第2話 ……ないです
文字数 2,454文字
冷蔵庫を開けて中を確認し、お目当ての物を見つける。
スーパーでよく特売で売っている5個入りのあれだ。
相変わらず何の返答もないが、背を向けたまま冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぎ込む。
少女はまだ弁当に箸をつけておらず、こちらをじっと見つめていた。
少女にそう声をかけると、今度は首を振る事も俯く事もせず、無言でこちらを見続けた。
まだ会ってから話もまともに成立していないが、俺の問いかけに「YES」と答えてくれた気がした。
俺の言葉に同調してくれたようで少女は小さく頷き、
コンビニ弁当の封を開けて、綺麗な箸使いで惣菜を口に運んで行く。
悪いと思いつつも、チラッと少女の食事作法を伺うが、
少女はそれに気づいていないようで黙々と食している。
もし困っているなら俺にできる事がないかと思考を巡らすが、
心を許してもらうには程遠い今の状況では、できる事はないのかもしれない。
でも俺はこの短い時間で、何かしら心の片隅に残してくれればと思い、笑顔で話しかける。
少女は満足したのか幾分和らいだ表情で、小さくこくんと頷いた。
空になった弁当箱を机の上に置くと、ゆっくり少女に近付き、
目線を合わせるために中腰になる。
スマホをポケットから取り出し、玄関方向へ歩きながら、タクシー会社の登録を呼び出す。
何度かコールしてみるが、金曜日の夜のせいか、タクシー会社に電話が繋がらない。
スマホを操作し、お目当ての電話番号を見つけた所で、服の袖をちょこんと掴まれる。
帰りたくない、か。
そりゃ誰だって、帰りたくないって言う日もあるさね。
免疫が無い訳ではないが好みの女の子にそんな事を言われたら、クラっとくるのが男のサガ。
一瞬舞い上がりそうになるが、少女の表情を見てすぐにその気持ちを打ち消した。
切なくて悲しくて……
今にも泣きだしそうな表情をしていたのだ。
事情は全く分からない。
少女にとって家に帰るのが最善の行動なのか、それともせめて、
今日だけでも泊めてあげるべきなのか。
難しい判断ではあるが、俺はこう言う時はどう振る舞うかを心に決めていた。
俺は迷わず少女にそう告げていた。
無責任で言っている訳じゃない。
もちろんこの考えは取り返しのつかない、
危険な選択になる可能性があるのも分かっている。
少女は小さい声ながらも、しっかりとした口調でそう答えた。
あまり言いたくない事だろうし、こちらからは触れないでおこうか。
少女に座布団を手渡すと、ぽんぽんと叩きながら床に敷き、ゆっくりと横になる。
なら豆電にしておくか。真っ暗の中で二人きりって言うのも不安だろうし。
ルキアの言う通り、夏休み初日から大変な事になった。
まさか見知らぬ女の子と一夜を共にする事になるとは。
体を横にして少女に目を向けてみると、よほど疲れていたのか、静かに寝息を立てていた。
少女の眠りの妨げないよう小さな声で呟き、自分も眠気に誘われるように、
静かに目を瞑じていった。