駅前の老人

文字数 363文字

その駅には
いつも
車椅子の老人が
佇んでいる

朝から晩まで

改札を
出たところで
人形のように

夏でも冬でも

誰かを
待っている
というより
置いてけぼり
に見える


誰かが
そっと置き

誰かが
そっと回収する

駅員は
誰が
置き
回収するのか
知っているのだろうか

食事は
どうしているのか
トイレに
一人で行けるのか

気になる
けれど
私が
その駅を
利用する時間帯は
いつも
そこにいる


今夕
駅から出ると
老人はいなかった

朝は
いたのに


明朝は
戻っているだろうか

老人は
誰かを
待っている
のではなく
みんなに
存在を
認められたい
だけなのかもしれない


ほんとうに
老人は
存在するのだろうか

もしかしたら
幻影なのかも
しれない

急に
いなくなったら
全てに
自信がなくなった


駅員に
聞いたら
教えてくれるだろうか

真実を
知るのが
怖くて
家路を急ぐ

明日は
土曜日だ

土曜日は
駅には来ない
のだが
明日は
気になるから
駅まで来てみよう
と思う
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