2-10
文字数 2,245文字
カルマ fake:recognition 2-10
最後の門を通り抜けると、眩しさが襲った。
相変わらず、トウキョーは並々ならぬビル群がカルマ達を出迎えた。
ここ二ヶ月ほどで、カルマは色々な事を体験した。
いつもの日常を失くしてからと言うもの、カルマからしたら激動の日々だった。
だが、カルマは泣き言一つ言わずここまでやってきた。
鏑木は本人に微塵も言わないが、そんなカルマに一目を置いていた。
「戻って来たー!」
カルマは思わず嬉しくなって叫んだ。
アマミも特に不満はなかったが、やはり自分の前に住んでいた街と似ているビル群を見かけると懐かしさが湧いてくる。
「カルマ、これからお前に紹介したい人の所へ行く」
鏑木の一言に、カルマはゴクリと唾を飲む。
「はは、心配するな。何も取って食いやしないさ。…そこが、お前の居場所になるはずだ」
居場所…自分の居場所が出来る。
改めて自分は、昔の自分が思いもしなかった世界を歩んでいるとカルマは思った。
「はい!どんな場所でもやっていきます!」
かしこまったカルマの様子に鏑木は笑った。
「それは頼もしいな。では、行くぞ」
鏑木はカルマにつかまるよう指示を出し、バイクで目的地まで駆け抜けていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
着いた先にそびえるのは、大きなお屋敷の門だった。
その門は、まるで時代劇に出でくる純和風な装飾が施されていた。
「でっかい…」
呆気にとられるカルマを置いて、鏑木は門の扉に手を掛ける。
「何をボーッとしている?置いていくぞ?」
鏑木の声にカルマは我に帰った。
「す、すみません!すぐ行きます!」
カルマは気をとりなおしてついていった。
「これから、お前に先生を紹介する。色々と粗相はするなよ」
鏑木はいかにもな、重々しいオーラを出していた。
その様子を見るに、カルマは先生はどれだけ凄い人なんだろうかと思考を巡らせた。
「は、はいッ!」
カルマは緊張のあまりぎこちなくなる。
鏑木は、カルマのその様子を見ると先が思いやられるなと少し苦笑う。
屋敷の玄関までの砂利の小道を進み、玄関の引き戸を開けた途端だった。
「バウッ!!」と聞き馴染みのある声がカルマの耳に響いた。
それと同時に、なんだかよくわからないものがカルマを押し倒していた。
「シ、シロ!!お前も来てたのか!?」
のしかかってくる物体を見ると、シロが尻尾を振って覆いかぶさっていた。
ここに来て、思わぬ再会となった。
カルマは、久しく会ってなかったシロを思いっきり撫でてやる。
「迷子になってたから、ここに連れてきた」
後ろから少女がやってきた。
綾瑪レンと言っただろうか。今まではほとんど暗がりで顔がよく見えなかったが、今日は拝む事が出来た。
蒼く輝く髪に、蒼い瞳が印象的な少女だった。
その表情は、変化に乏しく抑揚がない話し方も相まって、まるで人形のようだった。
「そっか、ありがとな!」
綾瑪レンとの出会いの際に色々あったが、こうしてシロの面倒をみてくれたんだ、悪気があったわけではないと思う事にした。
「その式神…飼い主共々騒がしいな…」
黒髪の少年の皇スバルが、屋敷の中からこちらにむかい嫌そうに話しかけてきた。
「式神とかよくわかんねーけど、シロはオレが生まれた時からずっと一緒に居た家族だ!」
カルマは少し語気を強めに、スバルに言い返した。
そんなカルマを、興味無さそうに差し置いてスバルは、鏑木に話しかける。
「隊長、先生が奥で待っておいでです。あまり待たせるのは、感心しません」
「ああ、わかった。カルマ、行くぞ」
鏑木に呼ばれたカルマは、シロに「良い子で待ってるんだぞ」と一撫でして後に着いていった。
お屋敷の廊下を歩くと、いくつもの襖を見かけた。
広いお屋敷だ、部屋も多い事が伺えた。
皇スバルに案内され奥へと進む。
しばらくついて行くと一つの襖の前に通された。襖の前に立つと皇スバルは腰を落とし跪座 の姿勢になった。
「鏑木玄馬、狗神苅磨、両名をお連れしました」
「どうぞ、入りなさい」
襖の奥から優しい女性の声がした。
スバルがカルマの目を見ながら、「粗相はするなよ」と訴えた。
流石のカルマも、わかっていると目配せした。
中に入ると、ふわふわと香のような香りがした。
「お帰り、玄馬」
「鏑木玄馬、狗神苅磨。ただいま帰りました」
鏑木は丁寧に礼をする。
美しい薄紫の簾の奥から、蝶の柄の着物を来た女性がたおやかに現れた。
「初めまして、狗神苅磨。私は羽衣石白蝶と申します」
羽衣石白蝶は、繊細で艶やかな金色の長い髪がとても着物に栄えている女性だった。
憂いを秘めた表情が優しく微笑む。
皇スバルは、呆気に取られているカルマを軽く小突いた。
「は、初めまして!狗神苅磨です!えっと、あの!シロまで、迎えて下さりありがとうございます!」
慌てて名乗るカルマを、白蝶はクスクスと笑った。
「そんなに硬くならなくて良いのよ。シロちゃんは良い子ね。さて、玄馬、具合はどうなのかしら?」
「はっ、まだ万全ではありませんが、差し支えない程度には扱えるかと」
カルマは二人の会話にピンと来なかった。会話の内容が、そもそも緊張のあまりか入ってこなかった。
どうやら、カルマの左腕に用があるらしく、カルマは視線を感じ心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
「では、大丈夫そうね。…狗神苅磨、さっそくだけど君にはこれから試験を受けて貰います」
「へ?」
突然の白蝶の発言に、カルマは間抜けな声を上げてしまった。
両隣からの視線をひしひしと伝わり、カルマは居たたまれなくなった。
to be continued.
最後の門を通り抜けると、眩しさが襲った。
相変わらず、トウキョーは並々ならぬビル群がカルマ達を出迎えた。
ここ二ヶ月ほどで、カルマは色々な事を体験した。
いつもの日常を失くしてからと言うもの、カルマからしたら激動の日々だった。
だが、カルマは泣き言一つ言わずここまでやってきた。
鏑木は本人に微塵も言わないが、そんなカルマに一目を置いていた。
「戻って来たー!」
カルマは思わず嬉しくなって叫んだ。
アマミも特に不満はなかったが、やはり自分の前に住んでいた街と似ているビル群を見かけると懐かしさが湧いてくる。
「カルマ、これからお前に紹介したい人の所へ行く」
鏑木の一言に、カルマはゴクリと唾を飲む。
「はは、心配するな。何も取って食いやしないさ。…そこが、お前の居場所になるはずだ」
居場所…自分の居場所が出来る。
改めて自分は、昔の自分が思いもしなかった世界を歩んでいるとカルマは思った。
「はい!どんな場所でもやっていきます!」
かしこまったカルマの様子に鏑木は笑った。
「それは頼もしいな。では、行くぞ」
鏑木はカルマにつかまるよう指示を出し、バイクで目的地まで駆け抜けていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
着いた先にそびえるのは、大きなお屋敷の門だった。
その門は、まるで時代劇に出でくる純和風な装飾が施されていた。
「でっかい…」
呆気にとられるカルマを置いて、鏑木は門の扉に手を掛ける。
「何をボーッとしている?置いていくぞ?」
鏑木の声にカルマは我に帰った。
「す、すみません!すぐ行きます!」
カルマは気をとりなおしてついていった。
「これから、お前に先生を紹介する。色々と粗相はするなよ」
鏑木はいかにもな、重々しいオーラを出していた。
その様子を見るに、カルマは先生はどれだけ凄い人なんだろうかと思考を巡らせた。
「は、はいッ!」
カルマは緊張のあまりぎこちなくなる。
鏑木は、カルマのその様子を見ると先が思いやられるなと少し苦笑う。
屋敷の玄関までの砂利の小道を進み、玄関の引き戸を開けた途端だった。
「バウッ!!」と聞き馴染みのある声がカルマの耳に響いた。
それと同時に、なんだかよくわからないものがカルマを押し倒していた。
「シ、シロ!!お前も来てたのか!?」
のしかかってくる物体を見ると、シロが尻尾を振って覆いかぶさっていた。
ここに来て、思わぬ再会となった。
カルマは、久しく会ってなかったシロを思いっきり撫でてやる。
「迷子になってたから、ここに連れてきた」
後ろから少女がやってきた。
綾瑪レンと言っただろうか。今まではほとんど暗がりで顔がよく見えなかったが、今日は拝む事が出来た。
蒼く輝く髪に、蒼い瞳が印象的な少女だった。
その表情は、変化に乏しく抑揚がない話し方も相まって、まるで人形のようだった。
「そっか、ありがとな!」
綾瑪レンとの出会いの際に色々あったが、こうしてシロの面倒をみてくれたんだ、悪気があったわけではないと思う事にした。
「その式神…飼い主共々騒がしいな…」
黒髪の少年の皇スバルが、屋敷の中からこちらにむかい嫌そうに話しかけてきた。
「式神とかよくわかんねーけど、シロはオレが生まれた時からずっと一緒に居た家族だ!」
カルマは少し語気を強めに、スバルに言い返した。
そんなカルマを、興味無さそうに差し置いてスバルは、鏑木に話しかける。
「隊長、先生が奥で待っておいでです。あまり待たせるのは、感心しません」
「ああ、わかった。カルマ、行くぞ」
鏑木に呼ばれたカルマは、シロに「良い子で待ってるんだぞ」と一撫でして後に着いていった。
お屋敷の廊下を歩くと、いくつもの襖を見かけた。
広いお屋敷だ、部屋も多い事が伺えた。
皇スバルに案内され奥へと進む。
しばらくついて行くと一つの襖の前に通された。襖の前に立つと皇スバルは腰を落とし
「鏑木玄馬、狗神苅磨、両名をお連れしました」
「どうぞ、入りなさい」
襖の奥から優しい女性の声がした。
スバルがカルマの目を見ながら、「粗相はするなよ」と訴えた。
流石のカルマも、わかっていると目配せした。
中に入ると、ふわふわと香のような香りがした。
「お帰り、玄馬」
「鏑木玄馬、狗神苅磨。ただいま帰りました」
鏑木は丁寧に礼をする。
美しい薄紫の簾の奥から、蝶の柄の着物を来た女性がたおやかに現れた。
「初めまして、狗神苅磨。私は羽衣石白蝶と申します」
羽衣石白蝶は、繊細で艶やかな金色の長い髪がとても着物に栄えている女性だった。
憂いを秘めた表情が優しく微笑む。
皇スバルは、呆気に取られているカルマを軽く小突いた。
「は、初めまして!狗神苅磨です!えっと、あの!シロまで、迎えて下さりありがとうございます!」
慌てて名乗るカルマを、白蝶はクスクスと笑った。
「そんなに硬くならなくて良いのよ。シロちゃんは良い子ね。さて、玄馬、具合はどうなのかしら?」
「はっ、まだ万全ではありませんが、差し支えない程度には扱えるかと」
カルマは二人の会話にピンと来なかった。会話の内容が、そもそも緊張のあまりか入ってこなかった。
どうやら、カルマの左腕に用があるらしく、カルマは視線を感じ心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
「では、大丈夫そうね。…狗神苅磨、さっそくだけど君にはこれから試験を受けて貰います」
「へ?」
突然の白蝶の発言に、カルマは間抜けな声を上げてしまった。
両隣からの視線をひしひしと伝わり、カルマは居たたまれなくなった。
to be continued.