第6話 社長

文字数 982文字

皇社長

「綾瀬、悪いな。休みの日に電話して」

「大丈夫です。来月のシフトの件ですか?」
「いや来月のシフトは、笠原が調整中だからもう少し待っててくれ」
来月のシフトじゃないとなるとあれか?
「もしかして裏の方ですか?」

「裏言うな。別に電気屋の裏で悪事を働いているとかじゃなくて、

 どちらもちゃんとした会社だぞ」

「だったら俺にも社長が何をしてるのか、教えてくださいよー」
「まあそこはいいじゃないか。
 おまえもうちの商品を知らずに買ってるってのが、ヒントでこの話はおしまい」
「と言う事で話を本題に戻すが、急遽店番をお願いしたいんだができるか?」
「皇(すめらぎ)社長は謎多き人ですね。分かりました。
 皇電気店の店番は任せてください。笠原さんも今日はいるんですか?」
「笠原は昨日怪我をしたみたいで、今日は休みだ。
 来週には復帰する予定だから問題ない」
「笠原さんが怪我ですか? 珍しいですね」
「まあ……たまにはそう言う事もあるだろう」

(社長にしては珍しく歯切れが悪いな。何か別の理由でもあるのだろうか?)

先週二人で何か話していた気がするが、思い出せない。


まあ来週には復帰できるなら、問題ないか。

「了解です。その変わり、今度昼飯おごってくださいね?」
「月9000円と安く住まわせてやってるのに、ちゃっかりした奴だな。
 仕方ない、好きなのをおごってやるからよろしく頼むぞ」
「分かりました。用意ができ次第、店に向かいます。
 あ、最後に社長は名取 愛花か、弓月 葵って名前を聞いた事ありますか?」
「名取 愛花に、弓月 葵?」
「あ、いや何でもないっす。今の話は忘れてください。それでは失礼します」
(つい聞いてしまったが、夢で出てきた人物の名前を言っても分かる訳がないのに)

って事でバイトの内容と、安く住めている理由は以上だ。


と言いつつ、なぜ安くなるのかまでは、俺も知らなかったりするんだけど。

とにかく社長は、謎が多い人物なのだ。


ちなみに皇社長の色は、ゴールド。


なかなか心を感じ取るのが難しい方だ。

漫画雑誌を枕元にぽんと置くと、台所にある鏡で髪を整えて部屋を出ていく。

外に出ると、念のため弓月の姿を探してみるが、時間が経っている事もあって、

姿を確認する事はできない。

(ちゃんと真っ直ぐ家に帰っているだろうか)

空を見上げると予報通り天気が悪くなってきているようで、

どんよりとした雲が覆い始めていた。

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登場人物紹介

綾瀬 亮介(あやせ・りょうすけ)

大学2年生。

相棒の猫・ルキアと心で会話する能力を持ち、また力を合わせる事で、

他者の心の状態を『色』で判別する事ができる。

謎の少女

亮介の自宅に突如現れた少女。


ルキア

亮介の家に住み着く猫。

亮介と会話をしたりする事ができる。

まさに深窓の令嬢と言う感じで、少し茶色がかったふんわりウェーブの髪と

青みがかった瞳が印象的で、ボディーガードを連れている。

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