第12話 弓月の過去
文字数 1,594文字
子供の頃の記憶が蘇ってくるのか、時折顔を伏せながらも弓月の口調からは、
決心が伝わってくる。
そこまで話すと弓月は目を閉じ、少し間を取ってから話を続ける。
気丈に振る舞いながらも話を続ける弓月に、何度も声をかけそうになるが、
ここは我慢の時だと歯を食いしばって、話を聞き続ける。
周りの人達を巻き込むと思っていた弓月の心情は、想像できないくらいの
辛さだったと思うし、心が迷い込んでしまったのも無理はないのかもしれない。
弓月が震える手を必死に抑えようとしている姿を見て、俺は無言のまま手を握る。
言葉に詰まりそうになりながらも、最後まで話してくれた弓月に、
優しく声をかけて再度手を握りしめる。
今の話でキーになりそうな点を整理すると、
大まかにまとめると、以上3つの問題点が考えられる。
猫と笠原さんの件を例に挙げると、弓月は猫に近寄ったが笠原さんに助けられたし、
笠原さんも怪我で休んだ訳ではなく、奥さんの出産に立ち会おうとしていただけだった。
次に名取の件を考えてみると、向日葵の丘公園に行く事になり、
事故が起きてしまうが、報道を通じて無事を確認している。
施設の仲間や学校の友達の件は検証できないが、
弓月の懸念を払拭する方法が、一つだけあると思った。
そう考え、言葉を発しようとした所で、スマホに電話がかかってきた。