第一婿候補：ユイヤ
文字数 1,382文字
馬車が王都を出発して数時間。
メイヤの恋話がつきるよりも早く、白き時計台が見えてきた。
その周りを囲む建物も白きレンガ造り。
近くで見ても美しい…。
兄様もこれくらい饒舌に女性を褒められると良いのですが…。
それはお兄様ではなく、私の問題になるのかな…。
そんなつもりでは！アルアさんはとても美しいですよ！
何はともあれ…
ーーー
ゴーーーン ゴーーーン
婿候補の待つ家に着いたと同時に、時計台が14時を知らせた。
約束の時間より1時間早いですね。時間をつぶしてきましょうか？
時間通りです！待ちきれずに来ちゃった感じがグッとさせるのです！
兄様のことはお気になさらずに。本を読んでいるか、マルルと遊んでいるかですから。
そう言ってメイヤは玄関のドアを開けて、私を招き入れた。
（人の気配がない…）
お手伝いさんは留守でしょうか？
午前中に掃除をして帰られたはずですよ。
ここは別荘地で、お手伝いさんは必要な時に、地元の方から雇っているのです。
見合いの席は人目が少ないほうが良いと思い、僭越（せんえつ）ながら今日の夕食は私が作らせていただきます。
そこまで気を使っていただかなくても…。でも、ありがとう。
メイヤの夕食を楽しみにしている。
私は夕食の買い出しに行ったら17時まで帰らないでしょう。
家にいるのは、お兄様とアルアさんだけ。
見えます！"お見合い"が"見せ合い"になる光景が見えます！
こ！こんな格好させられたら開いちゃう！アナタの鍵で、私の新しい扉が開いちゃうーーー！！
バンッーーー！！！
ノックをしてくれないと、兄の寿命が縮んでしまうよ。
ほら、マルルも驚いている。
ま～～～
言葉とは逆に、まったく驚いた素振りを見せていない一人と一匹。
（食後のお茶の余韻を楽しむかのような落ち着きーーー。これが婿候補の一人・ユイヤ）
（なんで下半身丸出しなんだろう…）
一方的に見せ合いを始めていた男と目線があう。
おやっ…？申し訳ない、客人も一緒でしたか。
紹介しますわ！
こちらが、最強の射手・七荊棘（しちけいきょく）のアルアさん。
で、こちらが私の兄であり、コルジア家長男であるユイヤです。
紹介に預かりましたユイヤです。
アルアさんは式典で見かけた時とだいぶ印象が違いますね。でも、これはこれで魅力的ですよ。
もー！兄様！ご子息がピクリとも動いてませんわ！お世辞だとバレバレ！
まるるだって、もうちょっと上手に尻尾を振りますわ！
紹介に預かりましたアルアです。
あの。なぜユイヤさんは下半身を丸出しに？
僕は体が貧弱で、マルルは運動不足なんだ。
だからこうして一緒に運動をしているんだよ。
彼は腰を振り、大きく揺らす。
マルルは、それに向かってジャンプ。ジャンプ。
まっ～～～↑まっ～～～↑まっ！？
宙に浮いたマルルを、メイヤが腕に抱えこむ。
まるる～。私達は夕飯の買い出しに行きましょうね。
帰るのは17時の鐘が鳴ったと同時になります！
延長をご希望の際は、二階の窓に白いハンカチを挟んでおいてください！18時になるまで外でお待ちしています！
行ってきます！あっ、お茶も出さずにごめんなさい。でも、行ってきます！
騒がしい妹ですまない。
とりあえず、お茶にしようか。
用意してくるから、適当にくつろいでいてくれ
（なんか耐性ついちゃったかな…）
私は部屋から出ていくお尻を眺めていた。
