気屋さんに入ってから、声が伝わってきていました」
『葵ちゃん、元気だすにゃ。亮介は良いやつだし、僕も一緒についてるにゃ!』

ルキアのおかげで、弓月も気持ちがほぐれた気がする。


俺は弓月に向かって親指をぐっと立てると、自分の着替えを持って帰り支度をするように言う。

後は展示品のドライヤーを元に戻して、店の電気を切ればOKだ。

「帰る準備はできたな。それじゃ鍵をかけて室外機の中へっと……」


『俺達は家までゆっくり歩いていくけど、ルキアはどうするんだ?』

『僕は白猫ちゃんを、親のとこまで送り届けてから帰るにゃ』
『分かった。それじゃ、またな』

ルキアが去っていくのを弓月と一緒に見送ると、少し遠回りで自宅の方へを歩いていった。

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登場人物紹介

綾瀬 亮介(あやせ・りょうすけ)

大学2年生。

相棒の猫・ルキアと心で会話する能力を持ち、また力を合わせる事で、

他者の心の状態を『色』で判別する事ができる。

謎の少女

亮介の自宅に突如現れた少女。


ルキア

亮介の家に住み着く猫。

亮介と会話をしたりする事ができる。

まさに深窓の令嬢と言う感じで、少し茶色がかったふんわりウェーブの髪と

青みがかった瞳が印象的で、ボディーガードを連れている。

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