バジシコ VS 七荊棘

文字数 2,192文字

城 正門


番兵

「おい!止まれ!これ以上近づけば警戒態勢中につきーーーぐわっ
バジシコ

「(悲しいな。大戦を知らない世代は)

バジシコはその場にいた番兵を切り捨てると、正門で名乗りを上げる。

我はバジシコ。王に変わりこの国に光を与える者!

……
しばらくして、案内を名乗る兵が城から出てきた。

城内兵A

「国王の命により王の間まで案内します。
賢い選択だ
七荊棘の首を送ったのが功を奏したか。有象無象の兵が抵抗するならわからせる必要があったが、手間が省けた。


兵が欲しくて国盗りをするのに、兵を無駄に殺しては意味がない。王の首一つで完結するのが理想だ。

(ガクガク……)
そう震えるな。お前、子どもはいるか?
ーーー!
殺そうってわけじゃない。ただの世間話だ。
む、娘が二人います。
可愛いか?
二人共、鼻が父親に似てしまって申し訳ないんですがね…。でも私の生きる希望です。
そうか。それが父親なのだろうな。

……?

……
王の間
国王陛下!バジシコと名乗る男を連れてきました。
大儀であった。下がってよろしい。
(あれが国王。そして……
ーーー
ーーー
(王の傍らには角材を持っている坊主頭と、盾を構えた緑髪。部屋の床中にはおが屑か)

その場にそぐわない物がある。王が昆虫マニアか変態でなければ、おが屑は恵愛に関する物だろう。


おそらくは、角材を持った男の恵愛。敵をテリトリーに誘い込み優位に立ったつもりだろうが、俺には関係ない。

バジシコ。何故、このような騒ぎを起こす?

東国の兵を持って、西国に戦争を仕掛ける
恨みか?お前ほどの実力者であれば、西国に直接攻め入ればよかろう。
恨み?そんな暗いものではない。全ては光を見るためだ。
その光だ。城前でも言った光とは具体的に何だ?
聖星(きよほし)の恵愛
第一次領土拡大戦争で両軍の兵を一瞬で消し去った光のことか。唯一生き残った西国の兵がそう伝えたそうだが、このように強い恵愛があるとは信じがたい。妄説だ。
その生き残り兵が俺だ。今一度大戦を起こし聖星の恵愛を見るのが俺の願い。
これこそ妄説だ。大戦を起こして聖星の恵愛の出現するのか?何の根拠もない!
逆に問おう。お前たちは何故大戦を止めた?あのような力ある恵愛者が現れるのを恐れたのではないか!?
我々は学んだのだ!命が無為に奪われる虚しさを!
俺は闇の中で空虚に生きることを否定する!夜の住人は光を求めて戦う。
‥…正常ではないな。
国王陛下!命令を!ここら辺の話はオージスさんが終わらせているはずだ!
首をはねよ!
ご希望どおりに
バジシコは二本の短剣を構える。
おいっ!その双剣はオージスさんのだろ!!
落ち着け。見え透いた挑発だ。
シルバは王を守ってろ!俺が一人で殺る!どうせ連携なんてできねぇんだ!
キーヤンスが角材を振り回す、おが屑が中を舞う。
(おが屑空間ができては援護のしようがないな)

(くず)だった俺の手を引っ張りあげて、ここまで導いてくれたオージスさん。おが屑を動かすだけの恵愛だったが俺が、おが屑を角材にできるまでになったのはアンタに報いたい一心だった)

(芯の通った屑を見せてやる!!)
そろそろ行くぞ
二人の間におが屑が十分に舞うの確認すると、バジシコは一直線に突撃する。
(おが屑空間。それはおが屑が無数の角材となり、侵入者を時に殴打し時に貫く。おが屑が体内に入れれば必殺となる死空間)
(俺の盾術を持っても防ぎきれない技。スピードだけで駆け抜けるのは不可能)
だが、バジシコはキーヤンスの目前まで無傷でたどり着く!
(何をしている!恵愛を使え!)
テメェ!

頭部めがけて角材を振り抜く。


だがバジシコに触れると角材はおが屑に戻り宙に舞う。

腐葉土に根を張る若木。天を目指す枝葉。だがそれは光を失い震えている。
ーーー俺の恵愛を無効化しているのか!!
光を失いし者。お前も光を求めずにはいられない。
(この刃!避けられねぇーーー)
キンッ!!
何をしている!!
キーヤンスを突き飛ばし連撃を受け流す。

(盾は身を守るためにあるのではない。攻撃を受け流すためにある。体を崩してからの一撃必殺。この技のみを極めることで、俺は唯一の非恵愛者の七荊棘になった)

あの男の脱衣といい、時に信念は恵愛に達する。いい技術だ。
(連撃が途切れないーーー。先にこちらの体が崩れる)
だが死角も多い
バジシコ、右からのコメカミ蹴り。
ゔ……(脳が揺れる)

俺の死角が多いんじゃない。この男は死角を作るのがうまい。


体幹の強さ、双剣による視線誘導。一人では敵わない。

俺は剣と盾を捨て、捨て身の抱擁をきめる。


武具の隙間を切り裂かれたが気にしない。気にする意味がない。

ごふっ……。抱きしめてしまえば短剣の威力も大したことないな……。
おまえーーー
(まったください連携だ)
キーヤンス!俺ごと斬れ!
ビビって手を離すなよ!
(絶対にお前は斬らない。だから掴んで離すなよ。)

シルバが落とした剣を振り上げる。狙いはバジシコの首。


だが、振り下ろす瞬間に迷った。


バジシコの右手首がそるのを見た。スナップの初動。短剣投げだ。

(国王を狙うのかーーー!)

首をハネれば動きは止まるのか?確実に右腕を切り落すべきか?

わからねぇ!

意図を持たぬ刃はシルバを避け、バジシコの右肩を切り裂く。なんと中途半端。


バジシコの短刀投げは発動していた。

(あっ、短剣が飛んでーーー
!!!!!!
…………。全く嫁に出すには勿体ないな
飛んでる短剣を撃ち落とせる射手が今後あらわれようか。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

最強の射手:アルア 

恵愛:光抉???

光を抉るが如く、神速で矢を射る光抉の射手。兵士として最上の階級である七荊棘の紅一点。膝に矢を受けてしまったため、国王から寿引退を命じられている。


第一次 領地拡大戦争で消えた母を探し求めている。

うぉぉい:チルミ

恵愛:わっしょい

「青い鳥に育てられた」という逸話を持つ、黙っていれば儚げな美少女。お騒ぎ大好きな彼女が切り盛りする居酒屋食堂『青い鳥の叫び(たけび)』のわっしょいタイムは一部で問題視されている。

夜の住人:バジシコ

恵愛:???

精悍な顔をしたテロリスト第一次 領地拡大戦争で見た光を求めて東国占拠を実行する

ファザコン:エステラ

恵愛:裁肉縫皮

手足がスラッとした、ボンキュッボンの少女。バジシコの娘(血の繋がりはない)でありMy Daddy is No.1思想。

名家コルジアの長女:メイヤ

恋愛に興味津々で、妄想が暴走することもしばしば。兄の友達でもあるジョイサに片思いしている。

名家コルジアの長男:ユイヤ

生まれつき肺の病気を患っている。妹のメイヤの幸せを願う、物腰の柔らかい青年。

名家コルジアの猫:マルル

まーーー

キラメス運輸商会の長男:ジョイサ

欲は深く、プライドは高い。父の代よりも商会を大きくする野望に燃えている。

接客業の極み:店長

モテるためにソーセージを極めた男。

お茶にしましょう:オージス

恵愛:給茶

七荊棘の一人。リーダーシップにおいても厚い信頼を寄せられている中年兵士。アルアの短剣術の師でもある。

熱男:キーヤンス

恵愛:おが屑

七荊棘の一人。恵愛で狡い盗みを行う人間の屑だったが、オージスの元で改心する。ハゲじゃない!反省の意味を込めての丸刈りだ!

……:シルバ

七荊棘の一人。七荊棘で唯一恵愛者ではない。盾を使ったカウンターを得意とし、国王の護衛を主務とする。相手に情報を伝えないために静かな男を演じる内に、それが自然体となった。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色