父娘
文字数 1,194文字
時は少し遡る。
アルアは入城と同時にバジシコとの戦闘が始まっていることを知った。
Daddyが来てる！早く！早く！
アルアは縛られた縄を引っ張る彼女を抑えながら考える。
（彼女を置いていけば、数敵優位に立てる。だが安心して任せられる兵がいない。置いていった彼女が戦場にあらわれない間は、逃げ出して裏工作を進めているのではないかという不安がつきまとう。）
は～や～～～く～～～！
（不確定要素は減らすべきだな。目の届くところに置いておいた方が集中できる。）
おかしな行動をすれば射抜くから！
ここまで大人しくしてたもん。早くー！
（納得ずくの選択だけど嫌な感じ。何かを見落としている気がする…）
しかしソレは戦場の常だと割り切り、私達は王の間に急いだ。
ーーー
王の間
ーーー短刀投げか！
アルアは短刀を弾かんと弓を射る。
Daddy!!!
Daddyが殺される？そんなの想像もしていなかった。
（嫌な予感の正体はコレか！）
あっーーー
エステラは両足を射抜かれ転ぶ。
（本当なら頭だ）
Dadd……ッ
はって進む背中を射抜く。
（私が射抜いてきた人間は悪党ばかりだった。彼女だって悪党だ。でも親を助けに行く娘を殺せるのか）
だぁでぇぃぃぃ
（おいおい。コイツの娘かよ……）
ダメだ……剣を……緩める……な…………
（エステラ。可哀想な娘だ）
バジシコは気力だけで立っているシルバを投げ飛ばす。
キーヤンスの腕を背中で捻り上げると、短剣で彼の手のひらを背中に突き刺す。だがそこまでだ。
……ふぅ……ふぅ。凄い技術だ。どれだけの信念があればここまでたどり着ける。
射抜かれながらの一連の反撃。
彼の全身には25本の矢が刺さっている。
……
……
これだけ射抜かれて生きている方が難しい……。情けか？
要人の強襲に国王暗殺未遂。これだけでも極刑は免れない。
だが、死刑執行日まで娘と気持ちを整理する時間はできる。
私に最後の一本を討たせるな。
牢獄でただ死を待てと……。空虚の極みだな。
俺は夜の住人。最後まで光を求めて戦う。
その台詞！どこで聞いた！？
俺の台詞だよ。第一次領土拡大戦争で聖星の恵愛に出会ってからも俺の心は……！見覚えがあると思えばあの娘か！聖星の生き残りか！！
俺の方は光を見つけられずに死ぬ。お前は母親を見つけたのか？
ふるふる
お互いあの場で死ねばよかったな
バジシコがストレートを撃つ。
ボロボロの体から放たれるストレートとは言うにはお粗末なパンチ。
（だが気持ちがのっている。これが回答なら仕方ない）
照準を彼の心臓にあわせる。
やめて！！
（ーーーダメだ！殺せない）
私はむざむざと殴られた。
破壊力はない。だが、全身が彼の闇に飲み込まれていくのを感じる。
あぁ…。恵愛を警戒することを忘れていたな。
（でもこれで良かったんだよね。お母さん。）
………
……
…
