2-6
文字数 3,579文字
カルマ fake:recognition 2-6
あれから、11時間かけてアマミ大島に到着した。
自分の街から、一歩も出た事がないカルマにとって船旅は初めての経験だった。
無論、船旅を楽しむために来たのではないことは重々承知の上だった。
乗船してからすぐに、甲板に出て磯の匂いがする風と、どこまでも続く綺麗な海を少し味わったくらいなもので、その殆どの時間を自分の部屋での鍛錬に勤しんだ。
身体能力の向上と言っても、歩くのは差し支えないくらいになった程度で、龍血の力を自在とまではまだ時間がかかりそうだった。
それでも、常人なら二か月はかかるであろう所を、一ヶ月でここまで来たのだから大したものであろうが、カルマの周りは何せ常人ではないのでやはりまだまだ半人前であった。
座禅を組み、呼吸を整え自分の身体の龍脈に意識を向ける。
自分の身体の丹田に熱量を感じる。
ということを繰り返しやるのであった。
「カルマ、そろそろ到着するぞ」
声を掛けられるまでカルマは目を瞑ったままでいた。
「もう、着いたんですか?」
「もうって、11時間経ったからな」
鏑木は熱心なのも困りものだなと笑う。
「眠らないよう気をつけろよ」
少し意地悪な言い方をする鏑木にカルマはムッとして言い返した。
「眠ってませんよ!集中していただけですから」
子供らしい反応のカルマの頭を鏑木はポンッと軽く置いてあやす。
「そら、早くせねば置いていくぞ?」
「あっ、待ってくださいよ!鏑木隊長!」
鏑木に置いていかれまいと、カルマは必死に荷造りをして追いかけた。
二人は今回の旅で、はじめの頃と違い大分打ち解けていた。
一歩外に出て見るとアマミは海がより綺麗に見えた。
「すげー!キレイッスね!!地元の海と全然ちがう!」
「アマミは海とマングローブが有名だからな」
まるで子供のようにはしゃぐカルマだったが、ふと
我に返った。
「あっ、そうだ…」
「残念だが今回は、観光に来たのではない」
「うぃっす…」
少し落ち込むカルマに、鏑木は本来の目的を思い出させた。
「お前の腕が首を長くして待ってる、そうだろ?」
「そうだった!でも、腕って…義手ってことですか?」
「それも行けばわかる」
カルマは再び奮起した。あと少しで新しい腕が待っている。
もう二度と、あんなことにならないように、今度こそ力をみんなを守れる力を手に…そう願って、目的地へと鏑木について行った。
マングローブを超えて、しばらく山の中を進んで行くことさらに2時間美しい湖にたどり着いた。
「でっけー湖!でも湖以外何も見当たらないですよ?」
カルマが湖を見渡しながら疑問を口にする。
すると鏑木は指を刀印の形にし「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」
解!!と唱えた。
空間が歪んだ感じがするとともに女の声が聞こえた。
「えーと、どちら様でしたっけ?アポイントはお持ちで?」
「声がする!?」
どこからともなく音声が聞こえカルマは辺りを見回した。
「鏑木だ…花衣から連絡はいってるはずだが?」
「あー、アレを取りに来たんでしたっけ?ハイハイ、なるほど、なるほど…ん、では開城して」
女がそういうと、湖の真ん中に古い城のような建物が現れた。
「うわっ、でか!!」
城のような建物から声の持ち主が出てきた。
「どうぞ」
首元まで伸ばした青味がかった髪を、所々寝癖がついたまま無造作にしている女性が現れた。眼鏡をかけた奥で気だるそうな目でこちらを見ていた。
四ツ谷 七星 それが彼女の名前だった。
「四ツ谷です、鏑木隊長と君が例の子だね。ウチでも噂になってるよ。それにしても、君の腕は面白いね。…久々に実験に熱中したよ」
掛けてた眼鏡をはずしながら語る言葉から、なんだか不吉な言葉を聞いてカルマはたじろいだ。
「時間が惜しい。早速で悪いが腕は出来ているか?」
「ああ…そうだったね。フフ…腕の方はいい出来上がりだよ。僕の自信作だとも」
鏑木の発言に、少し残念そうにカルマを見やりながら四ツ谷は案内をかって出た。
「もう少し観察していたかったが、時間がないなら仕方ない。観察はまたの機会にするよ…こっちだ。ついてきて」
湖から城に繋がる道を案内されながら辿る。
案内された城の内部に入ると、中もまるで古城を彷彿とさせた。
小物やら何やら骨董品で出来ている、そういうのに疎いカルマであったが流石に面を食らった。
「気になるかい?此処は先代の趣味で作ってあるからね。どれもこれも一流のアンティークさ…まぁ、ここは大和だからね環境的に浮いてはいるかもね」
「四ツ谷よ…」
「わかってるって、鏑木隊長は真面目だなぁ。滅多に人の出入りが無いんだ、少しくらいハメを外してもバチは当たるまい」
やれやれという雰囲気を出しながら地下へと案内された。
「ここで待っていてくれないか?今腕を持ってくるからさ」
鏑木とカルマを置いて四ツ谷は腕を取りに行った。
まじまじと部屋を見渡すが、机と拷問でもするかのような椅子、それと床には何やら文字が書かれていた。それ以外になにも見当たらなかった。
あれから数刻が過ぎると「おまたせ」という声と共に何やら荷物を抱えて四ツ谷が帰ってきた。
「これが君の新しい腕だよ」
そう言い机の上に荷物を乗せた。
荷物は厳重に術布で包まれた状態だった。
術布を丁寧に解いていく。
最後の一枚をめくると桐の箱が現れた。
桐の箱の蓋を、重箱の蓋の開けるように外すと、中から義手のような物があらわれた。
「ごらん…これが君の新しい腕だよ」
中から出てきたのは、最後にカルマが見た腕の状態とは違った。
カルマの腕はまるで龍の腕のように鱗に包まれていたが、これはより洗練された義手の様なデザインに感じた。
「これが…オレの腕なんですか?」
カルマは恐る恐る尋ねた。
「うん、そうだよ。君の切り落とした腕をベースに、新たに作った紛いもない君の腕だとも」
黒を基調とした機械的というよりはSF映画に出てきそうな、人間の腕の様なフォルムに近い腕だった。
これなら包帯でも巻けば傍目からは気づかれまい。
「早速触ってみてくれないか?」
四ツ谷に言われるがまま、カルマは新しい腕に触れてみた。
表面はひんやりとだが、中から胎動しているかのような脈を微かに感じた。
「これ…生きてる!?」
驚きを隠せないカルマの姿をみて四ツ谷は笑った。
「あはは、いいねぇ〜!その反応が見れて作ったかいがあったものだよ」
「四ツ谷…もう、十分遊んだだろう」
四ツ谷は鏑木に早く進めるよう急かされる。
「ハイハイ、わかってるよ。その腕はね、君の腕の筋肉と龍脈をベースに使ってるんだぁ」
「オレの腕の筋肉…?」
「まぁ、普通の義手と違ってアクチュエータを天然の君の腕の筋肉から作ったってこと。アクチュエータは、送られたエネルギーの電気信号とかを物理的運動に変換する役目を持っている機械要素さ〜、それを君のもので作ったから君との相性ばっちしてこと!」
四ツ谷に難しい事を言われ、カルマ的にはほぼよく分からなかった。
「難しく考えなくていいよ。調整はこっちでやるから。君はただ使いこなしてくれれば良い」
「わかりました。相性も良いなら多分大丈夫ですよね」
「相性は…いいよ。何せ元は自分のだしね。それに外装だって君の鱗をこう加工してだね…」
四ツ谷は、まだ言い足りなかったが、鏑木の空気を察して諦めた。
「とまぁ、善は急げだ…!早速取り付けようか!いやぁ、いい素材だったよ!滅多にこんなものお目にかかれないね!」
やっとのことで取り付け作業に入るようだ。
四ツ谷は処置をする支度を始めた。
「体を椅子に拘束させて貰うよ?かなり痛いかもしれないけど我慢してね。麻酔を打つと眠ってるところから侵食されるからできない」
四ツ谷は話しながら、カルマの体を拘束するベルトを締めていく。
「最後に聞くけど、君はやめるという選択肢もあるんだよ?その時は、鏑木隊長が痛くなく首を落としてくれる…この先辛いことが待ち構えてるかもだし。やめるなら今のうちだよ?」
四ツ谷の問いに、カルマは少し考えるがハッキリと告げる。
「いえ、オレはもう逃げないって決めたんで!それに四ツ谷さんを信じます」
その発言に四ツ谷は軽く驚いた様子だった。
カルマは鏑木の方に顔を向け頷く。
「行ってこい、そして戻ってこいカルマ」
鏑木の一言にカルマは勇気が湧いてきた。
そんなやりとりを四ツ谷は眺めながら言う。
「君は変な子だなぁ、まぁ僕は天才だからね。きっと、新しい腕が馴染めばよく働いてくれるさ」
ーーふむ、僕はただ単にいい被験体としか思って無いとは口が裂けても言えないなぁ…ーー
「じゃあ、これ…噛んでくれる?」
四ツ谷は猿轡 のような物をカルマの口に嵌めた。
頭にはヘッドセットのような物を被せられ目の前が暗く染まった。
「脳波…心拍、龍脈共に異常なし」
ヘッドセットをしたカルマには、微かに聞こてくる声ただそれだけしか、外界の様子がわかる手段が残されていなかった。
あれから、11時間かけてアマミ大島に到着した。
自分の街から、一歩も出た事がないカルマにとって船旅は初めての経験だった。
無論、船旅を楽しむために来たのではないことは重々承知の上だった。
乗船してからすぐに、甲板に出て磯の匂いがする風と、どこまでも続く綺麗な海を少し味わったくらいなもので、その殆どの時間を自分の部屋での鍛錬に勤しんだ。
身体能力の向上と言っても、歩くのは差し支えないくらいになった程度で、龍血の力を自在とまではまだ時間がかかりそうだった。
それでも、常人なら二か月はかかるであろう所を、一ヶ月でここまで来たのだから大したものであろうが、カルマの周りは何せ常人ではないのでやはりまだまだ半人前であった。
座禅を組み、呼吸を整え自分の身体の龍脈に意識を向ける。
自分の身体の丹田に熱量を感じる。
ということを繰り返しやるのであった。
「カルマ、そろそろ到着するぞ」
声を掛けられるまでカルマは目を瞑ったままでいた。
「もう、着いたんですか?」
「もうって、11時間経ったからな」
鏑木は熱心なのも困りものだなと笑う。
「眠らないよう気をつけろよ」
少し意地悪な言い方をする鏑木にカルマはムッとして言い返した。
「眠ってませんよ!集中していただけですから」
子供らしい反応のカルマの頭を鏑木はポンッと軽く置いてあやす。
「そら、早くせねば置いていくぞ?」
「あっ、待ってくださいよ!鏑木隊長!」
鏑木に置いていかれまいと、カルマは必死に荷造りをして追いかけた。
二人は今回の旅で、はじめの頃と違い大分打ち解けていた。
一歩外に出て見るとアマミは海がより綺麗に見えた。
「すげー!キレイッスね!!地元の海と全然ちがう!」
「アマミは海とマングローブが有名だからな」
まるで子供のようにはしゃぐカルマだったが、ふと
我に返った。
「あっ、そうだ…」
「残念だが今回は、観光に来たのではない」
「うぃっす…」
少し落ち込むカルマに、鏑木は本来の目的を思い出させた。
「お前の腕が首を長くして待ってる、そうだろ?」
「そうだった!でも、腕って…義手ってことですか?」
「それも行けばわかる」
カルマは再び奮起した。あと少しで新しい腕が待っている。
もう二度と、あんなことにならないように、今度こそ力をみんなを守れる力を手に…そう願って、目的地へと鏑木について行った。
マングローブを超えて、しばらく山の中を進んで行くことさらに2時間美しい湖にたどり着いた。
「でっけー湖!でも湖以外何も見当たらないですよ?」
カルマが湖を見渡しながら疑問を口にする。
すると鏑木は指を刀印の形にし「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」
解!!と唱えた。
空間が歪んだ感じがするとともに女の声が聞こえた。
「えーと、どちら様でしたっけ?アポイントはお持ちで?」
「声がする!?」
どこからともなく音声が聞こえカルマは辺りを見回した。
「鏑木だ…花衣から連絡はいってるはずだが?」
「あー、アレを取りに来たんでしたっけ?ハイハイ、なるほど、なるほど…ん、では開城して」
女がそういうと、湖の真ん中に古い城のような建物が現れた。
「うわっ、でか!!」
城のような建物から声の持ち主が出てきた。
「どうぞ」
首元まで伸ばした青味がかった髪を、所々寝癖がついたまま無造作にしている女性が現れた。眼鏡をかけた奥で気だるそうな目でこちらを見ていた。
四ツ
「四ツ谷です、鏑木隊長と君が例の子だね。ウチでも噂になってるよ。それにしても、君の腕は面白いね。…久々に実験に熱中したよ」
掛けてた眼鏡をはずしながら語る言葉から、なんだか不吉な言葉を聞いてカルマはたじろいだ。
「時間が惜しい。早速で悪いが腕は出来ているか?」
「ああ…そうだったね。フフ…腕の方はいい出来上がりだよ。僕の自信作だとも」
鏑木の発言に、少し残念そうにカルマを見やりながら四ツ谷は案内をかって出た。
「もう少し観察していたかったが、時間がないなら仕方ない。観察はまたの機会にするよ…こっちだ。ついてきて」
湖から城に繋がる道を案内されながら辿る。
案内された城の内部に入ると、中もまるで古城を彷彿とさせた。
小物やら何やら骨董品で出来ている、そういうのに疎いカルマであったが流石に面を食らった。
「気になるかい?此処は先代の趣味で作ってあるからね。どれもこれも一流のアンティークさ…まぁ、ここは大和だからね環境的に浮いてはいるかもね」
「四ツ谷よ…」
「わかってるって、鏑木隊長は真面目だなぁ。滅多に人の出入りが無いんだ、少しくらいハメを外してもバチは当たるまい」
やれやれという雰囲気を出しながら地下へと案内された。
「ここで待っていてくれないか?今腕を持ってくるからさ」
鏑木とカルマを置いて四ツ谷は腕を取りに行った。
まじまじと部屋を見渡すが、机と拷問でもするかのような椅子、それと床には何やら文字が書かれていた。それ以外になにも見当たらなかった。
あれから数刻が過ぎると「おまたせ」という声と共に何やら荷物を抱えて四ツ谷が帰ってきた。
「これが君の新しい腕だよ」
そう言い机の上に荷物を乗せた。
荷物は厳重に術布で包まれた状態だった。
術布を丁寧に解いていく。
最後の一枚をめくると桐の箱が現れた。
桐の箱の蓋を、重箱の蓋の開けるように外すと、中から義手のような物があらわれた。
「ごらん…これが君の新しい腕だよ」
中から出てきたのは、最後にカルマが見た腕の状態とは違った。
カルマの腕はまるで龍の腕のように鱗に包まれていたが、これはより洗練された義手の様なデザインに感じた。
「これが…オレの腕なんですか?」
カルマは恐る恐る尋ねた。
「うん、そうだよ。君の切り落とした腕をベースに、新たに作った紛いもない君の腕だとも」
黒を基調とした機械的というよりはSF映画に出てきそうな、人間の腕の様なフォルムに近い腕だった。
これなら包帯でも巻けば傍目からは気づかれまい。
「早速触ってみてくれないか?」
四ツ谷に言われるがまま、カルマは新しい腕に触れてみた。
表面はひんやりとだが、中から胎動しているかのような脈を微かに感じた。
「これ…生きてる!?」
驚きを隠せないカルマの姿をみて四ツ谷は笑った。
「あはは、いいねぇ〜!その反応が見れて作ったかいがあったものだよ」
「四ツ谷…もう、十分遊んだだろう」
四ツ谷は鏑木に早く進めるよう急かされる。
「ハイハイ、わかってるよ。その腕はね、君の腕の筋肉と龍脈をベースに使ってるんだぁ」
「オレの腕の筋肉…?」
「まぁ、普通の義手と違ってアクチュエータを天然の君の腕の筋肉から作ったってこと。アクチュエータは、送られたエネルギーの電気信号とかを物理的運動に変換する役目を持っている機械要素さ〜、それを君のもので作ったから君との相性ばっちしてこと!」
四ツ谷に難しい事を言われ、カルマ的にはほぼよく分からなかった。
「難しく考えなくていいよ。調整はこっちでやるから。君はただ使いこなしてくれれば良い」
「わかりました。相性も良いなら多分大丈夫ですよね」
「相性は…いいよ。何せ元は自分のだしね。それに外装だって君の鱗をこう加工してだね…」
四ツ谷は、まだ言い足りなかったが、鏑木の空気を察して諦めた。
「とまぁ、善は急げだ…!早速取り付けようか!いやぁ、いい素材だったよ!滅多にこんなものお目にかかれないね!」
やっとのことで取り付け作業に入るようだ。
四ツ谷は処置をする支度を始めた。
「体を椅子に拘束させて貰うよ?かなり痛いかもしれないけど我慢してね。麻酔を打つと眠ってるところから侵食されるからできない」
四ツ谷は話しながら、カルマの体を拘束するベルトを締めていく。
「最後に聞くけど、君はやめるという選択肢もあるんだよ?その時は、鏑木隊長が痛くなく首を落としてくれる…この先辛いことが待ち構えてるかもだし。やめるなら今のうちだよ?」
四ツ谷の問いに、カルマは少し考えるがハッキリと告げる。
「いえ、オレはもう逃げないって決めたんで!それに四ツ谷さんを信じます」
その発言に四ツ谷は軽く驚いた様子だった。
カルマは鏑木の方に顔を向け頷く。
「行ってこい、そして戻ってこいカルマ」
鏑木の一言にカルマは勇気が湧いてきた。
そんなやりとりを四ツ谷は眺めながら言う。
「君は変な子だなぁ、まぁ僕は天才だからね。きっと、新しい腕が馴染めばよく働いてくれるさ」
ーーふむ、僕はただ単にいい被験体としか思って無いとは口が裂けても言えないなぁ…ーー
「じゃあ、これ…噛んでくれる?」
四ツ谷は
頭にはヘッドセットのような物を被せられ目の前が暗く染まった。
「脳波…心拍、龍脈共に異常なし」
ヘッドセットをしたカルマには、微かに聞こてくる声ただそれだけしか、外界の様子がわかる手段が残されていなかった。