空港内

空港エントランスホール

紫乃が可能の腕を掴む。

黒い襞を伴いながらすでに紫乃、周囲の温度を感知し天井に取り付けられている。スプリンクラーが回転しながら消火剤を撒く可能、紫乃はシャワーのように撒かれている消火剤に濡れる。

黒い軽い襞は沙　可能が持ち上げられている手首から焼け焦げていく。

「　きゃゃああああああ！！　」

泣く可能の回復力に対しややチェンバーの濃度を濃くした。

「　こいつ　」

ことごとく皮膚どころか筋肉から次から次へと再生していき泣く可能は。

補助脳にはある副作用があった、証木が想定していたものだし本人の可能には伝えてはいない能力。

可能より倍の炎に向かってつぶやく。

「　消えてぇ！　」

量子(＊＊)の書(＊)き換(＊)えが起こる。

４ｍに及ぶ炎がスプリンクラーの消火剤は触れる際「　ジュ　」という音を立て高熱により蒸発し黒と白の巨大な気体ができている。

その光景が変化する、黒の炎が一瞬で消えた。

紫乃が「　なに？　」

空港内エントランスホール消火剤の水が一気に紫乃へ覆う金色に染めている髪ごと全身は濡れていく。

再び繰り返し言う。

―　こいつ　―

「　どうした？お嬢様　」

長身の紫乃に片腕は掴まれたまま、紫乃とはそのとき可能は一線を画す。

沙　可能は気が付いたかのように唇は笑った。「　ふっ　」

再び紫乃がチェンバーによって保護されるように黒い炎の襞が覆おうとした。

しかし可能ははっきり言う。「　消えろチェンバー　」

紫乃の体内へ埋められていたありとあらゆるチェンバーシステムが消滅する。

紫乃の体の表面から一切の襞は消える。

彼女は目を大きく開き次の瞬間にはその場からバックステップしていて。

思わず。「　何が起きている？　」

言う。

―　いったん引くか　―　　―　いや、殺るか　―

戸惑っているが。

周囲の空港乗客はすでに逃げていた。そして代わりに空港エントランスホール通路は警備員とは別に国境警備隊の警察官がライフル銃を構えてはいた。

実際、黒い炎に向かって撃ち込んでいたがその直前で物理衝撃を受け止めるエネルギーで止まっている。

空港内警察官の十数名は自分達も消火剤によって艶の無いプロテクトの付いている服とともに濡れ厳しい目で見つめていた。しかしその中のリーダーは。

「　撃て！　」

その中の２名が今までの実戦通り銃を肩に構え。

可能ではなくラフな着こなしのビジネススーツ姿の女性へ向かって引き金を引いた。しかし紫乃は大きく通路内でのロングの髪をたなびかせながらサイドステップし弾丸は何も無い空間を弾くだけだった。

紫乃の肩に撃ち込まれている銃弾から出る血とともに滴りエントランスホール通路を真っ赤に色付けながらも。