第7話 皇電気店
文字数 1,303文字
今向かっている店は、自宅から歩いて5分ほどの場所なので、
バイトの時間に遅れそうになっても、速攻で着く距離だ。
客の入りは、正直よくなかったりする。
近隣の常連客が電池などの消耗品を買いに来るくらいなので、
店はほぼ趣味としてやってる感じだろう。
今時電気製品の購入と言えば、家電量販店かネット通販が主力だからな。
ルキアは何を捜索しているのか知らないが、こんな天気の時は、
大人しく家にいた方が良いと思うんだが。
今俺の目の前には高層ビルが有り、そのテナントの一角に皇電気店がある。
清潔感と開放感をコンセプトにしている事もあってその外観からは……
電話で話してた通り、もう昼になる時間帯にも関わらず
皇電気店はまだシャッターがしまったまま。
外見も老朽化して、借り手のいない貸し店舗と言った感じである。
大きく深呼吸をして体を伸ばすと、エアコンの室外機の中に手を突っ込んだ。
皇電気店では夏の暑い日は扇風機、冬の寒い日はストーブと言った感じで、
一切エアコンは使われていない。
なので鍵の隠し場所として有名な室外機の下ではなく、壊れて物の出し入れが可能な
室外機の中に鍵がしまわれているのだ。
と言う事で前置きが長くなったが、シャッターを開けて店に入る。
自分の目で確認するため、新製品コーナーへと足を運ぶ。
この店舗に似つかわしくないサイズなので、多少圧迫感を感じるが、
ここに設置される新製品は、俺が来てからほとんど売れた事がないので、
気にする必要はなかったりする。
ちなみにここに並んだ新製品達は、社長ルートでうまく流れているようなので、
商売としては一応成り立っているらしい。
あと先ほどから出てくる笠原さんと言うのは、
社長の部下で皇電気の社員、もう半分は裏の仕事をされている方だ。
冷静に考えて行動し、仕事は確実にこなすタイプ。
サングラスを愛用してるため、いかにも怖そうな雰囲気なのだが、
心の色は黒ではなく「黄」。
大の猫好きで猫のためなら、命を捨てかねないほどの愛好者なのだ。
おそらく昨日怪我をしたと言うのも、ここらに居着いている猫関連で、
何かがあったのだろう。
いくつもの可能性を考えながら、散らばった段ボールを持ち、倉庫へと運んで行く。
店内の照明を一斉につけて、入口付近にあるレジカウンターに腰かける。