第18話 弓月の存在
文字数 1,084文字
不思議そうな顔で弓月が、こちらを見つめてくる。
嬉しそうに微笑む弓月を見ると、俺の心が洗われていく。
頭にクエスチョンマークを浮かべる弓月に、俺は慌てて独り言だと訂正するが、
たぶん俺の顔は真っ赤になっているに違いない。
弓月がルキアをそっと抱き上げると、
ルキアはふにゃっと蕩けるように身を委ねた。
弓月を二人並んで机に近づくと、そこには青のリボンのついた鍵と
赤のリボンのついた鍵が置かれていた。
そう弓月は急がなくてもいい。
ゆっくりと色々知って行ってくれればいいのだから。
赤いリボンの鍵を弓月に手渡す。
嬉しそうに顔を寄せてくる弓月に俺も嬉しくなるが……
いや、顔が近い近い!
そんなこんなで、弓月葵との出会いの物語もこれでおしまい。
まだまだ前途多難。
恋?の方は……まあゆっくり行けばいいさ。
スマホを取り出してメールを確認すると、「無事女の子が生まれた!」と記載されていた。
自分の事のように喜び、微笑む弓月。
この先どんな出来事が待ちうけているか分からないが、
この笑顔が絶えないよう隣で見守り続けたい。
そして弓月には、桔梗の花にこめられた想いを胸に歩んで行って欲しい。
そんな事を思いながら、俺は弓月の手を優しく握りしめるのだった。