第二婿候補：ジョイサ
文字数 1,542文字
（コンコン）
ジョイサ様。アルア様がお越しになられました。
（流石メイドだ。ドアをノックしている。）
やぁ！アルアさん。
キラメス運輸商会の副会長を任されているジョイサだ。ジョーイと呼んでくれ。
（ズボンを履いている人間に会う嬉しさ！）
七荊棘のアルアです。有事故に、兵装での訪問となり申し訳ないです。
そんな！俺は嬉しいね。特に太ももがいい。
ダイニングまでの道のりは楽しんでもらえたかな？
私も王国内を走り回っているつもりでしたが、初めて見るものも多くて驚きました。
庭の池は何のためにあるのでしょうか？
水浴びしたい時に、泉までいくのは面倒だろう？だから作らせたんだ。
さぁ、続きは食事をしながらにしよう。
アルア様。こちらの席へ
（ハンサムで気さく。メイヤが好きになるだけはある。彼ならメイヤを励ましてくれそう）
先日、コルジア家の兄妹とお会いしました
ユイヤも婿候補なんだってね。
俺と彼は学友で何かと競い合ったんだが、女性を取り合うとは思わなかった。
あの…。メイヤの事は聞かれましたか？
あぁ…。商売は情報が命だからね。
猫耳が付いた無残な姿になって、可哀想に思うよ。本当に。
ただ、真実ではなく変な噂が広まっているのは不幸中の幸いだな。
メイヤは兵舎にいるのでお見舞いに来てください。きっと喜びます。
メイヤが来てくれって言ったのかい？
いいえ。ふさぎ込んで何も話さないのです。だからーーー
だったら行く必要ないかな。彼女だって、醜い姿を見られたくないだろう。
俺だって見たくない。誰も幸せにならない。
前菜のご用意が出来ました
さぁ、憂（う）き事は忘れて、食事を楽しもう！
……
俺はこの料理を、1001夜と呼んでいる。
例えば、この小エビ。ここから、馬を15日走らせた川辺で捕ることができる。
エル貝は20日。赤髭ノ実は30日、頬付草は40日。
ドレッシングに使っている、蜜、果物、香辛料…これらを全部集めるには400日かかる。
岩塩、油、水……
全てを集めるのに1000夜必要なんだ
一夜足りないのでは？
最後の一夜は、この料理を美味しくするために一番大切なものを迎える夜。
それが何かわかるかい？
…‥いいえ。
君だよ。アルア。
二人の出会いが、この料理を甘美にする。
（この人…。苦手かもしれない）
……
蛮勇な人だと思っていたけど、静かで大人しいね。…料理は口にあわなかったかな？
…。慣れない場で緊張してるみたいで。
確かに、このダイニングは広すぎて落ち着かないかな。
デザートは俺の部屋で食べない？市場に出回っていない珍品を見ながらさ。
折角ですが、この後も任務があるので失礼させていただきます。
では、また後日に汚名挽回させてくれ。今度は狩りにでも行こう。俺も動物を射るのは好きでね。
アルアさん。正門までご案内します。
（市場に出回っていない珍品。膝を補助できる素材があったかもしれない。でも、彼に頼るのが嫌だった。嘘までついて……私もまだ未熟だな）
歩くこと10分。
正門にはユイヤが立っていた。
ここで君に会うとは思わなかった。まずは妹のことを感謝させてくれ。
感謝なんて…。私にはメイヤの元に、ジョイサを連れてくる事が出来ませんでした。
君に先を越されてしまったな。
君の人生の大事な場で、妹を思い出してくれて感謝するよ。後は僕に任せてくれ。
メイドさん。今日は約束なしの訪問だ。待合室までお願いできるかな。
はい。ユイヤ様であれば、いつでもご案内いたします。
ジョイサに会った時には、メイヤの傷も、私の膝も良くなると思えた。
だが、結果は何も変わらなかった。
彼の性格のせいじゃない。私の未熟さが振る舞いに出たせいだ。
（反省は終わり！今、出来ることを！）
すみません！忘れ物したみたいなので、部屋に戻ってもよろしいでしょうか？
はい。それでは待合室にご案内いたします。
