【最終話】残光の中で
文字数 1,047文字
zzz...
じゅわじゅわじゅわ…
（……蜜が焦げる香ばしさ。牛乳の甘い匂い）
牛乳に浸したパンをたっぷりの蜜と一緒に焼いたお祝いのパンだ。
乾いた口が
おはよう。お母さん。
おはよう。もうちょっと待ってね。
パンにミトンの葉を飾りながら、お母さんが振り返る。
今日、何かの記念日だっけ？
ていうよりお母さん。小さくなった？
ふふっ。珍しく自分で起きたと思えば、寝ぼけているの？
さぁ。熱いうちに食べましょう。
（うーん……頭がぼーっとする。頭が起きていないのかも。）
（んーーー！あまーーーい）
（ふふっ。大きくなっても変わらないのね。）
ん？何か言った？
毎日ちゃんと栄養あるもの食べてる？
毎日お母さんが作ってくれてるじゃん。お母さん、起きてる？
そうね。お母さん、ぼーとしてたわ。
寝ぼけてるだけならいいけど……。
アルアこそ大丈夫なの？チルミちゃんと約束しているんでしょ？
そうだった！私もボケてた！
じゃぁ、行ってきます！
（……あれ？約束？なんだっけ）
……
…
ぴっっぴー！ぴっっぴー！
がびー！
ぴぴぴー……
あぁー。逃げちゃった。可哀想ー。
姉御からの感謝とエールだ！
……。で、今日は何するんだっけ？
私はもう帰ろうと思ったんだけど、手伝ってあげる！
何をするんだっけ？
アルアのやりたいことをやろう！
お母さんを探した、い…。あれ？
よっしゃーーー！絶対捕まえるぞ！
ごめん。待って。よっしゃー、しないで。
～～～
ーーーーーー
わたし……花を詰みたい。
小さくて可愛い～。初めて見た。
可愛さ１０！レア度１０！でもスピード１！捕まえた！
あ、ごめん。私が詰んじゃった。
大丈夫。その調子で集めて。いっぱい集めて冠を作りたい。
わっしょーーーい！
…………咲いてないね
珍しい花みたいだからね。でもたぶんコッチの方にあるよ……。ほら
すごい！なんでわかるの！このオッパイか！
ちっ……、違うよ。
たぶん、これが私の恵愛なんだ。お母さんと別れてからずっと忘れてた。
一枚むけたね！どんどん行こう！
……
…
おかえり。早かったわね
ううん…。あのね、遅くなってごめん。これ…
お母さん。誕生日おめでとう。
ーーー！うれしい。
あと、ごめんなさい！10年前！私がわがまま言って！危ないって怒られたのに、戦場に近づいて！お母さんのために花を摘みたかったのに、叩かれたのが悲しくて！本当は10年前にプレゼントしたかった！でも
アルア！
……
こっちにおいで。アルア。
そして教えて。お母さんと別れた後のあなたの冒険を。
あのね。最初は一人でお母さんを探していたんだけどね……
……
…
